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秋は、たこ焼きスケッチブック 01

 「部長ってさ、えばっているわりには、あんまり上手くないよね、絵」


 わたくし、佐藤沙貴絵。生徒会会長、美術部部長、文化祭実行委員会委員長をしております。成績優秀。スポーツ万能。自分で言うのもなんですけれど、何も欠点なんて、ないと思っていますの。

 なーんて、それは、外のわたし。一行目の内緒話がグサリとつき刺さる今日このごろ。勉強しなさいと言う母の言葉より、グサッとくる。でも、ちゃんとしていなくては。会長、部長、委員長なのだから。

 友だちといったら、一人しかいない。幼なじみの竹内光だ。あの子は、いつもしっかりしていて、勉強をしていなさそうなのに、わたしよりも点数がいつも上。選挙に勝ったのだって、まぐれだと思う。うん、きっとそう。わたし、人前に出るとカッとなる性格で、いつも選挙演説しているみたいだって言われるけど、ちがうんだ。

 でも、光は分かってくれていると思う。わたしの本当の姿を。

 「佐藤さん、佐藤さん、もうすぐ委員会がはじまりますよ」 同じクラスの久保くんが、椅子にすわっていたわたしの肩をたたく。

 「うん……。ありがとう」 久保くんが目を丸くした。わたしがお礼を言ったことがそんなに意外なの?

 委員会中、わたしは光の様子をじっと見ていた。

 スラスラと委員に指示をだす光。

 ああ、なんでわたしは、生徒会に立候補してしまったんだろう……。目線を下に落とす。手が見えた。手をじっと見る。油絵で汚れた手。洗っても洗っても落ちない。絵の具がしみこんでいるんだ。

 意識があまりないまま、部室へ行く。いつの間にか、委員会は終わってしまった。

 これから忙しくなるのよ……。頑張らなくっちゃ……。

 でも、今のわたしには、雑用しか残っていない気がする……。いいのかな。こんなので。

 わたしだけでなく、委員会みんながそう。裏方にてっするだけでいいのかしら……。

 わたしは、歩きながら考える。

 なにか……そう、文化祭実行委員をやって良かったって思えるような……。

 そうだ。委員会で、なんか出し物をしたらどうだろう。

 もっと忙しくなるかもしれないけど、きっと、楽しいはず。

 「それが、いいわ」 わたしは、思わず口にだしていた。となりを歩いていた山崎さんが首をかしげる。

 「どうしたんですかあ? 部長」

 「いいえ、なんでもないの。ちょっと、いいことを思いついただけ」 わたしはニッコリとほほえんだ。

 「えー、なんですかあ」 山崎さんが、一緒に歩いていた人と顔を見合わせる。えっと、この人、誰だっけ……。

 「やだなあ、部長、木野ちゃんですよ」 木野と紹介された人が、おじぎをした。

 「あら、そう……。同じ部?」 美術部は人数が多すぎるから、毎日あわないと顔と名前が覚えられない。活動場所も二つに別れているし。

 「はい。一年、木野葉子です。よろしくお願いします」 ……そうだ。思い出した。今年の春の作品展で金賞を受賞した子じゃないの。ああ、なんで忘れていたのかな。

 「ええ、よろしく」 忘れていたなんて、言ったらダメ。 『部長、部員の名前を忘れたんですかあ』 とか、また変なうわさが流れてしまう。冷静に。今聞いたようにふるまわなくては。

 「部長。この子すごいんですよお。春の作品展で金賞を取ったんですから」 ね、と木野さんの顔を見る山崎さん。ここからじゃ、山崎さんの顔は見えないけど、後輩を自慢するとてもいい顔をしていると思う。わたしも自然とほほえんでいた。

 「そう。知らなかったわ。とってもいい絵なんでしょうね」 わたしは、髪をかきあげながら言う。


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