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冬は、ココアに涙の雪を溶かして 05

 「あーあ、部室ほしいなあ」杉先輩がつぶやく。

 「ここじゃあ、何もできないよねえ」 森部長もつぶやく。

 「あ、あの……」 おれは、おそるおそる聞く。

 「何?」 先輩たちがいっせいにこっちを向く。なんか、じっと見られると、話しづらいなあ。

 「えっと……、文芸部って何をするんですか?」

 「へ……?」

 「何? 何にも知らないで文芸部に入部するの?」 皐月先輩に思い切り笑われた。他の先輩は苦笑いをしている。

 実はおれは、まだ一言も文芸部に入部するとはいってない。まあ、他の部より楽しそうだから、ここに入ってもいいけど。とりあえず、何をする部かは聞いておこうと思った。

 「あの、分かりますよ。なんとなくは。ほら、作文を書くんですよね」 おれは、手をぱあに広げて言う。

 「ジャンケンしたいの?」 竹内先輩が手をチョキにして言う。一応、お手上げのつもりだったんだけどな。まあ、負けってことで……。


 おれと文芸部員の四人は、図書室を出た。さっきから、ずっと司書の先生ににらまれていたからだ。

 「学習室に行きます?」 竹内先輩がとなりの教室を指さす。そこには、 『学習室1』 と書かれてある。

 「そこしかないよなあ」 杉先輩はそういうと学習室に入っていった。おれもついていく。

 そこには、教室みたいに机と椅子がならべてあって、二十人ぐらいの人が参考書を広げたり、本を読んだりしている。話をしている人が一番多くて、ここなら、うるさくしても大丈夫そうだった。さっき、おれがまちがってはなしかけてしまった人もいた。おれを見ていやそうな顔をする。なんだよ。まちがえちゃっただけじゃんか。

 「ここはね、図書室があまりにも椅子の数が少ないから、もうけられている教室なの。ほら、あそこにある扉は図書室直通なのよ」 森部長が親切に教えてくれる。

 「へえ、そうなんですか」 おれは、森部長が指さすほうを見る。黒板の横にたしかに扉があった。でも、立入禁止って感じで入りにくそうだ。

 「ほらほら、部長と田中くん! こっちこっち」 竹内先輩が手招きしている。杉先輩と皐月先輩が机をガタガタと動かしていた。おれも手伝う。話し合いをするときみたいに机が五つくっついた。

 「で? 何の話だっけ?」 杉先輩が椅子に座りながら言う。

 「えっと、田中くんがよく文芸部のことを良く分かっていないってことが分かったのよね」 竹内先輩がおれのほうをみる。おれはうなずく。

 「わたしも良く分かんないなあ」 森部長がほおづえをして言う。

 「おれも」

 「実は、わたしも。茉里は?」

 「んー?」 皐月先輩は、文庫本を開いている。本が好きなんだろうな。 「さあ、小説とか詩とか書く部でしょ」

 「小説? 詩?」 おれは首をかしげる。

 「そうね、そうかも。あんまり書いていないけど」 森部長が笑いながら言う。

 「へえ……。みなさん、何か書かれるんですか?」

 「ええ、年に一作ぐらいだけど。小説を一番書くのは姫じゃないかな」

 「まあ、好きですからね」 森部長に言われて、恥ずかしそうに竹内先輩が言う。

 「姫?」

 「春休みに、公園であった子から名前を聞かれて、言ったらかぐや姫みたいだねって言われたんだって」


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