秋は、落ち葉と共に踊る暇もなく 10
教室に行くと、クラスメイトの数人がいて、ポップコーンや玉コン。たこ焼きにおでんを買ってきていた。
「あれ、劇に使うのはダンボールで作ったやつじゃなかったの?」 ぼくは聞く。
「うん、そのつもりだったのだけど、文化祭をみんなで回っていたら、劇で使うものが全部売っていたんだ。だったら、本物を使ったほうがいいだろうって」 亀塚がおでんの大根をほおばりながら言う。ぼくもはんぺんをもらって食べる。うん、味がしみこんでいておいしい。
「で、木野は?」
「あのねえ……」 野澤が今までの話をする。
「で、代役は佐沼くんがいいんじゃないかって話になったのよ」
すると、教室中にいたみんながうなずいて、
「うん、それがいい」 と言った。ああ、ぼく泣きそう。
「じゃあ、これを着てね」 衣装係の浅野がワンピースと赤いランドセルを持ってくる。
「いやだって言ったらダメ?」 ぼくは、ピンクの大きなハート柄のスカートを持って言う。
「ダメ!!」
「わあ、似合うじゃんか。リボンとかつけたらもっといいんじゃないか?」
「そうね。誰か、リボン持ってる?」
「はあい、わたし持ってまあす」
「スカートがピンクだから赤かな。オレンジもいいかもしれないね」
「いっそのこと、同じピンクがいいんじゃない?」
「痛いっ。髪をひっぱらないでよ」 ぼくは、うったえた。
「香奈ちゃんは、だまってて!」 香奈ちゃんとは、ぼくが代役する小学生の役だ。ああ、なんてざまだ。リカちゃんって名前にすればよかったかな。
鏡を見てぼくは、すぐ目をそらした。なんてかっこうなんだ。これじゃあ、表を出て歩けないよ……。ってこのかっこうで劇に出るんだった。あああ……。
「ひとりでぶつぶつ言ってないで、さあ、みんなが集まる前に、練習するわよ!」 野澤がどこからか、メガホンを持ってきて、ぼくにビシッと言った。
「なんでこんなことになっちゃったんだ……」 ぼくは大きくため息をついた。
「はい、ごちゃごちゃ言わない! おじいさんと 『お化け喫茶 裏飯屋』 に入るシーンから!」
「あのう、台本は?」 ぼくがおそるおそる野澤に聞く。
「自分で書いたんだから、分かるでしょう?」
「なんとなくは分かるけど、全部は分かんないよう……」
「じゃ、なんとなくでよし!」
「ええっ、いいの?」 ぼくは、目を丸くしながら言う。
「オッケイ!」 野澤が親指をグッとつき立てた。もっていたメガホンが落ちる。




