第25話 魔法盾フレクシルド
俺はそこから3階層まで進んだ。途中の階にいたのはスコルピオスの他に地底を進むワーム……レズーム。それにスライム種のブレイズラム。そこまでは余裕だったが3階層である問題と出くわし立ち往生してしまった。
ラタスラムというスライム種とブレイズラムが群れを形成していたからだ。ラタスラムは泥を吐く。泥と言っても油断はできない。その泥は粘着性が強く、当たると硬化する。一切身動きが取れなくなった所へブレイズラムが火球を連打してくる。
さっきもこの通路を通り過ぎたスコルピオスが泥の連打を受けて身動きが取れなくなった挙句、火球をモロに喰らって丸焦げになってしまった。
通路の角から奥を覗き込む。スコルピオスを倒した3体を観察していると、インカムからリレイラさんの声が聞こえた。
『ラタスラムは未熟なスライムを育てる性質を持つ。泥魔法を使って獲物を捕獲し、他のスライムに攻撃させるんだ。倒した獲物はスライム達で分け合って捕食する。同種への愛情が強い種族と言われているな』
「いや、むしろ凶悪なんですけど!?」
通路の奥に見えるラタスラムの姿。紫の体に2つの核。それがちょうど目の位置にあるからつぶらな瞳に見える。それが左右に並び、間にサイズの小さいブレイズラムが1体。愛情が強い……いや、強いかもしれねぇけど俺らにとってはいい迷惑だな。
とりあえず、覚悟を決めて行くしかないか。
俺は通路を飛び出した。
「プキュ!!!」
俺に気付いたブレイズラムが火球を吐く。今まで戦ってきた奴らより火球は小さい。ローリングで普通に回避できるな。
そう思った直後。
「プキュキュ!!」
「プキュア!!」
「うぉ!?」
ラタスラム達が吐いた泥を後ろに飛んで躱す。地面にビシャリと落ちた泥。当たったら……と思うとゾッとする。そんな簡単に突破できねぇか。
「プキュア!!」
「プキュキュ!」
二連続で放たれる泥魔法を避ける。泥まみれになる壁や床。それはしばらくした後ガチガチに固まってしまった。攻撃した後ケラケラと笑うラタスラム。何もなければ可愛いのかもしれないが、スコルピオスの件を見た後だと凶悪以外の何者でもない。
「クソ、近づけねぇ」
フレクシルドを展開する。頼む、魔法も防いでくれよ。
「プキュ!!」
「ププキュ!!!」
「プキュッキュ!!」
泥魔法が発動し、放たれる泥の塊。それをフレクシルドで受け止める。盾が光り輝き、泥の攻撃を防ぐ。防いだ泥は、フレクシルドの光に包まれ消滅した。
マジか。地面に飛び散るかと思ったがこれならいける……!
盾を構えながらスライム達に走って行く。2体のラタスラムとブレイズラムから連続発射される泥と火球もフレクシルドなら防ぐ事ができる。
そう考えた時。
「「プキュッッ!!!」」
2体のラタスラムが同時に泥を吐き出した。それが合わさり巨大な泥の球体になる。咄嗟に盾で防御はするものの、その勢いに後方へと吹き飛ばされてしまう。クソッ……粘着が効かないと分かって泥魔法の勢いで弾き飛ばそうって魂胆かよ……!
「プギュッ!!!」
弾かれた盾。そこにブレイズラムが火球を発射する。
『ヨロイ君!?』
「大……丈夫っ!!」
吹き飛びながら体勢を変え、横に飛んで火球を避ける。
後方にある通路の角へ全力で走って、その角に身を隠した。
「っぶねぇ……危うく追い討ちの火球が直撃する所だったぜ」
『はぁ……心臓が止まるかと思ったぞ……』
「心配してくれたんですか?」
『ば、馬鹿な事を言っていないで突破する方法を考えるぞ! ……心配なのは、その……そうだけど……』
焦りを落ち着かせようと軽口を叩いてみたがリレイラさんに怒られてしまった。最後の方はブツブツ言っていてよく聞き取れなかったけど。
通路の端から奥を覗き込む。そこには横一列に並んだラタスラムとブレイズラムが。ヤツらは俺に気付くとバラバラに泥と火球を吐き出した。
顔を引き、火球を避ける。次に泥の軌道を確認すると、通路の途中まで泥が飛び、床にべチョリと広がった。
『ブレイズラムの火球と違って泥は飛距離が無いようだな。ただ、あの範囲でなら射程は操作できるだろう』
リレイラさんがアドバイスをくれる。あの攻撃を受けていた時は回避と防御に集中せざるを得なかった。射程の操作か……そこを見てくれたのはありがたい。
ブレイズラムなら吐いた火球は消滅するまで直進する。通路と火球の隙間に滑り込むという方法が取れるが、飛距離が操作できる泥では使えないだろう。しかもあの2体は時間差で攻撃する。滑り込んだ場所を狙って泥を吐かれたら身動きが取れなくなる。
接近すると自然に2体の狙いが集約されるのも厄介だな。近距離でさっきの同時攻撃を受けたら今度こそ避けられない。
サイズが戻ったフレクシルドを見る。盾で防ぐにもさっきみたいに吹き飛ばされるだろうしな……。
フレクシルドの性能を思い返す。防御力は高く、物理も魔法も防ぐ事ができる盾。だが、これだけだとただの性能が良い盾だ。あの空間で得た限りはスピルギニョルのように特殊な能力があるはず。
考えろ、防御、パリィ……他に何がある? 盾には何が……。
ん? パリィ?
