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【461さん踏破録】〜元引きこもりダンジョンオタク、入るたびに構造が変わるグンマダンジョンを攻略して最強探索者に至ってしまう〜  作者: 三丈夕六


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第12話 亜空間への門

 ヴァルガードの体からレベルポイントの光が溢れて、俺へと吸収される。


 ──レベルポイントを1500pt獲得しました。


 おぉ! 1500pt級か〜! そりゃ強いはずだ!


『ヨロイ君、すごかったぞ』


「へへっ! やりました!」


『そういえば、ドロップアイテムは無いか?』


 あ、そういやどうだったかな? 倒した事で気を抜いてたな。


 ヴァルガードの死体を見てみようと近付いた時、ヤツの体が光の粒子のように空へ舞い上がり、空中に円を作った。


「な、なんだこれ……!?」


 ダンジョンで初めて見た現象だ。リレイラさんなら何か知っているだろうか?


「見たことあります? リレイラさん」


『これは……亜空間への門だ』


「亜空間? 異次元みたいな?」


『そう考えて貰って差し支えない。私達の世界(異世界)でもこんな魔法を使えるのはごく一部の存在だけだ』


 へぇ。いよいよ普通じゃなくなって来たな。


 部屋を見て回る。四方の広い壁を見ても、入り口の階段しか存在していない。進むにはこの亜空間に入るしかないってことか。


「ここしか道は無い、か」


『亜空間に繋ぐ魔法は必ず入り口と出口をセットで配置しなければ形成できない。出られなくなることはないだろうが、油断はするな』


「そうですね。いつでも戦闘できるようにしておくか」


 ショートソードを構えてアイテムを確認する。クロウスラッシャー3枚にブレイズナイフが14本。サンダーウィップは失ったがアイテムはまだある。……行けるな。


 俺は、ユラユラと揺れる亜空間の門へと足を踏み入れた──




◇◇◇


 門の先は不思議な空間だった。真っ暗な周囲に水色の石畳みの床。その床がぼんやりと光って、道を作っているのが見える。


「リレイラさん? ……繋がらないか」


 インカムで呼びかけてみたが反応が無い。ダンジョン内でも通信が切れる事のない探索者用スマホなのに……亜空間ってのは間違いじゃなさそうだな。


 何もない空間を進み、緩やかな階段を登っていくと、ローブを着た人物が黒い球体の上に座っていた。



「我の領域に何用か?」



 ノイズが入ったような声にフードを目深に被った姿。男か女かも分からない。ソイツが俺の事をジッと見つめていた。……見つめていた気がする。少なくとも仕草や視線からはそんな風に感じた。


 不思議に思っていると、フード野郎がポツリと呟いた。



「よもや、このような所で貴様と出会うとは」



「は? 俺はアンタなんか知らねぇぞ?」



 俺が言うと、フード野郎は静かに首を振る。



「目的を言え」



 何事も無かったかのように話を続けるフード野郎。なんだ無視かよ、ムカつくな。


「目的って、このダンジョンを攻略に来たんだよ」


「それだけか? 正直に話さなければ消す」


 消すって……物騒なヤツだなぁ。


 このダンジョンを消滅させるとか言っていいのか? コイツの領域が云々とか言ってたし……。だが、いずれにせよコイツが納得しないと亜空間すら出られない気がするな。


「俺はこのダンジョンの地下26階にあるっていうエモリアの魔除けを手に入れたい。目的はこのダンジョンを消滅させる為だ」


何故(なにゆえ)消滅させる?」


「このダンジョンは時空の歪みだかなんだかで生まれたと聞いた。本来あってはならない物を消滅させるのは普通じゃないか?」


 どう出る? いきなり怒り出して戦闘とかにならないよな?


 ショートソードに手をかける。フード野郎の動きを警戒していると、ヤツは静かに声を上げた。


「……その言葉に嘘は見えぬ。良かろう、先へ進ませてやる」


 フード野郎が手を挙げるような仕草をする。すると俺の目の前に光が現れ、手のひらに乗った。それが形を成していき……なんだこれ? 細長いような何かのカケラ……か?


「なんだよこれ?」


「それは26階層へと至る為の道標。このダンジョンを攻略し、そのカケラを手に入れよ。カケラが完全となった時、26階への門は開くであろう」


「なんか偉そうなヤツだなぁ」


「うるさい」


 うぉっ!? 自分の世界に入ってるっぽいから煽ってみたが、ちゃんと人の話聞いてるんだな。残留思念とかの類じゃなさそうだ。


「それと……これはヴァルガードを倒した報酬だ。受け取るがいい」


 フード野郎がゆらりと後ろへ飛び退くと、ヤツが乗っていた黒い球体が宝箱の形になった。それが開くと同時に宝箱は霧のように霧散して、アイテムだけが床に残る。


 俺の鎧に使われる異世界金属のインゴットが3つ。青い宝石が3つ。回復薬が1本。それに……なんだこれ? 棒? 


 そこには30センチほどの棒が転がっていた。触ってみると、金属でできているようだ。符呪のような異世界文字がビッシリと刻まれていて、何かしらのアイテムなのは分かる。


「なんだよこれ?」


「槍だ」


「槍? 短すぎるだろ」


 またフード野郎が首を振る。ため息を吐くような仕草……なんかムカつくな。


「その槍に伸びるよう念じてみよ」


「念じる……?」


 言われた通りにやってみる。槍に念じてみると、その両端からシャキンと槍が伸びた。しかも、片方の先端に槍先が形成されている。これは……どこからどう見ても槍だな。


 槍に戻れと念じてみると、再び両端が縮む。槍は、再び元の形状へと戻った。


「有効に使え。次の攻略の鍵となる」


「なんでそんな事教えてくれるんだ?」


「……」


 沈黙。言いたくないってか。怪しいな……だが、ここまで言うって事は特殊な能力がありそうだ。今までには無いような、強力な……。


「まぁいいや。有り難く貰っておくぜ」


 他のアイテムをマジックバッグにしまうと、俺の周囲に魔法陣が浮かび上がった。


「この空間はここで打ち止めだ。出れば再び外の世界へと至る」


 フード野郎が手をかざす。ヤツは再びポツリと呟いた。


「ではな鎧の男。この時代での貴様の活躍……期待しているぞ」


「あ、おい!」


 フード野郎の手が光った瞬間、俺の目の前が真っ白な光に包まれた。




◇◇◇


 次に意識が戻った時、俺はグンマダンジョンの入り口に立っていた。夕方で真っ赤に染まるダンジョン前。幻想的な雰囲気に今まで自分が見ていたものが嘘のように思えた。


「夢……?」


 手を見る。俺の右手にはあの槍がしっかりと握られていた。夢じゃ、ない。


 どうやら、俺が挑んだダンジョンは本当に普通のダンジョンでは無かったみたいだ。


 振り返る。閉ざされたダンジョンの門。ヴァルガードの部屋は他に道が無かった。次に挑む時はさらに深くまで潜れるのか。



 だけど、とりあえず今日は……。



「リレイラさんの所に帰るかぁ」



 伸びをする。ボス戦の緊張が嘘みたいだ。腹も減ったし。リレイラさんへ亜空間での話もしないとな。






 次回、リレイラの元へと帰る461さん。しかし、リレイラの様子が何か変で……?

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