冬は、雪の空、青いだるま 01
竹内先輩が文芸部を引退して、三ヶ月がたった。
今はもう十二月。そろそろ雪が降るかなという時期だ。
「寒い。さむーい」 新部長の田中先輩があいかわらずふるえている。新副部長の高梨先輩はあいかわらずコンピュータをいじっている。
ぼくはというと、やっぱりあいかわらずだ。
本を読んでみたり、小説を書いてみたり。一番多いのは田中先輩と話しているときかな。
さあて、何を書くか……。特別何も書くのないんだよねえ。平和な一日書いたら、ただの日記だよねえ……。
ああ、そうだ。この前、春に書いていた小説が完成したんだ。まだ、誰にも見せていない。約束だからね。
「寒いよ、結人。なんとかしなさい」
「何で、命令形なんですか」
「えっへん。部長だからです」 パイプ椅子を大きくゆらす田中先輩。そして、派手に転んだ。やっぱりね。思ったとおりだ。
「バカじゃないの」 高梨先輩に鼻で笑われる田中先輩。少しかわいそうだけど、いつものことだ。
「やあやあ。みんな元気かね」戸が開いて、竹内先輩が来た。
「あ、部長。どうしたんですか?」 田中先輩が頭をさすりながら言う。
「受験の息抜きだよ。ああ、疲れた」 竹内先輩はパイプ椅子に座ると、文庫本を開いた。
「先輩、先輩」 ぼくは、竹内先輩に原稿用紙を差し出した。
「え? 何?」 原稿用紙を受け取ると、ぼくの方を見る竹内先輩。
「ほら、約束したじゃないですか。春に」
「あ、書き終わったのね。忘れてるのかと思った……」 と言って、原稿用紙を読み始めた。
静かになる部室。
「なあ。おれには? 約束したっけ?」 田中先輩が聞いてくる。
「してませんけど。見たいんですか」
「見たいんです」 おどけた顔をして田中先輩が言う。
「わたしも」 高梨先輩も手を上げる。
「いいですけど……。きっとつまらないと思います」
「いや、面白いね」 竹内先輩がつぶやく。
「もう読んだの! 部長。五十枚ぐらいはあるぞ」 テーブルの上にある原稿用紙をぱらぱらとめくる田中先輩。 「あ! かさまししてる!」
「だって、六枚って、なんか少なすぎるから……」
「だったら、その分なんか書けよ」
「だって……。六枚で終わっちゃったから……」 ぼくは、笑う。田中先輩ににらまれてしまった。
「でも、いい話だね」 竹内先輩がほほえんでくれる。
「どれどれ」 田中先輩が原稿用紙を六枚取り上げる。のぞきこむ高梨先輩。
「なんだよ。順番守れよ……」 田中先輩がつぶやく。
「いいじゃん。見たいんだから」 だまりこむ田中先輩。
竹内先輩は文庫本を見はじめる。
ぼくは、何もすることがなくなったので、椅子をかたむけてみる。そっとそっと。
「何やってんだよ」 派手に転んだぼくを見る三人。
「あ、いや。なんでもないです」 きれいにたたまれてしまったパイプ椅子を元に戻す。
「んー、何だか良く分かんないなあ」 高梨先輩が感想を言ってくれる。
「……まあ、まあまあって感じだな」
「やっぱりそうですよね……。まあ、最初ですから」
「自分で自分をなぐさめんな」 田中先輩にずつきされた。




