秋は、たこ焼きスケッチブック 02
「お母さま。今日は、委員会の資料を作らなくてはいけませんの。家庭教師の方はまた、明日ということに、していただけませんか?」 母が相手だと、会話の上品さレベル五だ。少し困ったような顔をしていうと、母は何でも言うことを聞いてくれることを知っている。
「だめです。また、学年二位だったのでしょう。受験生なのですから、身を引き締めていかなくてはいけませんの。委員会の資料は、委員の人にしてもらえればいいのではないですか? 委員長なのですから、それくらいは可能でしょう。沙貴絵さん。あなたは、お優しいから、何でも引き受けてしまうのですね。でも、受験生だということを、お忘れのないように」 そう言うと、母は出て行った。
信じられない。
わたしは、ボゥっと母の出て行ったドアを見つめた。
クルリと椅子を回転させる。
わたしの手は自然とコンピュータのスイッチを切り、参考書を手に取っていた。
こんなことってある?
数学の問題をときながら考える。
ええっと、この問題は、連立方程式を使った問題ね……。母が言うことを聞いてくれないなんて……。エックスイコール三とすると……。受験生だからかな……。よおし、式は立てられた。あとは解くだけね。……ああ、委員会が文化祭で行う出し物の企画を考えようと思ったのに……。
「…………できた」 問題を五問解き終わったとき、わたしは分かった気がする。 「結局、何でも言うことを聞くのは、母じゃなくわたしなのね……」
ふうう。
わたしは、首をふると、参考書に取り組んだ。
もう、何もかも良くなった。と言っていい。
会長、部長、委員長になったのも、母に喜ばせるためなのかも。
でも……。
実際に喜んでくれた?
ううん。それがさも当たり前だというように、うなずいただけだ。
あああ、何をやっているんだろうか。わたしは。
どんなに頑張っても、光には追いつくことができない。
それでいいや。
やっきになって頑張っていた自分がバカらしい。
もういいんだ。
そんなこと聞いたら、母は倒れちゃうかもしれないけど。
ううん。母なんて関係ない。関係あるのは自分だけだ。
体育館へ向かう。
光に呼ばれて来た。
文化祭三日前。わたしは、ただたんたんと文化祭の準備を進めていた。
委員会で、なにか出し物を。と思っていたけど、やっぱりやめた。
楽しいだろうけど……。
部活にもあんまりでていない。わたしがいなくても、部員はまだまだいるのだから。
委員会の仕事の方が忙しい。クラスの出し物もある。わたしのクラスは、体育館でダンスをやるらしい。わたしは、照明係をやることにした。
何度か、体育館に下見に来たけれど、全然飾りつけされていなかった。まったく、何をしているんだか、一年生は。
「沙貴絵、こっちこっち」 体育館の入り口の前の大きな木の下でまっていた光が手をふって、こっちおいでをする。
「何? わたくし、他のクラスの見回りに行かなくてはいけないの」
「ねえ、最近、部活には行った?」 わたしの言っていることを無視して光が言う。




