表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/63

秋は、落ち葉と共に踊る暇もなく 09

 ぼくは、窓から外を見た。校庭が見える。たくさんの人が、笑顔で屋台を見て回っている。

 「あ、そうだ……。劇、どうしよう」 木野が、突然つぶやく。そうだ、木野は、おじいちゃんに連れられて 『お化け喫茶 裏飯屋』 にくる小学生の孫の役だった。身長が女子の中では一番小さい木野をイメージして作ったんだ。

 「代役、頼めない?」 木野が、ぼくを見ながら言う。

 「ええ、ぼく?」 そりゃあ、身長は木野とたいして変わらないけど……。

 「そうだよ。結人くん。衣装はちゃんとあるんでしょ?」 高梨先輩が聞いてくる。

 「ええ、でも、スカートなんてはけないし……。それに、髪だって短いよ」

 「髪の短い女の子だっている。現にわたしがそうじゃない。スカートだって、一生に一度は、はいてみたら? 貴重な体験ね」

 「いやです」 ぼくは、言い訳が聞かないとみて、きっぱりと断ることにした。

 「……でも、他の人に頼んでも、すぐにはセリフが覚えられないと思うの。脚本を書いた佐沼くんなら、ね」 木野が、弱々しい声を出す。

 「そうだよ。葉子ちゃんの言うとおり。はい、決定。これ以上の代役はいないわ」

 保健の先生が戻ってきた。ぼくは、保健の先生に助けを求める。

 「あら、いいじゃない。目もくりんとしててかわいらしいし、女の子の服装をすれば、女の子よりもかわいいんじゃないかしら」

 「そんなあ……」 ぼくはがっくりと肩を落とす。

 「そうですよね。そうですよね」 高梨先輩は、ぼくの肩をたたいた。

 「佐沼くんが劇に出るの? へえ、わたしも見ようかしら」

 「ありがとう、助けてもらった上に、代役までさせちゃって」

 「ぼく、まだやるっていってないよ……」

 「あ、そうそう、木野さんの家に電話したんだけど、留守電になっていたのよ。先生の車で家まで送っていきましょうか? でも、家に誰もいないんじゃあ、帰っても大変よねえ」 先生は、うーんと考えこむ。ぼくも考える。この危機的状況をどう乗り切るか……。

 「いえ、もう少し休ませてもらって、歩いて家に帰ります」

 「いえ、ダメよ。熱がある子を、歩かせるなんてできないわ。ここで寝ていなさい。何時間かたったら、また家に電話をかけてみるから」

 「あ、ここにいた。葉子、どうしたの?」 野澤が、保健室に入ってくる。

 「莉子……」

 高梨先輩が、野澤に木野が熱を出して、劇に出られないことを話した。

 「それじゃあ、代役は佐沼くんね」

 「やっぱり? そうだよね」 高梨先輩が、うんうんとうなずく。

 「演劇部の目に狂いはなし!」

 「そんなあ……」

 「じゃあ、佐沼くん、衣装を着てみましょうか」 ぼくは、野澤に引きずられて保健室を出る。

 「いってらっしゃーい」 高梨先輩が、手をふっている。ああ、なんでこんなことになっちゃたんだろう……。情けは人のためならずじゃなかったのか……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