第11話 【ボス戦】 リベンジ ヴァルガード
階段を降りる。照明魔法の光の玉を投げると、水路に囲まれた広い部屋が見えた。
前に見た時と同じ構造……やっぱりだ。ヴァルガードがいるフロアは固定構造なのか。
ヘルムの口元をスライドさせて、購入した速度上昇薬を飲み干す。
……時間制限はあるが、これで第二形態の速度にも対応できるはずだ。
効果持続時間は30分。その間に決める。
だだっ広い部屋に足を踏み入れる。その中央に目を向けると、そこには前回戦った相手がいた。
人型の狼のようなボス、ヴァルガード。その右手には巨大なメイスを持っており、俺が与えたダメージは全て治っていた。
ヤツは、前回とは違い警戒するように俺の隙を窺っている。あの警戒の仕方……俺の攻撃パターンは読まれてるみたいだ。知能が高いヤツだな。
普通のボスなら前回と同じパターンからこちらの動きも改善できるんだが、そうもいかないらしい。
だが、俺ならやれる。ヤツの攻撃モーションを思い出せ。ヤツが学習してるならそれは俺も同じ。そのために武器もかき集めて来たんだろ、俺。
自分に言い聞かせていると優しげな声が聞こえた。
『気を付けてね』
前回はリレイラさんのおかげで生き残れた。だけど今回は撤退しない。無理じゃなくて、今度こそ倒すために。
撤退した時、悔しかった。俺が敵の力量を読み違えたばかりに……だから、2度とコイツには負けない。
「リレイラさん」
『どうしたヨロイ君?』
「見てて下さい、俺の攻略」
『……ああ。一瞬たりとも目を離さないよ』
心臓の鼓動を感じながら集中力を高めていく。ヤツから目を離さないよう警戒しながらマジックバッグに手を入れ、クロウスラッシャーを2枚取り出した。
両手で2枚のチャクラムを回転させながらヴァルガードへと向かっていく。俺は、ヤツに向かってチャクラムを投げ付けた。
「グルアアアアア!!!!」
ヴァルガードが大きく飛び上がり、チャクラムを飛び越える。ヤツは空中でメイスを振りかぶって俺を狙った。
冷静になるんだ。ヤツの攻撃を受けると俺の体じゃ耐えきれない。モーションを見極めながら攻撃を当てろ。ドラゴンゾンビ戦の応用だ。
自分に言い聞かせながらヤツを見る。あのメイスの攻撃範囲は前回学習した。攻撃を喰らう瞬間の回避では地面を破壊した衝撃波でダメージを受ける。ヤツの攻撃が向きを変えられないジャストタイミングで回避しないと。
「グオオオアアアア!!!」
ヤツが空中でメイスを振り下ろす。
……今だ!!
「うおおおおおお!!!」
ヴァルガードのメイス攻撃をローリングで回避する。爆ぜる地面。飛んで来る破片を避けながらヤツの懐へ飛び込み、ショートソードをヤツの胴体に放った。
「グオオオアアアア!?」
苦しみの声を上げるヴァルガード。ヤツが横に回転しながらメイスを薙ぎ払う。バックステップと同時にショートソードをしまい、腰に巻き付けていたサンダーウィップをヤツへと放った。
「グギャアッ!?」
メイスに巻き付いたサンダーウィップ。鞭から放たれる電撃。それが鉄塊のようなメイスを伝い、ヤツの体へ電撃を流し込む。メイスを手放したヴァルガード。鉄塊が地面に落ち、その石造りの床にヒビが入る。
すぐさまブレイズナイフを投擲する。ナイフがヤツの丸太のような腕へと刺さった。刺さったが……ヴァルガードは気にも止めていない。ナイフ自身の攻撃力は低いから当然か。
ヤツにブレイズナイフのダメージを与えるにはタイムラグまで時間を稼ぐ必要がある。攻撃を避けながら隙を見て投擲するしかない。
「グルァ!!!」
両手の鉤爪で俺を狙うヴァルガード。それを紙一重で躱してブレイズナイフを投擲する。ヤツの脚に刺さる2本目のナイフ。3本目のナイフを構えた矢先……ヤツの全身の毛が逆立ち、ヤツが雄叫びを上げた。
「グルオオオオオォォォ!!!」
その巨体からは想像できないほどの俊敏さで俺へ攻撃を仕掛けてくる。一瞬で詰められる間合い。マズイ……っ!!
