第17話 【中ボス戦】 橋上の戦い
橋を進む。横幅は5メートルほどの大きな橋。筆記魔法にはこの橋に強敵がいると書いてあった。そう考えると、戦闘にはおあつらえ向きの場所に見えるな。
ショートソードの柄に手をかける。遠距離タイプならすぐに投擲アイテムにスイッチしねぇと。
橋を進むと、静まり返った橋の中央にポツリと何か立っているのが見えた。
それは、西洋甲冑を纏った騎士。だが、手足の所々がシャープで、鎧をよく見ると人間では着れない造形をしている。その騎士がロングソードを地面に突き立て、ジッとこちらを見つめていた。
『幻影騎士……いや、それにしては形状が違う。亜種タイプか? どこかで見た気がするのだが……』
リレイラさんがブツブツと独り言を呟く。アイツはリレイラさんも知らないタイプの敵か。なら、余計にヤツのモーションを読み解かないとな。
「……」
騎士がゆっくりとロングソードを引き抜く。俺は、ナイフに手をかけ態勢を低く構えた。
「……!!」
騎士が踏み込む。突撃してくるヤツへと向けてナイフを投擲する。騎士がナイフを剣で弾く、時間差で2本のベントナイフを投げつける。騎士は1本を弾き、もう1本のベントナイフはその鎧で防いだ。甲高い金属音と共に、ベントナイフが弾かれる。それと同時にナイフが霧のように掻き消えた。
「やっぱこれくらいじゃダメージは与えられないか」
だが、これでヤツの剣速は測れた。あの速さなら近接戦でやり合える。後は間合いか……ロングソードの分、懐に飛び込むまではヤツの方が有利。どうやって間合いに入るか……。
いや、やりようはあるな。
この橋には落下防止用の柵……欄干がある。なら、アレとクロウスラッシャーを使えば立体攻撃ができるはずだ。
ジリジリと間合いを詰める。ヤツから逃れるように、すり足で位置取りを変えていく。ヤツは、苛立ったように雄叫びを上げた。
「オオオオオオオオオオ!!」
雄叫びを上げたヤツが一気に踏み込んでくる。それに合わせてマジックバッグからチャクラムを取り出して回転させる。ヤツが剣を振り被った瞬間、チャクラムを投げつける。ヤツは、サイドステップでチャクラムを避けた。
横に飛んでヤツの剣撃を避ける。ヤツの剣が黒い斬撃を纏い、地面を深く切り裂いた。石造りの橋にここまで深い傷を入れるなんてな……威力は相当高い。一撃でお陀仏だなこれは。
「……オオ!!」
薙ぎ払い、叩きつけ、袈裟斬り。騎士が連続で放つ斬撃をステップで躱しながらヤツを誘導する。狙い通りの場所へヤツを誘導し、薙ぎ払いを背後へのローリングで避ける。起き上がり様にショートソードを引き抜き、ヤツへと袈裟斬りの一撃を放つ。体を仰け反らせて俺の剣撃を避けた騎士は、反撃にロングソードを振り上げた。
「オオオオオオオオ!!!」
ヤツがロングソードを振り下ろそうとした時──。
柵に跳ね返ったチャクラムがヤツの両腕に直撃した。風の刃を纏ったチャクラムによって吹き飛ぶ騎士の両腕、ロングソードが床に転がり、ヤツに隙が生まれる。
その瞬間を狙って、ヘルムと鎧の継ぎ目をショートソードで一閃した。
「オ、オ、オオオオオ……」
膝から崩れ落ちる騎士。ヤツの全身から黒い霧が溢れ、橋の奥へと飛んでいく。残されたのは、妙に細身の造形の鎧と、ロングソードだけだった。
「レベルポイントの光が出ない? 逃げられたのか?」
『……今ので分かった。ヤツは幻影騎士の派生系、冥闇騎士だ』
「冥闇騎士?」
『ヤツの本体はあの影。ヤツらは鎧から鎧へ乗り移り、自分の体にするんだ』
「鎧から鎧へ……か」
ヤツの動き自体は普通だったが、その攻撃力は高かった。再戦する時に気をつけないとな。
「っと、アイツのロングソード……これもドロップアイテムみたいだな」
『持って行くのか?』
「使えるなら」
ヤツが使っていた真っ黒いロングソードに鑑定魔法をかけると、ロングソードに刻まれた記憶が、俺の中に流れ込んでくる。
異世界の刀匠が作った剣が商人を通じて世界を渡り歩き、やがて1人の戦士の手へ。しかしその戦士は、影型のモンスターと戦った時に敗北したようだ。影は光を嫌うらしく、戦士は松明片手に善戦していたのだが、無数の影達に囲まれ敗北。体に影が侵入し、モンスターと化してしまう。その影の能力がこの剣に宿った……ってことか。俺もアイツに入られないように注意しねぇと。
それにしても……。
「アイテムの記憶がこんなに読み取れるなんて……」
『鑑定魔法レベル3の力だろう。武器の能力はどうだった?』
リレイラさんに鑑定結果を伝える。
名称:シャドウソード
分類:剣
属性:闇
効果:影の力を宿した鋭利な一撃を放つ。硬度が高い物も切断することができる。使用回数20回
『使い勝手が良さそうだな』
「ロングソードって所が厄介ですけどね……っとそうだ。こうするか」
冥闇騎士の鎧に括り付けられていた鞘を外し、背中に背負う。胸の前で鞘の紐を結ぶと、中々に安定する。これなら持ち運びもできるな。
「これでよし」
『ちゃんと戦闘中に引き抜けるか試しておくんだよ』
「あ、そっか。やってみます」
ショートソードを腰の鞘に戻して肩のロングソードに手をかける。普通に抜こうとすると長さのせいで引き抜けないが、ダッシュ斬りの要領で全身のバネを使って振り下ろすと引き抜くことができた。
よく見ると、鞘の片面にスリットが入っていることに気付いた。通常だと落ちることは無いが、勢いよく引くと、スリットが開いて鞘から横に引き抜ける構造……これを作った刀匠は頭いいな。
「ダッシュ斬りで一撃与えて離脱するように使います」
『それがいい。無理に慣れない剣で打ち合いをすると隙が大きいからな』
シャドウソードを手に入れた俺は、橋を渡って新たなエリアへと進んだ。
次回、橋の向こうの新エリアでは音に敏感なワーム型モンスターが……?




