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【461さん踏破録】〜元引きこもりダンジョンオタク、入るたびに構造が変わるグンマダンジョンを攻略して最強探索者に至ってしまう〜  作者: 三丈夕六


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第29話 攻略再開

 交代で2時間ずつ睡眠を取り、朝8時になった頃、攻略を再開する事にした。


 マジックバッグからブロック型の栄養食品を取り出し、水が入ったボトルで流し込む。なんとか今日にはボスまで辿り着きたい所だな。もし無理だったら……モンスターを食うしかないか。スコルピオスの(はさみ)なら体内に酸も無いだろうし食えるか?


 10階層に戻って攻略再開して……13階のボスまで5時間くらいか? スピルギニョルを失った今、囮を先行させる事はできない。慎重に進むしかないか。


 こうなると武器を取捨選択していくしかない。


・フレクシルド 1

・シャドウソード 1

・トラネアウィップ 1

・ベントナイフ 1

・クロウスラッシャー4

・ブレイズナイフ 3

・ディガーファング 5

・アキドゥスフィア 6

・スライムキューブ4

・回復薬 1+0.5

・魔力回復薬 2


 シャドウソードもトラネアウィップもそろそろ限界が来るかもしれない。ディガーファングは使用法が限られる。先にベントナイフを使い切って、後は……怖いがアキドゥスフィアなら敵を一撃で仕留められるだろう。マジックバッグから取り出す練習をする。球体をイメージして……よし、これなら咄嗟に取り出せるか。


 そうしていると、インカムにリレイラさんの声が聞こえた。


『休めたか?』


「大丈夫です。リレイラさんのおかげかな」


『ち、調子は良さそうだな……』


 からかってみたら予想以上の反応があった。ちょっと面白い。


 ……リレイラさんと東京に行くって決めたんだ。こんな所で死ぬ訳にはいかないぞ、俺。



 ……。



 再び10階に戻った俺。目の前の通路にヘイム兵が2体見える。持っているのは剣と斧。昨日戦ったヤツと同じ……ヘイム兵の亜種か。


 しばらく2体の様子を観察する。アイツらは十字路から北方面を巡回しているようだ。昨日倒したヘイム兵は1体。他にもまだヘイム兵はいるはず。アイツらはできればここで倒しておきたい所だ。


 考える。ヤツらはパワーも速さも人間の域を超えている。しかも2対1、流石に不利だ。しかもまだこの先の通路にヘイム兵がいるだろうな。連続での戦闘は厄介だ。どうするか……。


 そうだ。


 アイツらを使って他の個体(ヘイム兵)を罠にかけられないか?


 アレとアレを使って……アキドゥスフィアで……あの魔法を使えば……。思い付いた途端、頭の中でアイテムと魔法の組み合わせが浮かぶ。



「はは……」

「はは、は……」



 2体が通り過ぎた後、消音魔法(ミュート)を発動して走る。音を立てないなら全力で走っても問題無い。昨日気付けば良かったぜ。


 そして、肝心なのはここからだ。


 ヘイム兵の背後に追い付いた時、ヤツにも消音魔法をかける。それと同時に飛びかかり、ヤツの首に左腕を回す。右手に持ったナイフでヘイム兵の仮面を突き刺した。


「……っ!?」


 声を上げる事なくヘイム兵が倒れ込む。よし、消音魔法を相手に使う方法も上手くいった。


 次だ。


 前方のヘイム兵は背後で仲間がやられた事に気付いていない。倒したヘイム兵の死骸を十字路まで引きずっていき、十字の道へそれぞれスライムキューブの液体を地面に垂らす。幸い、スライムキューブ1つで4つの通路に粘着液を撒く事ができた。


 そろそろさっきの個体が巡回から戻って来るはず。


 通路の角に隠れて観察する。すると、仲間の死体に気付いたヘイム兵が駆け寄って来た。


 ……今だ!!


