秋は、落ち葉と共に踊る暇もなく 09
ぼくは、窓から外を見た。校庭が見える。たくさんの人が、笑顔で屋台を見て回っている。
「あ、そうだ……。劇、どうしよう」 木野が、突然つぶやく。そうだ、木野は、おじいちゃんに連れられて 『お化け喫茶 裏飯屋』 にくる小学生の孫の役だった。身長が女子の中では一番小さい木野をイメージして作ったんだ。
「代役、頼めない?」 木野が、ぼくを見ながら言う。
「ええ、ぼく?」 そりゃあ、身長は木野とたいして変わらないけど……。
「そうだよ。結人くん。衣装はちゃんとあるんでしょ?」 高梨先輩が聞いてくる。
「ええ、でも、スカートなんてはけないし……。それに、髪だって短いよ」
「髪の短い女の子だっている。現にわたしがそうじゃない。スカートだって、一生に一度は、はいてみたら? 貴重な体験ね」
「いやです」 ぼくは、言い訳が聞かないとみて、きっぱりと断ることにした。
「……でも、他の人に頼んでも、すぐにはセリフが覚えられないと思うの。脚本を書いた佐沼くんなら、ね」 木野が、弱々しい声を出す。
「そうだよ。葉子ちゃんの言うとおり。はい、決定。これ以上の代役はいないわ」
保健の先生が戻ってきた。ぼくは、保健の先生に助けを求める。
「あら、いいじゃない。目もくりんとしててかわいらしいし、女の子の服装をすれば、女の子よりもかわいいんじゃないかしら」
「そんなあ……」 ぼくはがっくりと肩を落とす。
「そうですよね。そうですよね」 高梨先輩は、ぼくの肩をたたいた。
「佐沼くんが劇に出るの? へえ、わたしも見ようかしら」
「ありがとう、助けてもらった上に、代役までさせちゃって」
「ぼく、まだやるっていってないよ……」
「あ、そうそう、木野さんの家に電話したんだけど、留守電になっていたのよ。先生の車で家まで送っていきましょうか? でも、家に誰もいないんじゃあ、帰っても大変よねえ」 先生は、うーんと考えこむ。ぼくも考える。この危機的状況をどう乗り切るか……。
「いえ、もう少し休ませてもらって、歩いて家に帰ります」
「いえ、ダメよ。熱がある子を、歩かせるなんてできないわ。ここで寝ていなさい。何時間かたったら、また家に電話をかけてみるから」
「あ、ここにいた。葉子、どうしたの?」 野澤が、保健室に入ってくる。
「莉子……」
高梨先輩が、野澤に木野が熱を出して、劇に出られないことを話した。
「それじゃあ、代役は佐沼くんね」
「やっぱり? そうだよね」 高梨先輩が、うんうんとうなずく。
「演劇部の目に狂いはなし!」
「そんなあ……」
「じゃあ、佐沼くん、衣装を着てみましょうか」 ぼくは、野澤に引きずられて保健室を出る。
「いってらっしゃーい」 高梨先輩が、手をふっている。ああ、なんでこんなことになっちゃたんだろう……。情けは人のためならずじゃなかったのか……。




