第10話 火炎スライムの群れ
発見した階段を進み2階層へと降りる。そこは両脇に小さな水路が流れる通路だった。
言ってみれば最初に入った時の石造りの通路と、さっきの貯水池エリアを混ぜたような構造。バイオームが変わったと思ったけど、もしかしたらあの水路も込みで1つのバイオームなのか?
よくよく考えたらヴァルガードと戦ったフロアにも水路があった。俺が最初に挑んだ時はその水路を引き当てなかっただけなのかも。
水路のある通路を歩き、十字路の右の通路を進む。しばらく進むが中々終わりが見えない。1階層の時から思ってたが……これって前より広くなってないか?
しばらく道なりに進み、角を曲がると最後の部屋が見えてくる。右の通路はこの先で終わりか。
入り口から部屋の奥を覗き込む。中は広い部屋だった。そこにひしめき合うブレイズラム達。その数の多さに思わず引いてしまう。
「うわ……何体いるんだ、あれ」
『少なくとも12体はいるな』
あの中に飛び込んで集中砲火を受けたら一瞬で丸焦げだ。しかも、ここからじゃ部屋の奥がどうなっているか分からない。突っ込んでさらに多くのブレイズラムが……となったら笑えない。
「だけど、あの数のブレイズナイフは魅力的だしなぁ……」
どうする? やってみるか?
バッグの中には火炎耐性薬が2本。1本の効果時間は約15分。その間にアイツらを全部倒せるか?
……やってみる価値はある。幸い2本あるんだ。まずは偵察がてら1本使おう。
「火炎耐性薬飲んであの部屋に入ってみます」
『深追いしないようにな』
「大丈夫。1回で突破できるとは思ってないですから」
ヘルムの口元の装甲をガシャリと開けて火炎耐性薬を飲み干す。火炎耐性薬の証である舌に伝わる辛み。飲み干してもまだ舌と喉がヒリヒリする。何回飲んでも慣れないな、これ。
「……っと余計な事考えてる場合じゃねぇ」
ショートソードを引き抜いて、ブレイズラム達がいる部屋の中を覗き込む。12体……いや、奥にも6体いる。全部で18体か。
コアを確実に狙って、最小の動きで仕留めるか。
「プギュ!」
俺に気付いたブレイズラムが火球を放つ。それをステップで避け、近くにいたブレイズラムの核を両断する。
「プギュア!?」
1体がやられた瞬間、部屋にいたブレイズラム達が一斉に火球を放ってきた。
「あの量はヤベぇな!?」
急いで入り口に戻る。通路に戻る寸前、火球が背中に直撃した。
「熱っづ!?」
焼ける焼ける!? 火炎耐性薬の効果あっても熱っついなクソ!!
L字の道まで全力で逃げる。背後から追いかけてくるブレイズラム達。角を曲がると、追いかけて来ていたブレイズラムの群れは部屋の中へ戻って行った。
まだ時間はあるけど深追いしたらそれこそ死んじまう。あの集中放火は流石に耐性薬飲んでても耐えられない。勿体無いが別の通路であそこを突破できるアイテム探すか。
それにしても……ちょっと悔しい。
「耐性薬1本使って1体倒しただけかぁ……」
『アイテムも取り損ねているぞ?』
「ほっといて下さいよ!」
リレイラさんに追い討ちをかけられた。
◇◇◇
ブレイズラム達に燃やされそうになった俺は先に別の通路を探索することにした。それで分かったのだが、結局あの部屋を突破しないと下の階には降りられない。どこを探しても階段が無かったからだ。
『一度外に出てダンジョンを変化させるのも手だぞヨロイ君』
「それは確かにそうだけど、自力で突破したいです。方法も思い付いたんで」
ボス戦を考えた時、あの数のブレイズナイフは欲しい所だ。だから次こそは突破してやる。
『方法? 何を思い付いたんだ?』