 通路の角からアキドゥスフィアを全力で投擲する。


「は?」


 ヘイム兵が投げつけられた物体に気付いて間抜けな声を出す。アキドゥスフィアの外殻と仮面がぶつかり、酸がヤツの全身に降り注いだ。


「はばあ゛ぁぁぁあぁああああ!!?」


 全身から煙を発しながら見るも無惨な姿に変貌していくヘイム兵。ヤツはしばらく絶叫しながら暴れ回り、やがて全てが溶けてレベルポイントの光を溢れさせた。


『うぷっ……人型は見れた物じゃないな……気分が……』


「すみませんって。突破の為なんで我慢して下さい」


 さっきから酷い臭いがしてるんだけど、リレイラさんには言わないでおくか……。



 だけどこれで他のヤツらも罠にかかるはずだ。



「はは」

「はははは……」

「ひひっ……」

「ふひひひ」



 ヘイム兵の叫び声で他の個体達がワラワラと集まって来る。ヤツらが十字路の真ん中で倒れたヘイム兵の亡骸を確認する。そして、地面に撒かれた粘着液をグチュリと踏み付けた。慎重にタイミングを確認していると、粘着液が白く変質する。硬化した証だ。


「しゃあ!! 行くぜ!!」


 ヤツらに向かって駆け出す。足が床に接着されたヘイム兵達は、俺に気付いても身動きが取れない。ヤツらは俺に向かって武器だけを構えた。


 まだヤツらには攻撃手段はある。ここは一撃で決めたい所だな。


 背中のシャドウソードに手をかける。十字路に飛び込み、その刀身を手前にいたヘイム兵に叩き付ける。


「オラァ!!!」


「ひっ」


 縦に真っ二つになるヘイム兵。そのまま横薙ぎに右の通路にいた個体を仕留め、返し刀で正面の個体も仮面ごと頭部を切り裂いた。


「ははっ……」


 ショートソードに持ち替える。最後に残った個体へ剣先を突き刺し、その場にいたヘイム兵達を倒し切った。




◇◇◇


 それからは順調だった。10階にそれ以上ヘイム兵は出ず、11階と12階は再びブレイズラムやラタスラム、スコルピオスに加えて各種ゴブリンが現れる階層だったからだ。ヘイム兵よりもヤツらの動きは読みやすい。俺はひたすら敵を倒しながらアイテムを集めて先へ進んだ。



 そして、俺は13階へ降りる階段の前までやって来た。



『アイテムはどんな状態だ?』


「武器は結構補充できましたね」


・フレクシルド 1

・シャドウソード 1

・トラネアウィップ 1

・クロウスラッシャー7

・ブレイズナイフ 5

・ディガーファング 5

・アキドゥスフィア 4

・スライムキューブ4

・回復薬 1

・魔力回復薬 1


『……回復薬が1本しかないが大丈夫そうか?』


「大丈夫です。死ぬ気で帰るんで安心して下さい」


『ふふっ。死ぬ気で帰るか……いいな、その言い方』


 リレイラさんは照れたように笑った。笑った後、彼女は何かに気付いたように「あっ」と小さく声を上げた。


「? どうしました?」


『あそこ……あの床、よく見ると筆記魔法(ワーダイト)の文字が刻まれているぞ』


 筆記魔法?


 よく見ると、床に筆記魔法が刻まれていた。今まで扉近くの壁に書かれていたから今回は無いと思ってたな。以前までと書いたヤツが違うのか?


 筆記魔法に触れると赤い文字が浮かび上がる。読んでみるとそこに書いてあったのは……。



 ──引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ。



『引き返せ……?』


 リレイラさんが絶句する。なんだこのメッセージ……よほど余裕が無かったのか精神でもやられたのか……いずれにせよ、次のボスは今までより強そうだな。


『あの、ヨロイ君……』


「大丈夫。約束、ちゃんと守らせて下さい」


『……うん』


 リレイラさんが引き止めようとするのを遮る。ここで決心が揺らげば攻略に支障が出る。



 気合い入れろ。



 俺は、ボスの待つ13階へ足を踏み入れた。








 次回、ボス部屋に辿り着いた461さん。そこで待ち受けるボスとは……?

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