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【461さん踏破録】〜元引きこもりダンジョンオタク、入るたびに構造が変わるグンマダンジョンを攻略して最強探索者に至ってしまう〜  作者: 三丈夕六


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第28話 想い

 リレイラさんの提案に従って来た道を引き返し、1つ前の9階へと戻る。倒した敵が復活していないか確認しながら進んでいく。


 ……万一復活しても大丈夫そうな部屋で仮眠を取るか。


 通路を進み、扉があった部屋の中へ。木製の扉を閉めてスライムキューブでドアと壁面を接着する。出る時は扉を破壊するか、最悪ブレイズナイフで燃やして出ればいい。今はアイテム数より休まなければ命に関わる。


 壁、天井、床……部屋の中に敵がいないかを慎重に確認して、扉から1番遠い壁に寄りかかって腰を下ろす。回復薬を取り出して、中身の半分を先程ヘイム兵にやられた肩の傷にかける。ジュワリという音と共に傷が塞ぎ、痛みが引いた。


「リレイラさんも休んで下さい。結構遅くなっちまったし」


『交代で眠る事にしよう。君から休むといい。もし敵が入って来たら起こすよ』


「悪いですよ。リレイラさんに付き合って貰ってるのに」


『私は仮に集中力が落ちようが死ぬ事は無い。休むのは君だろう?』


 全然納得してくれない……ここで押し問答してても時間を無駄にしちまうか。


「じゃあ俺から寝ます。2時間経ったら教えて下さい」


『ああ。ゆっくり休んでくれ』


 腰から通常ナイフを抜いて、それを握りしめて目を閉じる。壁の硬さと肌寒さが妙に寂しさを感じさせる。みなかみに来てから、朝起きるとリレイラさんが隣に座っていてくれた。それってありがたい事だったんだな……。


 こんな感じで2人で攻略していけたらな。


 そう考えた時、急にリレイラさんと温泉に入った時の事を思い出した。あの時、彼女は寂しそうな顔をしていた。それが妙に気になってしまう。


「リレイラさん」


『なんだ? まだ起きてたのか?』


「温泉に入った時、なんか寂しそうでしたよね? 何かあったんですか?」


 口にしてみると色々と思い出してくる。みなかみに来た時から、リレイラさんはふとした時にあんな顔をしていた。


 インカムの向こうで、リレイラさんが押し黙ってしまう。何かまずい事を聞いたかと思った時、彼女はポツリと呟いた。


『ダンジョン攻略中の君に、こんな事は伝えられない』


「いや、気になる方が集中できないですよ」


「……」


「言って下さいって」


 再び訪れる沈黙。彼女は言おうとしては黙ってしまう。しばらくそれを繰り返した後、彼女は意を決したように口を開いた。


「……東京本部への異動通知が来た。君の担当からも外れることになってしまう」


「え……」


 心臓が跳ね上がる。リレイラさんが東京に? それって……。


「そ、それって断れないんですか?」


「無理だ……魔族である私達は人事に口出しできない」


「……」


『……君にも新しい担当が付くことになるだろう。後任が決まれば、ちゃんと引き継ぎをするから』


 そんな……。せっかくリレイラさんと打ち解けて、彼女の事が分かって来て、これからだって思ったのに……。


『だから、グンマダンジョンの攻略依頼を受けたんだ。私がいなくなっても君はグンマダンジョンへ挑むだろう? その前に……私がサポートできる内に挑みたくて……』


「俺の事、考えてくれてたんですね」


 やばい。自分から言ってくれなんて言っておいてめちゃくちゃ動揺してる自分がいる。


『すまない……今まで言えなくて』


「いや……謝らないで下さい。リレイラさんにはリレイラさんの事情があるんで……」


 沈黙が続く。正直、自分以外の人の事でこんなに動揺するなんて初めてだ。なんでだ……? なんで俺はこんなに動揺してるんだよ。


 ……そんなの決まってる。リレイラさんはずっと俺の事を見ていてくれたからだ。厳しいし、良く怒られるけど、でも、ずっと俺の帰りを待ってくれてる……優しい人だから。俺にとって初めてそんな風に接してくれた人だから……。


『探索に集中できなくなってしまったか?』


「正直……そうかも」


 こんな状況で先に進めるのか……? 戻るにしてもスピルギニョルを失った状態で俺……1階層からまたここまで来れるのか……?


