冬は、ココアに涙の雪を溶かして 01
おれは、田中太一。湖宮中に入学したばっかりだ。クラスは二組になった。担任の先生はやさしくて、ちょっと厳しい。小学校からの友達もたくさんいるし、なかなかいい中学校生活のスタートだ。
「なあ、部活はどこに入る?」 となりの席の関原が聞いてくる。今は、休み時間だ。次は移動教室なので準備をする。
「んー、どうしよう。べつに入りたいのがないんだよなあ」 カバンの中からアルトリコーダーを出す。机の中から教科書も。
「だったら、吹奏楽に入らない? 楽しいぜ、きっと」 目をキランと輝かせる関原。
「うーん、考えとくよ」 あいまいにうなずくと、おれは教室を出た。関原もついてくる。 「関原は、吹奏楽に入るのか?」
「ああ、もちろん。実はもう入部届けだしちゃったんだ」 ヘラッと笑う関原。入部届けを出すしめきりはまだ、二週間もあるのに。
音楽の時間中。おれは決めた。吹奏楽部はやっぱり無理だ。
授業の最初にある合唱で、音を大きくはずして、みんなに笑われること五回。
リコーダーが上手くふけなくて、先生に個別指導を受けること二回。
関原に、おまえをさそったのはまちがいだった。と言われること三回。
これでもし、吹奏楽部に入ったとクラスみんなに知れたら、いよいよ笑いものになる。
「やっぱダメだね。吹奏楽は」 音楽室から教室に帰る途中、関原に言った。
「ああ、そうだろうね」
そもそも、おれは、音楽が好きじゃない。
さて、何にするか……。
そろそろ真剣に考えなくてはいけない。入部届けのしめきりは明日になってしまった。
部活といったら、運動部がまず思い浮かぶけど、何か疲れそうだし。
盛んなのは、美術部だけど、そんなに美術好きじゃないし。
家に帰ってから、おれは部活の一覧表を取り出す。
野球、サッカー、バスケ……。の項目にななめ線をひっぱる。
あと、吹奏楽。美術部。
定規で線をひっぱっていく。残ったのは……。
マンガ部、科学部、コンピュータ部、の三つ。
おっと、一つ残ってた。
──文芸部。




