冬は、ココアに涙の雪を溶かして 04
「いいえ、見学に……」 と、言うおれの声を無視して、四人が近づいてくる。
「やったあ……」
「一人目……」
「新入部員……」
「イヒヒヒヒ……」
何? どうしたんだ。この先輩たちは!
おれはそっと後ずさりすると、すばやく回れ右をして逃げ出そうとした。が、制服をガッシリとつかまれた。
「逃げるなよう……」
「そんなあ」 おれは、なさけないことに、なさけない声を出してしまった。
「部長の森那津子です。三年七組でえす。よろしく!」 真ん丸いメガネをかけた森部長は、メガネだけじゃなくすべてが丸い感じだ。きっと、性格も丸いんだろうな。
「はあ」 おれは、コクンとうなずく。
おれは椅子に無理やり座らされて、いきなり自己紹介がはじまった。
「副部長の杉雅治です。森さんとおなじく三年七組! よろしくなあ!」 杉先輩はなんだか杉の木みたいに、背が高い。中学に入ってから背が伸びたんだろう。制服がちょっと小さくなっている。目が細くて眠たそうだ。
「二年四組の竹内光です。えっと……、よろしくね」 竹内先輩は、肩まであるストレートの黒髪をパサリとかきあげた。なんだかかっこいい。
「…………」 もう一人の先輩は、髪が短くてすこし茶色。染めているのだろうか。顔は良く分からない。こっちを見ていないからだ。何かを読んでいる。なんだろう。
「茉里!」 竹内先輩に言われてやっと、おれのほうを見る先輩。
「…………二年三組の皐月茉里。よろしく」
「…………」 なんてきれいな人なんだ。森部長は愛嬌があってかわいくて、杉先輩はやさしそうだし、竹内先輩はかっこよくて美人だ。
でも、一番きれいって言ったら、皐月先輩だろうな。
似てる。
おれの幼なじみに。
「で、あんたは?」 皐月先輩が聞いてくる。言葉はきついけど、目がしっかり笑っている。
「あ、えっと、一年二組の田中太一です。これからよろしくおねがいします」 おれはパイプ椅子から立ち上がり、頭を下げた。カーンといい音を立てて倒れる椅子。そんなのはなかったかのようにおれに拍手を送る、文芸部員の先輩たち。なんだか、恥ずかしい。
「静かにしなさいっ」
司書の先生にしかられてしまった。




