秋は、落ち葉と共に踊る暇もなく 05
十一日後、ぼくは、なんとか 『お化け喫茶でポップコーンと玉コンとおでんを売る野球選手』 の脚本を完成させた。題名は 『不思議な客人たち』 。しめきりに一日おくれたので、みんなからブーイングがおきたけど、できないよりはいいだろ。と叫んで、丸くおさまった。
その日の放課後からが、大変だった。役決めや、裏方を決めたりして、放課後毎日残った。でも、みんなはじめての文化祭なので楽しそうだった。
主人公の野球選手の役を亀塚。お化け喫茶で働くアルバイトの女子高生役を野澤。その店にやってくる客人たちを、他のみんなが受け持った。ぼくは、やることはもうやったので、裏方の仕事をちょこちょこと手伝うことにした。
他のクラスも、いろいろな出し物を企画しているみたいで、廊下を歩くと自然とワクワクする。となりのクラスは、手品ショーをするみたいだ。黒いマントをはおった人がいる。お化け屋敷もあるなあ。当日行ってみようかな。でも、みんなは、クラスばっかりかまってまいられない。部活の展示もあるのだ。とくに木野は、劇で小学生の役と、部活での共同制作、委員会の仕事で、てんてこまいだ。美術部での共同作業が一番大変らしい。
「さあ、次は、たこ焼きを買いに来た中年のおばちゃんのシーンだよ!」 野澤がメガホンを片手に大声を出す。普段のめんどうくさそうな態度とちがって、いきいきとしている。
「はいはいっ。分かりました、監督!」 お調子者の渡辺が敬礼をしている。
「あんた、このシーンに関係ないでしょ」 高橋が段ボール箱を、渡辺におしつけながら言う。
「はい、スタートッ」
扉を開けるふりをして、横山が 『お化け喫茶 裏飯屋』 に入ってくる。ベル役の鈴木がカランカランと手に持ったベルを鳴らす。
「成田のおっちゃん、あんた昔、野球選手だったんだってねえ」 ダンボール製のカウンターに近づき、話しかける横山。
「ああ、そうだよ」 亀塚がコーヒーカップを拭くふりをしながら答える。
「カットッ。ダメだよ、明日香。もっと、中年のおばちゃんみたいにならなきゃ。いまのじゃあ、ただの女子中学生が中年のおばちゃんの演技をしているみたいじゃない!」 野澤が、メガホンと台本をふりまわす。
「だって、わたし女子中学生だもん。そうなるのはあたりまえじゃない!」 横山が反論する。
「中年のおばちゃんになるのよ! それが、演劇なのよう!」 横山の反論は、今の野澤には通じない。
「はい、もう一度やるわよう!」
「それじゃあ、ぼくは、会議室に行って来るね」 ぼくは、横にいた坂井に言うと、教室を出た。これから、委員会の仕事だ。体育館の装飾の飾りを作る。すぐ終わるだろうと言うことで、当日の一週間前の今日から準備がはじまる。木野は部活に行っていてこられないと言っていた。
会議室につくと、一年生はなんと二人しかいない。七クラス二人ずつで十四人いるはずなのに。
「こんなに少ないの?」 ぼくは、となりのクラスの透のとなりに座りながら聞く。
「他のみんなは、部活だよ。美術部」 ピンクの大きな紙に 『化』 とかわいい字で書きながら透が言う。
「ええっ、十一人も美術部なの?」
「そうさ、なんてったって佐藤会長が委員長だからな。はい、おまえは 『祭』 の字を書けな。きれいに書くんだぞ」 黄緑色の大きな紙を渡される。ぼくは、テーブルの真ん中にあるペンを取る。
「三人で、体育館の装飾をするの? 一週間でできるかなあ」 ぼくは、向かい側の席に座っている名前の知らない女子を見る。うす黄色の紙に 『文』 と書いていた。
「まあ、なんとかなるんじゃないか。美術部のやつらもまったく来ないってことはないだろうしな。いざとなったら、助っ人を頼めばいい」
「助っ人? みんな忙しいよ。ひきうけてくれるかなあ……」
「大丈夫。もう頼んどいたよ」
「誰を?」
そのとき、会議室の戸がガラリと開いて、竹内先輩が顔をのぞかせた。
「やあ、ちゃんと働いてる? 弟たちよ」




