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【461さん踏破録】〜元引きこもりダンジョンオタク、入るたびに構造が変わるグンマダンジョンを攻略して最強探索者に至ってしまう〜  作者: 三丈夕六


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第16話 消音魔法

 スピルギニョルの効果を掴んだ俺は、吹き抜けのバイオームを3階まで進んだ。そこで気付いた事は2つ。


 1つは階層について。どうやらこのエリアは6階層まで続いているようだ。3階は2つのエリアを長い橋で繋いだような構造だ。その先を見るとまた3階層下へ続く吹き抜け構造が見える。橋の下は暗闇が支配しており、どこまで続いているのか分からない。ヴァルガードを倒すまでよりも明らかに広くなっている。


 2つ目はモンスターだ。それは、ここにいるモンスターは聴覚に優れた個体が多い。スピルギニョルを有効に使い囮を使わなければすぐに発見されてしまう。中々に鬱陶しいエリアだ。


「ギギッ!!」


 スピルギニョルで操ったキャンサーゴブリンが通路を走り抜けた。それを2体のキャンサーゴブリンが追う。俺は、奴らの背後から「刀身のウネったナイフ」を2本投げ付けた。縦に回転しながら飛んでいったナイフは、ゴブリン達の頭部に突き刺さる。バタリと倒れ込むゴブリン達。レベルポイントが溢れ出したのを確認して、奴らの装備していた曲がりくねったナイフを腰のベルトから抜いた。それとほぼ同時に、奴らに突き刺さったナイフが霧散する。



名称:ベントナイフ

 分類:ナイフ

 属性:無

 効果:投擲用ナイフ。通常のナイフよりも飛距離が長い。使用回数1回



 この武器が中々使い勝手が悪い。1回使用すると再利用できないのはどうにもな。それと、何も無しでこのナイフを投擲するとキャンサーゴブリンには高確率で避けられてしまう。ヤツらは風を切る音まで聞き取っているらしい。


 ……とこんな具合にこのエリアの攻略は難易度が高い。スピルギニョルの使用回数のこともあるし、俺はある魔法を取得する事にした。


 それが消音魔法(ミュート)だ。


 一定時間自分の発する物音を遮断する魔法。取得に2000pt使用してしまうから、目的だった鑑定魔法レベル4には遠ざかってしまうが……スピルギニョルの効果はある程度掴んだからな。それよりも、ここはできる限り使用回数の消費を抑えたいところだ。


 スマホをからスキルツリーを選択。消音魔法を選択して、取得をタップする。



 ──「消音魔法(ミュート)」を獲得しました。



『良い選択だと思うよ。魔力は消費しても回復方法があるからな』


「そう、それが狙いなんですよ。早速試してみます」


 魔力なら、回復薬で回復できるからな。使い切りのアイテムよりずっと効率的だ。


 右手に魔力を集める。手のひらに伝わるピリピリした感触を感じながら、俺は魔法を発動した。


消音魔法(ミュート)


 俺の全身が淡い青色の光に包まれる。これで物音が立たないようになったのだろうか?


 試しにアーマーを叩いてみる。いつもなら金属音が響くところだけど、何も音がしない。よし、効果発揮してるな。


 後は効果時間か。スキルツリーの解説には効果時間が書かれていなかった。試して確認するしかない。


 通路を進み、ゴブリンを探す。しばらく3階層を徘徊していると、1体のキャンサーゴブリンを発見した。俺に背を向けるように歩いているゴブリンを。俺は腰からナイフを引き抜き、角を飛び出した。


 通路を全力で走る。キャンサーゴブリンは気づいていない。これなら……!


「ギァ!?」


 ゴブリンの首をナイフで掻き切る。首から血を吹き出したゴブリンは、膝を付いてドサリと倒れ込んだ。


「……よし」


 ゴブリンを倒したタイミングで俺の体から光が消える。


『効果時間は15分といったところか』


「消費魔力低いんで十分ですよ」


 これで立ち回りがだいぶ楽になったな。




◇◇◇


 消音魔法の効果を試してから、俺は2度の戦闘を行った。倒したキャンサーゴブリンは3体。手元に残ったベントナイフは8本。レベルポイントの残数は1685pt。収穫はそれなりにあったと言えるか。


 3階層を攻略し尽くしたのでこのフロアをつなぐ橋へ。石造りの広い橋だ。下を覗き込むとアーチ状に組まれていて、多少の事では破壊される事は無さそうだ。


『そこの壁にまた筆記魔法があるぞ』


 リレイラさんの言葉で壁に浮かんだ赤い文字へ気付く。それに触れてみると、目の前に文字が広がった。



 ──この橋に強敵がいるぞ。



「……強敵。中ボスか」



 周囲を確認する。近くに敵の姿がいないことを確認してアイテムを確認する。


・スピルギニョル 1

・ベントナイフ 8

・クロウスラッシャー5

・ブレイズナイフ 14

・回復薬 2

・魔力回復薬 3

・速度上昇薬1


 加えて俺の武器のショートソードと通常のナイフが1本。アイテムは十分。リレイラさんにあの事を言っておくか。


「リレイラさん」


『なんだい?』


「今回の探索はボス倒すまで町には戻らないつもりです」


『……なぜ?』


「前回のヴァルガードの時分かったんです。このダンジョンはボスがいる階層は固定。前回はヴァルガードのいる3階層が固定でした。そのボスを倒せばより深くへ潜ることができる」


 今回の件でそれが分かった。吹き抜けで各階層が分かるこのバイオームだからこそ。


「ここのボスを倒す前に戻ってしまったら全てが1からになる。スピルギニョルはおそらくボス戦でも必要でしょう。その制限がある限り、迂闊に町に戻るのは得策じゃない」


『……分かったよ。君の意思が固いなら何も言わない』


 リレイラさんが寂しそうに言う。俺は、深呼吸してもう1つ伝えたいことを口にした。


「だけど、絶対死にませんから。リレイラさんに心配して貰って俺……嬉しかったんで」


『な、何を……?』


 焦ったような声。こういう声出すとホント可愛いよな、リレイラさんは。


 思い出す。引きこもりの俺を見捨てずにトレーニングしてくれた事を。家族の誰1人俺の心配なんてしてくれない中、リレイラさんだけは俺を心配してくれた。怒っているように見えて、いつも俺が死なないようにアドバイスをくれていた。


 ヴァルガード戦を通じて、俺はそれが分かった。だから、彼女を悲しませるような事は絶対しない。俺は絶対に生きて帰る。彼女のところへ。


「だから、見てて下さい。絶対戻りますから』


『……うん』


 少し幼い返事。リレイラさんとの距離が近付いた気がして、それが嬉しい。


「ふぅ……落ち着け」


 思考を切り替える。次の敵、俺は危うげなく倒して見せる。リレイラさんを安心させる為にも。


 よし、行くか。


 俺は、強敵の待つ橋へと足を踏み入れた。





次回、中ボス戦です。


本日は10:10、12:10、14:10、16:10、18:10、20:10更新です!

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