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秋は、落ち葉と共に踊る暇もなく 08

 文化祭当日。

 「今日と明日、頑張っていきましょう!」 亀塚が教室で大声を上げる。みんなはオーと叫ぶ。この光景、前にも見たような……。

 「頑張ろうね。ゆうくん!」 千坂が笑いかけてくる。ぼくも、ほほえみかえした。昨日放課後遅くまで、体育館に残っていたから、疲れがたまっている。

 「公演は午後からです。十二時半までに体育館に集合してください。それまで、文化祭を楽しみましょう!」

 ぼくは、まず美術室に行ってみることにした。共同制作が気になる。

 美術室に行く前に、お化け屋敷によった。ちょっと怖かったけど、たかが作り物。まったく怖くなかったと、強気に言っておこう……。

 「わあ……」 一辺が二メートルはありそうなキャンバスに学校の風景が、描かれていた。文化祭を準備する顔がたくさん、油絵の中に入っている。知った顔も中にはいる。メガホンを持っている野澤の顔もあった。竹内先輩の顔も。ジャージ男も。屋上にたたずむマジシャンの黒マントも。未完成のお化けたちも。

 ここに、文化祭の湖宮中全部が描かれている。

 「すごい……」 ぼくは、全身に鳥肌が立つかと思った。さっきのお化け屋敷とは、ちがう鳥肌だ。

 「佐沼くん、来てくれたんだね」 木野が話しかけてくる。心なしか顔が青い。

 「うん。すごいね。これを一ヶ月弱で書きあげたの? さすがだね」 ぼくは言う。

 「ありがとう……」 と言って、木野はくずれるように倒れた。

 「木野! 大丈夫か」 ぼくは、木野をかつぐと保健室に行こうとした。

 「ああ、大丈夫だよ。木野ちゃんは強いから」 テーブルに腰をかけている先輩たちが、笑いながら見ている。

 「え……」

 かついでいる木野は、ズッシリとだんだん重くなって、あぶら汗が出てきていた。ぼくは、先輩たちを無視して、保健室へいこうと廊下へ出た。

 「どうしたの? 葉子ちゃん!」 高梨先輩が、かけつけて来てくれなかったらきっと、ぼくも倒れそうになっていたと思う。

 「急に倒れたんです。保健室に連れて行こうと思って」

 高梨先輩は無言でうなずくと、木野の肩に手をまわした。

 「ああ、高梨ちゃんだ。文芸部は楽しいですかあ?」 後ろから、さっきの先輩たちの笑い声が聞こえる。高梨先輩とぼくはだまって木野を保健室へと運んだ。


 「──熱が高いわね。それに貧血をおこしている。今日は早退したほうがいいわね」 保健の先生はそう言うと、木野をベッドに寝かせた。

 「木野さんの家に電話して迎えに来てもらうから、ちょっとここで木野さんのこと見てくれる?」

 「はい」 ぼくと高梨先輩は、木野が寝ているベッドの横にある椅子に座った。

 「……高梨先輩、佐沼くん、ごめんね。わたしは大丈夫だから、文化祭……楽しんできて」

 「いや、いいよ。べつに行きたいところもなかったし」

 「わたしも」

 「そう、ありがとう……」 そういうと、木野は布団に顔をうずめて泣き出した。

 「どうしたの? ……まあ、なんとなく分かるけど、大林たちね」 木野は首を横にふった。

 「大林って?」 ぼくは聞く。

 「三年の先輩。ほら、さっきの」 ああ、あのテーブルに腰かけていた先輩たちか。

 「部長……じゃないわよね」 木野はまた首を横にふった。

 「なんでもない……。なんでもないんです。ただ、わたしが勝手に倒れただけです」

 「そう……」 そう言って、二人ともだまってしまった。


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