 珍しく弱気になってしまう。それだけ俺の中で彼女の存在が大きかったんだ……。ここに来て、それを改めて感じたから。


 黙っていると、彼女はおずおずと口を開いた。


『あ、あの……これを伝えたら、さらに混乱させてしまうかもしれないけど、絶対に帰って来て欲しいから、伝えるよ……私の気持ち』


「? どういう事ですか?」



『私は、気付いたんだ。ヨロイ君の事が好きだって……』



「え……」


 頭の中が真っ白になる。好き……好きってどういうことだ? 友達としてとか、仲間としてとか……。


『その……異性、として』


「へ?」


 追い討ちのような言葉にまた頭が真っ白になってしまう。思わず彼女の言う事を聞き返してしまった。


「リレイラさん、俺の事、好きって言いました?」


『う、うん』


「い、異性として?」


『そうだ……』


「えええええええええええ!?」


 驚きすぎて大声をあげてしまう。インカム越しにリレイラさんが「静かに」と言ったので慌てて口をつぐむ。驚きと一緒くらい心臓が高鳴っていて、まさかリレイラさんからそんな事を言われるなんて思ってなかったから。


『ごめん……君には迷惑な話だと思う……私は魔族だし……でも、だから、君がもし死んでしまったりしたら私は悲しい。だから、絶対帰ってきて欲しいんだ』


「ま、マジか……」


 心臓がうるさいほど高鳴ってる。俺……舞い上がってるのか? いや、いやいやいや……嬉しいんだ、俺、リレイラさんにそう言って貰えて。


 そう考えたら、さっきまで悲観的に考えていた事に一気に解決方法が浮かんだ。


「嬉しいです。リレイラさんにそう言って貰えて!」


『う、嬉しい……? 良かったぁ……』


 インカムの向こうで安堵の声が聞こえる。きっと彼女も迷った末に言ってくれたんだろう。もしかしたら今の関係が壊れてしまうかもしれないという想いの中で。だから、俺も、彼女の悩みの解決策を伝える事にした。今思い付いた事を。



「だったら俺も東京について行きます」



『え……え!?』


「それだったら担当替えしなくていいですよね?」


『探索者の移動に伴って担当が異動するケースも聞いた事あるからいけるとは思うが……いいの?』


「はい! 俺、リレイラさんとずっと探索してたいですから!」


 なんだ。こんな簡単な解決方法があったんだ。リレイラさんが一緒にいたいと言ってくれるなら。俺は迷わず彼女について行く。


『ははっ……そうか……こんなに簡単な事だったんだな。私が悩んでいただけだったんだ……』


「ちょ、リレイラさん泣いてます?」


『すまない、ちょっと思い詰めていたのかも……」


 リレイラさんの震える声を聞いて、俺は胸の奥が熱くなった。今すぐ彼女の元に行きたいような感覚がして……俺にとって初めて感じた感覚だった。


「俺は絶対生きて帰りますし、どこでもついて行きますから。だから、安心して下さい」


『……ありがとう。こ、これからもよろしく』


 それから彼女としばらく話をして、眠りに落ちた。ダンジョンの中だけど、リレイラさんが側にいてくれるような気がして、すごく安心した。


 ……絶対リレイラさんの所に帰ろう。次のボスも絶対倒してやるぜ。






 次回、461さんは再び10階層へ……まもなく第3のボス戦です。


本日は12:10、15:30に投稿します。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 この、甘~~い(ガムシロップ4個ぶん)2人の温かい気持ち、ずっと続けばいいな……(意味深)
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