1111〜ニルスとオロクはどこに行った
マウリッツ城内。
「ところで ラーシュ。ニルスの奴はどこに行った?見たところ奥方様らしき姿も見えぬが?」
「ああ、ニルスなら庭で散歩でもしているんじゃないか?新しい恋人ができたと言っていた。その彼女とだ」
「は?この場に及んで新しい恋人とは?」
「テオドール殿。騙されてはなりませんわよ。今ニルス殿は倒れてしまった城壁の大扉を直しておりますことよ。その彼女が教えを乞いながらお手伝いを」
ラーシュの横でヤンを抱え座っていたアデリーヌが答えた。
「そう、彼女はニルスの人形小屋で働いていた奉公人でね。まぎれ紛れて魔女使い。とんだとばっちりだったってわけさ。意味がわからないだろ?」
「ああ、全く」
「それも彼女ではなく彼。だ」
「ますますわからぬ」
「そのうちわかるさ。ま、皆がここに住むとなると門扉は必要だ。早めに直しておいた方がよい。ニルスが言うには倒れただけだからお茶の子さいさいだと言っていた。そのうち来るであろう」
「ではオロク殿は?さっきまではいたはずだが、用意してあった食事も早々いなくなってしまった」
「やはりテオドール殿は気配りに丈ておりますね。ニルスがいない事にも、オロク殿がおられぬ事にも気づかれる。奥様と抱き合って何も見えない他の連中とは違う」
「ああ、この何年もの間、誰か脱走を謀る者がいないかと、目を凝らしていた生活が続いていたんだ。見えないところまで見える、、、いや見るようになってしまったのさ」
「オロクは独り身。皆の騒ぎに妬きもちを妬いて、城の天守からバレンツの海を眺めてくると言って、その螺旋階段を駆け上って行った。あ〜悔しいとなっ。ハハっ」
「オロク殿はそんな小さなお方ではない」
「ならば城からの海の眺めを、、、」
ダダダダダダッ
「ほら、オロク殿だ。降りてきた」
「ラーシュ殿ッ!やはり来ましたッ!」
「来たかっ」
「先ほどまで靄に包まれていた城下。北向きに風が変わると石畳は一気にその全貌。そこに海賊どもの群れが、、、ざっと100から150」
「早かったな。確かに賊か?」
「はい、ネネツの旗を高々と掲げております」
「ハハッそれは未熟な者らッ。自らが何者かを晒しているということか。俺たちが舐められているのか、はては戦術知らずの者どもか」
「どちらとも、、、」
「どの辺り?」
「石畳の中ほど」
「よしッ!では皆ッ!厨房の勝手口から裏手城壁外に出よッ!外鍵はすでに開けてあるッ」
「えっ?」
「ええっ?」
今再会を讃えたばかりの男と女達。口を開けてアングリ。
「おいッ!キルケッ!イワンッ!お前らは表から出てニルスに伝えろッ!まだ門は閉めるなとッ!それから厨房小屋のセシーリアにもだッ!」
「はいっ!」
「はいっ!承知っす」