「グルアッ!!」
「やっぱ速えぇな!」
咄嗟に体を仰け反らせて攻撃を避ける。鉤爪がヘルムを掠めて甲高い音を立てた。あぶねぇ……だけど速度上昇薬のおかげでまだ反応できる。
「グルオオオオオオ!!!」
「くっ!?」
追撃をローリングで躱わす。起き上がる瞬間、嫌な予感がして地面を蹴った。俺がいた場所にヤツが両手の鉤爪を叩き付けた。一瞬でも迷っていたら切り裂かれてたぜ。
「だけど隙はできたよなぁ!!」
一瞬動きを止めたヤツへサンダーウィップを放つ。
「グオ!?」
ヴァルガードが鞭の射程外へ飛び退いた。ヤツは電撃の痛みを学習してる。なら、誘導もできるはずだ。
腰のブレイズナイフへ手をかける。再び飛び込んで来るヴァルガード。ヤツが射程に入った瞬間、サンダーウィップを叩き付けた。狼は、大地を蹴って鞭の一撃を避ける。左に飛んだヴァルガード。その着地点を狙え。
「狙い通りだぜクソ狼!!」
ブレイズナイフを投げる。ヴァルガードは空中で動きを変えられない。分かっていても避けられない。空中にいるヤツの脇腹にブレイズナイフが突き刺さる。
「ギャアア!?」
「よし! こっからは俺のターンだぜ!!!」
ヴァルガードへと走る。サンダーウィップを使ってヤツの行動を阻害する。ヤツが嫌がる行動をしろ。ナイフを抜かせるな。
電撃に怯んだヤツに4本目のブレイズナイフを投げ付ける。新たに左腕へ刺さったナイフにヴァルガードが小さな悲鳴を上げた。それを抜こうとするのをサンダーウィップでさらに妨害する。
地面をバウンドした鞭が、ヤツの体に当たって電撃を浴びせた。
「グギャッ!?」
怒り狂ったヤツは、ナイフを抜くのをやめて俺に突撃して来た。
「グルオオオオオオ!!!」
「無駄だ!!!」
サンダーウィップを叩き付けてヤツの軌道を誘導する。
が。
次の瞬間、サンダーウィップが灰のように崩れ去った。
「げ、マジかよ!」
回数制限無くなった!? さっきバウンドしたのが使用回数に含まれてたのか!?
「グルオオオオオオ!!!」
「ヤベッ!?」
鉤爪を伸ばし攻撃するヴァルガード。この爪先が俺の肩装甲を切り裂き、血飛沫が舞った。痛みに動きが鈍る。ヤツの攻撃が避け切れない。その鋭利な鉤爪が俺の胸部装甲を切り裂く。それが俺の肉を削り、再び血飛沫を上げた。
「ぐう……っ!?」
『ヨロイ君!』
リレイラさんの声が聞こえる。気合いを入れ直せ。リレイラさんにコイツを攻略する所を見せるんだ。
「大……丈夫です!!」
ショートソードを引き抜く。両手を振り被ったヴァルガードを一閃する。隙を突かれたヴァルガードはすぐさま地面を蹴って飛び退いた。
「はぁ……はぁ……」
ヤツが警戒している間にバッグから回復薬のボトルを取り出し、攻撃を食らった肩と胸にかける。ジュウジュウという音と共に痛みがマシになった。
「グルオオオオオオ!!!」
再び突撃してくるヴァルガード。ヤツは頭に血がのぼっている。今のヤツは攻撃に意識を取られているはずだ。
「グルァ!!」
ヴァルガードの鉤爪攻撃を回避する。もうすぐのはずだ。アレがもう少しで発動する。ヴァルガードの攻撃を避けながら、ショートソードを構えた。
「グルオオ!!」
ヤツが右腕を高く振り上げた時。その肩に刺さったブレイズナイフが炎を吹き出した。
「グギャアアアアアア!?」
肩から顔面にかけて、火柱が上がりヴァルガードを燃やす。苦しむ狼。その隙を狙って、俺はショートソードをヤツの腹部へ突き刺した。
「ガアアアアアアア!?」
それとほぼ同時に2本目のブレイズナイフが火柱を上げ、ヴァルガードが水路へと逃げようとした。それをヤツの脚に斬撃を与えて妨害する。3本目のナイフが起動。さらに続け様に4本目のナイフが発動した事で、狼はのたうち回ることしかできなくなった。脇腹から噴き出す炎。黒焦げになった狼は、怒りの形相で俺を睨み付けた。
「グルオアアアア……っ!!」
流石にボスなだけはあるな。トドメは自分でやるしかない。
「いいぜ。俺がキッチリケリ付けてやるよ!」
ショートソードを下段に構え、4つ脚で突撃してくるヴァルガードへと身構えた。
「グルアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「うおおおおおおおおお!!!」
飛びかかる狼。目の前に見える牙。意識が研ぎ澄まさせる。急激に遅くなった世界の中、俺はショートソードを斬り上げた。
一閃。
「ガッ!?」
ブツリという感触の後、ヴァルガードの首が空中を舞い、ヤツの体からレベルポイントの光が溢れ出した。
次回、ヴァルガードを倒した461さんの前に謎の亜空間が出現して……? このダンジョンの【管理者】とボス討伐の【報酬】についてのお話です。
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次回は19:10投稿です!




