1118〜法螺(ほら)を貸せっ!
「いくらやっても無駄だ。城壁扉は閉められたのだ。余計な力を使うでないアナナ」
「ちっくしょうッ」
「ではどうすれば良いか?」
「どうすれば?ならば他の出入り口を探すしか方法はあるまい?」
「よくできた答だ。その通り。閉じ込められたなら、そこに無駄な力を注ぐべきでなし」
「わかった。では探そう。散らばれッ」
「待て待て。そう簡単に家探しても尚の事無駄」
「他に何があるってんだい?」
「予測を立てるのだ」
「予測?このどこに?」
「いいかアナナ。もしさっきの空樽が人の手に寄って転がって来たものとしよう。それが理由に樽が石畳を下るとともに門扉は閉められたのだ」
「確かに、、、となると、、、」
「この城の中にまだ誰か残されているということだ」
「なるほど」
「なるほどではないよ。それは城の出入り口がこの門扉以外にない場合だ。もし他にあるのであれば、蹴った男はもういない、、、かもしれない」
「いや、全員残っているかもしれない」
「上を見てみろ。さっきまで灯っていた部屋部屋の窓。消えておる」
「消したならまだいる?」
「あのな。俺達を城に取り込む分の鯨油しかランプに入れてなかったとしたら?それはもうすでにいないということだ。あの門扉の丸太鍵は重い。この城の優男ならば皆で担がねばならぬであろう?」
「つまり残されたのは俺達海賊衆のみ?」
「いや、樽を転がした男がいるかもしれない。最後に残るという男気。わかるか?アグニア様に聞いて来たであろう?奴だけには気をつけろと」
「ああ、ラーシュという猛者か?」
「たぶん。けどなアナナ。安生しろ。俺達は何人いる?いくら戯けた男でもこの多勢に敵うわけはない」
「まあな。では空樽の転がって来た場所をまずはだ」
「そうだ。そういうことだ。わかったか」
「ああ」
「ま、あれだな、ここまで教えを説いたんだ。お前が首領、バルウになった暁にはこの俺は参謀だ。よく覚えておけ。アグニア様に仰せ使わすのだ」
「あ、ああ。わかった」
「よしっ!では50は城内にっ!50は樽の出てきた方角にっ!残り50はこの門を見張れっ!さあさあ、皆分れろっ!何かあったらあのナナカマドの下に集結だっ!」
「待てッ、その指示はこの俺がッ」
「アナナ。法螺を貸せ。その腰元のだ。この俺がそれを吹いたらナナカマドだっ。わかったな皆の者っ!」
「お、お、俺は、、、」
「ん?お前も俺が合図したら戻って来い。さあ、早く法螺を貸せ。お前には用のない代物だっ」