通路を戻ってブレイズラム達のいるあの部屋の前で立ち止まる。
マジックバッグに手を入れ、チャクラムの造形と数量を想像する。すると、指先にチャクラムの内側の感触が伝わった。そのまま手を出すと2枚のチャクラムを取り出せた。ゴブリン達がドロップしたクロウスラッシャーを。
他の通路を探索した結果、7体のゴブリンと遭遇した。それによって新たにクロウスラッシャーを7枚手に入れることができた。嬉しい収穫だ。チャクラムの特性を活かしてやれば……。
「コイツがあれば突破できます」
『……ほう』
リレイラさんの声色が変わる。俺が考えた事が分かったみたいだ。
『面白い。それなら確かにいけそうだな』
「じゃ、覚悟決めてやるか!」
最後の火炎耐性薬を飲む。効果が発動したのを確認しながら両手でチャクラムを回す。チャクラムの回転が安定したら走り出し、ブレイズラム達のいる部屋へと飛び込んだ。
「プギュ!!」
目の前のブレイズラムへチャクラムを投げ付け、地面へ滑り込んだ。すぐ脇を通り抜ける火球。2枚のチャクラムはそれぞれブレイズラムへ直撃し、そのコアごと真っ二つに引き裂いた。スライムを倒してなおチャクラムの勢いは衰えず、壁にぶつかって跳ね返る。
部屋の対角線から少しずらした角度で放った2枚のチャクラム。それは反射した瞬間向きを変えて部屋を駆け回った。
「ギュアァ!?」
「ギジュウ……!?」
チャクラムがスライムを切り裂きながら壁にぶつかりさらに跳ね返る。俺の頭上を通り過ぎるチャクラム。反射したチャクラムは、部屋にいたスライム達を切断しながらさらに跳ね返り、大量のレベルポイントの光を溢れさせた。
「しゃっ!! 予想通りだったぜ!」
チャクラム2枚の反射攻撃でこんなに上手くいくなんて、ラッキー!
──レベルポイントを850pt獲得しました。
「やっぱりこの能力、この広さの部屋だとめちゃくちゃ役に立つな!」
『武器の扱いが上手いな。素直に感心したよ』
「へへっ! ありがとうございます!」
褒めて貰えて嬉しい。……っと喜んでる暇は無い。アイテムが先だな。
ブレイズラムの亡骸からナイフをかき集める。このフロアの探索でクロウスラッシャー5本とブレイズナイフ18本が手に入った。加えてサンダーウィップ……前回よりもずっと良い装備だな。
ブレイズラムの群れを倒した部屋を奥に進み、真っ直ぐな通路を抜けると昨日見たのと同じ階段が見えた。それと、筆記魔法で書かれたメッセージも。
──この先にボスがいるぞ。気を付けろ。
「やっぱりボスだな。ここは進む前にスキル取っておくか」
次はいよいよリベンジ戦だ。基礎スキルを追加で上げておくか。
速度5%上昇、物理防御5%と物理攻撃5%でそれぞれ90pt。スタミナ上昇が180pt、あと投擲もレベル3にしておきたいな……650ptか。3段階ともなると高いな。
俺は合計1100pt使用してスキルツリーを解放した。俺のスマホから電子音声が鳴り響く。
──速度5%上昇を獲得しました。
──物理防御5%上昇を獲得しました。
──物理攻撃5%上昇を獲得しました。
──スタミナ5%上昇を獲得しました。
──投擲レベル3を獲得しました。
『大量獲得だな。聞いていてこちらも気持ちが良いくらい』
「ボス戦ですからね。気合い入れたんです」
リレイラさんの声が優しい。それが嬉しかった。よし……今度こそ、心配させないようにしないとな。
俺はリベンジへと向け、階段へ足を踏み入れた。
次回、いよいよリベンジ戦です。果たして461さんはボスに勝てるのか?
次回は18:10投稿です。




