秋は、たこ焼きスケッチブック 08
正面玄関から出る。
あたりを見渡す。
片付けをしている屋台がちらほら見られる。まだ、食べ物を売っている店の方が多い。
いないな……。
もう、遠くに行ってしまったんだろうか……。
歩きながら探す。
いた! 西門からちょうど出て行くところだ。木野さんのほかにもう一人いる。
「木野さん! 木野葉子さん! 待ってー」 力の限りさけんだ。
木野さんがふり向いた。木野さんだけでなく、校庭にいた人たちもわたしを見た。
わたしは、少し恥ずかしくなって、木野さんに向かって走り出す。
「どうしたんですか? 部長」 木野さんともう一人の女子が目を見開いて言う。
「大丈夫? ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」 わたしは、深く頭を下げた。
「え? 何のことですか? えっと……とにかく頭を上げて下さい」
「木野さん……、一人に共同制作をやらせてしまって……。すべてわたしの責任です。部活にいけなかったから……」
「ありがとうございます」 とつぜん、木野さんが頭を下げた。
「え? どうしたの?」
「わたしの絵をみて、分かったんですね。先輩たちがわざわざ、部長に教えるとは思えませんし。覚えててくれたんですね。わたしのこと」
「ええ……。知っていたわ。ずっと」
「それに、部活にこれなかったのは、当然のことだと思います」
「……え?」
「部長は委員会で忙しかったのでしょう? 来られないのは当たり前です。それに、一人で全部描いたんじゃありません。何人かは手伝ってくれたし……。ちょっと無理してしまったけど、ぜんぜん辛くはなかったです。むしろ、大きな達成感があります」 ニッコリとほほえむ木野さん。
「でも……」
「部長らしくありませんね。こんなにすばらしい文化祭を作ったのは部長じゃないですか。もっと胸張っていいと思います。わたしなら、エヘンってえばっちゃうなあ。まあ、そこがわたしと部長の大きなちがいですね」
「わたしが……作った?」
「そうですよ。ね、莉子」 莉子と呼ばれた子は、大きくうなずいた。 「うん、生徒会長がいなきゃ、文化祭はめちゃくちゃですよ。きっと」
「……ありがとう。気を使ってくれて」
「気なんか使っていませんよ。そもそもわたしたちに気なんてありません」
「ねえ、気ってなんだろ?」 莉子さんが木野さんに小声で聞く。
「さあ、わたしも良く分かんない」 首をふる木野さん。
わたしは、少し笑った。
二人が気をたくさん使ってくれたおかげで、すこし元気が出た気がする。
「ありがとう」
「それじゃあ、また明日」
「ええ」
わたしは、二人が歩いていくのをずっと見ていた。
ありがとう。
もうすぐ引退だけど。それまで頑張ってみるよ。
「沙貴絵、素が出てたよ。素が」 光だ。ポップコーンが入っている大きい紙コップを持っている。しかも、両手に二つも。 「はい。沙貴絵の分」
「え? 何で?」 わたしは、山盛りのポップコーンが入った紙コップを受け取る。
「さっき、言ったやんか。ポップコーンをおごるって」
「…………何をおっしゃっているのかしら。わたくし、これからいろいろと忙しいんですの」 わたしはすましてそういうと、ポップコーンを口にほうりこんだ。




