秋は、落ち葉と共に踊る暇もなく 11
終わった……。恥ずかしくて、詳しくは書かないけど、無事に終わったことは書いておこう……。
「よくやるよなあ、おれなら、自分しか代役いなくても、逃げるぞ」 田中先輩が笑いながら言う。 「結人が脚本書いたから、どんなもんか見てみようと来たのに、まさか女装して出てくるとは」
「わたしに言われるまで、気づかなかったくせに」 高梨先輩が、くすくすと笑いながら言う。
「それにしても似合っていたわねえ……。ピンクのリボン」 竹内先輩が言う。
「もう、いいですよ。その話は」 ぼくは、肩を落としながら言う。 「そういえば、木野は? もう家に帰ったの?」
「ううん、まだ家に連絡がつかないみたい。両親は携帯電話を持っていないらしいし。わたし、保健室に言ってくる」 高梨先輩が、保健室に向かって歩き出す。
「あ、ぼくも」
保健室につくと、野澤が木野の寝ているベッドの横に座っていた。
「劇は大成功よ。佐沼くんが良くやってくれたわ」
「そう、それは良かった」 木野がほほえむ。この顔を見れたから、代役を引き受けてよかったなんて絶対に思わないぞ。
「葉子ちゃん、具合はどう?」 竹内先輩が聞く。
「だいぶ良くなりました。熱も少し下がったし」
「それは良かった。明日は、結人の演技を見るといいぜ。まるでロボットだ」 田中先輩はまだ笑っている。
「さあさ、保健室にこんなにいてはダメよ。木野さんが疲れてしまうでしょう? 帰った帰った」 保健の先生が、ぼくたちを保健室の外へ追い出そうとする。
「じゃあね、葉子ちゃん」 高梨先輩が木野に手をふる。野澤はここに残るみたいだ。窓をジッと見ている。
「ねえねえ、誰か来て! 大変! 人が……人が落ちてきたの!」 野澤の叫び声が聞こえた。
最初は人だとは思わなかった。だた、黒い布が落ちているのだと思った。
でも、良く見ると、それは紛れもなく人間で、顔は隠れているけど、足が見えた。どこかで見たような気がする……。
「はやく、救急車を呼ばなくちゃ……!」 保健の先生が、走って保健室から出て行く。パタパタと走る音が通り過ぎる。
ぼくらは、窓越しに見ているけど、その落ちてきた人の周りに人が集まってきた。他校の制服も見られる。でも、こんなにたくさんの人に見られているのに身動き一つしない。なにか、緊急手当てとかしなくていいんだろうか……。
そのとき、ガラリと窓を開けて、竹内先輩が飛び出した。外の人ごみから竹内先輩の妹、響も出てくる。
「お姉ちゃん! どうしたの?」 響の声がする。姉に良く似ている声だ。
「大丈夫ですか! ……あれ?」 竹内先輩が、布をはぎとった。何もない。布の下は、地面だ。足も良く見るとテカテカしている。プラスチック?
ピーポーピーポーという救急車のサイレンが、遠くから聞こえてきた。
「まったく、誰だよ! こんなことをしたのは……」 竹内先輩が、上を見て大きな声で叫んだ。ぼくたちも、窓から身を乗り出して上を見る。だけど、よくは見えない。
周りにいた人たちが、悲鳴をあげた。




