1112〜拒否される木箱
※第1109〜『ヨンソン兵長とハラル首領』からの続きです
※文中会話
ヨンソンデンマーク兵長
ハラル首領
ましましバルウ
ヴィーゴ
ハッセ
デンマーク兵一名
以上5名が絡んでおります
木箱10箱。
果物や衣類を詰めた箱はマーゲロイ島を取り囲む波に乗った。
「うまくいきましたね、ヨンソン兵長殿。この流れなら少し右に迂回しながらあの入り江にスッポリとハマるはずでありましよ。しかしあいつらまだ手を振っているでありまし」
「あの崖の向こう。バルウ殿のお仲間が気づいて奪い取りに来やせぬか?なんぞ常々見張っているのであろう?」
「大丈夫でありましよ。なっハラル殿」
「はい、今は皆北の堰止めにこぞって出かけておりまして、おるのは皆女どもばかり。例え気づいたとしても男手は無し。舟は無しであります」
「そ、あの時はまだ屈強な男達がいたでありましから」
「なんの話だい?バルウ殿」
ヨンソン兵長は聞いた。
「えっ?ですからおいらが海に飛び込んだ時の話でありましよ」
「そなた小舟から飛び込んだ、、、ネネツの儀式とかの?」
「そ、それでありまし」
「勇猛果敢。神に還るが如しに水中に沈み、底深くの魚を捕まえ這い上がって来た、、、という?伝説じみた話」
「へへっ、溺れたでありまし」
「その細身ながらに凄い奴だと思ったのだが、しかもこの波。深海の魚がいるという深さ」
「そりゃあもうその通り」
「では、常に見張っておった崖の向こうの仲間連中が、溺れていたバルウ殿に気づいて、、、」
「舟を出していただきましたでありまし」
「ハハっ!黙っておればわからぬものを。ではヴィーゴ殿も食したというそのヌルとした魚は?」
「あ、それはおいらが小舟で泡を噴いていた時に足首に絡まっていたらしいでありまし」
「らしい?知らぬということは気絶していたのか?」
「らしいでありまし。ですのでそれを手土産に、まずはハッセ殿とアグニア様のおられる西の浜小屋に向かったでありまし。はい、そのまま。濡れた体で」
「え?それを俺とラーシュ殿が口にしたってわけかい?アデリーヌ殿もでありますよ。あんなマズい物食えたもんじゃありませんよッ」
「ハハッ、ヴィーゴも食べたのじゃの。ありゃ、マズいもんだ風体を見りゃわかる。だでの、このバルウは最初わしに食わせようと持って来たのじゃが、ラーシュの家に持って行けと行ったんじゃ。ハハッ」
ハッセが笑いながら言った。
「つまり悪いのはハッセ殿のせいでありまし」
「バカを言うんじゃないよ。溺れた分際で」
「おい、そんなことより、一向に木箱が入り江に近づかないぞ。右へ流されていく」
ヨンソン兵長が言った。
「おかしいでありましね。これだけ島に引く流れが強いというのにでありまし」
「何かに拒否されているかのようだ。むしろ押し返されている」
目を細め若きバルウ。
遠く入り江を眺めた。
「なんでありましか?あれは岩場ではないでありまし。岩場はその奥。3人が手を振っている辺り。何か瓦礫のような物が至る所に浮いているでありまし」
乗り合わせていたデンマーク兵。
手を上げた。
「はっ!ならばそれはタリエの船の残骸。私達が大砲を撃ち込んだ船の瓦礫。なにしろあの大きな船でしたので」
「ほどほど運の無い男よ、、、船は爆破された上、木箱という助け舟にも見放されるとは」
「入り江から離されていくでありましよ。木箱」




