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1117/1501

1117〜押してダメなら引いてみろ

「風ではないのか?」

「風?どこに吹いている?ナナカマドも揺れてはおらん」

「閉まっただけなら開くかも知れない。おい!お前ッ!あの扉を押してみろッ」

「お前?お前がやれよアナナ。皆を城に入れてしまったのはお前の責任。自分でやれ」

「チッ」

 海賊兵の長となったアナナ。

スタスタと芝土。扉の前まで戻ると両の手でグイと城壁扉を押した。

 しかしビクリとも動かぬ厚い板。

 アナナは肩が外れるほど力いっぱい。

3度押してみたが、らちがあかない。


「アナナ。お前って奴は、、、バルウになる資格も首領になる資格もなしだ。大昔にいたここの門番兵は片手で開けようぞ」

「なら、お前やってみろよ」


「言っておくがね、新首領になられるお方。それではいつまで経っても開かぬ。城壁扉ってのは手前に引くものだ。外に開かれてしまってはその扉。錠を握られたら敵の自由となる。覚えておくんだな。中からは押すんではない。引くんだ。手前にな」


(はずかし)めを受けたアナナ。

3度切りの力で尽き果てたか、言った兵にやれと命じた。

「仕方のない首領様だ。どけっ小僧っ」

「こ、こ、小僧?」

「ああ、小僧だ。こんな常識すら知らない者。ネネツの大人(おおびと)ではないわい。下がっとれっ」

 手下兵。そう言うと背が高いだけのアナナの倍もあろうかという腕っぷし。口髭に埋もれた厚い唇が笑った。

「片手だ。見ておけ。小僧」


左手を城壁扉の鉄の取手。

収めるとグイと手前に。

「ん?ちょっと待てよ」

全く動かぬ扉に手下兵。今度は右手に変えた。


「ググ、グゥーいっ!」

「どうしました?あなたも小僧の仲間入りですか?」


「ムムムッ。グゥーい。グイ」

「開きませんね。お顔真っ赤でありますよ。ハハッ」

「うるさいっ!黙っておれ!腰抜かし男がっ!じきに開くっ!」

動かない扉に巨漢兵。

今度はグイと押してみた。

 

 「ああ、ああ。もうさっきの言葉撤回か?貴様も、押しているではないか?」

「なにぃ〜!!」

「ま、そりゃあね。常識では計れぬものありましょう。引いてダメなら押してみる。押してダメなら引いてみる。しかし開かぬは開かぬ。ハハッ!」


巨漢の手下兵。

扉から手を放すと、その両の隙間。

腰を屈めて城外を覗いた。


「アナナ。これは押す引くの問題ではない」

「どうした?貴様が言ったのであろうッ。城の門扉は手間に引くものだとッ。ハハッ」

「笑いごとではない」

「笑うところだ」


「押しても引いても動かぬはずだ。外に丸太が2本。掛けてある」

「え?」

「つまり何者かが鍵を掛けたのだ。重い丸太は人の手に寄らず掛かるもんではないな、、、」

 「じゃあ扉が閉まったのは、、、?」

「人だ。ハメられた。ハカられた」

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