考えていた時、ある事が思いついた。
「リレイラさん、ラタスラム達って火炎耐性あります?」
『いや、奴らに火炎耐性は無いはず』
「……なら、いけるかも」
角から出る。スライム達へと向き直って盾を展開する。この位置なら……。
「プギュウウ!」
ブレイズラムが火球を吐き出す。泥は……よし、ここまでは届かないみたいだな。向かって来る火球へと盾を構えた。
この盾……スコルピオス戦の時、パリィの威力がやたら高かった。スコルピオスが吹き飛ぶほどだ。それに加えて魔法をも防ぐ防御力。そこから考えられる盾の特殊性能は……。
「この盾はこう使う!!!」
フレクシルドを火球に合わせ、当たった瞬間全力で撃ち返す。フレクシルドが緑色の光を帯び、火球をパリィした。弾き返された火球が、ラタスラムの1体に直撃する。
「プギャアアアアアア!!?」
悲鳴を上げながら、ラタスラムがジュウジュウと煙を放つ。やがて2つの核に亀裂が入り、ラタスラムからレベルポイントの光が溢れた。
──レベルポイントを60pt獲得しました。
『60ptか。厄介な攻撃の割に低く見えてしまうな……だが、すごいぞヨロイ君。まさか魔法をパリィできる盾があるとは……』
「へへっ! 何となくそんな感じがしたんですよ! っと攻略法が分かったら後は楽勝だな!」
その後、俺はもう一体のラタスラムもブレイズラムの火球を弾き返して仕留め、ブレイズラムに接近。ショートソードでブレイズラムの核を叩き斬って通路を突破した。
もしかしたら魔法以外の遠距離攻撃全般に対応できるかもしれない。そうなればめちゃくちゃ有能な盾になるな。スピルギニョルと同等の宝だってのも頷ける。
『アイテムは何か落とした?』
「なんかデロデロで触りたく……ん?」
核を失ったラタスラムの体が形状を維持できずに流れ去り、そこに透明な四角い物体が現れた。
「なんだこれ?」
四角いキューブを拾い上げて触ってみる。プヨプヨした感触はスライムそのものだ。だけどそれ自体に効果があるとは思えない。もしかして、アキドゥスフィアのように中身に効果があるのか?
キューブを絞ってみる。すると、表面のプルプルした場所に亀裂が入り、ゼリー状の液体が中からこぼれ出した。地面に溢れたゼリー。ぬらぬらしたそれを触りたくなくて、近くにあった小石で突いてみる。
「なんだこれ? 効果無しか?」
そう思った次の瞬間。
ゼリーを突いていた石が動かなくなった。ガッチリ地面と接着され、思い切り引っ張ってみても動かない。
『もしかしたらラタスラムの持つ粘着性の素なのかもしれないな。泥魔法には粘着性は無く、撃ち出す時にこの成分を混ぜる事で粘着性を付与していたのかも』
粘着性……気になって先に試してみたが、とにかく鑑定してみるか。
名称:スライムキューブ
分類:その他
属性:無
効果:内部の液体は空気に触れると硬化する。様々な物質を接着可能。使用回数1回。
「瞬間接着剤みたいなもんか」
『硬度はどの程度なんだ?』
今度は全体重をかけて石を引っ張ってみる。俺の体重をかけたにも関わらず、石はピクリとも動かなかった。
「これは……中々使えそうですね」
俺は、残りのラタスラムがドロップしたスライムキューブとブレイズラムがドロップしたブレイズナイフを回収して先に進んだ。
次回、さらに地下へ進む461さんそんな彼の前に不気味な存在が……?
本日は12:20、15:30に投稿します




