夏は、宿題の山と肝だめし 06
明るくなる教室。
「透くん!」 涼香がさけんだ。そしてわたしのほうを見る。そう、昨日わたしたちのことを追いかけてきた二人のうち一人は、わたしの双子の兄、透だったの。双子だから、考えることが同じなんだよね。
もう一人は…………。
「誰?」 わたしは、ガムテープにもがいている、もう一人を指さして、透に聞いた。
「…………いいから、このガムテープ。なんとかしろ」 その声は、怒りをふくんでいた。わたしと涼香は急いで、透ともう一人の救出作業にかかる。手はべとべと、頭はクラッカーの紙ふぶきだらけ。見た目は、すっごく笑える二人なんだけど、二人ともだまってわたしたちをにらみながらガムテープを取っているので、笑いをこらえるのに必死だった。
「……はい」 なんとか二人を救出すると、もう一人の鈴木くんはわたしに手をつきだした。
「……何?」 わたしはポカンと透を見る。透はあきれた顔をすると、「良く見てみろ」と言った。
「え……」 その手の上に乗っていたもの……。わたしのうで時計だった。
「何で? どうして? 家にあるはずだよ」 まさかこの人、マジシャンなのかな。
「ばーか。昨日落としたんだろう。響、お前、怖がって落としたことも気づかないでやんの」 え? なんのことだろう……。首をひねった。ひねっても、何も思いだせない。透はわたしを、ジトッとした目で見る。
「あー! そうだ。思い出した。ほらほら、教室から出たとき、カーンって金属が落ちる音が聞こえていたじゃない!」 涼香がさけんだ。
「えー、そうだったけ?」 わたしはまた首をかしげた。と、そのとき、思い出した。一組の教室を出て、廊下を歩いている途中、カーンという音がしたことを。そうか、ゆるかったから、落ちちゃったんだ。
「あの……、うでが疲れちゃったんだけど……」 コホコホとせきこむ鈴木くん。
「あ、ごめん」 わたしは鈴木くんから、うで時計を受け取った。そして、わたしは涼香と顔を見合わせると、頭を下げた。
「時計を拾ってもらったのに、こんなことしてごめんなさい」
それから、わたしたち四人は、廊下に落ちている針なし画びょうとガムテープ、クラッカーの紙ふぶきなどの回収に取りかかった。
画びょうをほうきではきながら、わたしは透に言った。
「昨日、声をかけてくれればよかったのに。だまって追いかけてくるもんだから」 ちりとりを持っていた透は、頭をかくと言った。
「じつはおれ、最初は鈴木が怖がらせようとして追いかけているんだと思って、走ったんだけどさ。時計を拾ったのを気づいたのは、今日、学校に来る前だ。鈴木のやつ、画びょうが足に刺さっちゃってさ、思いっきりさけんだ後だから、声がかれちゃって出なかったんだってさ」
「へえ……。それはかわいそうねぇ……」 わたしは少し笑った。
あーあ、なんだかとっても疲れちゃった。でも、楽しかったなあ。
分かったことが二つある。
一つは、わたしは意外に怖がりだっていうこと。
もう一つは、涼香が意外に頼もしいということ。
まあ、結局はお化けもゾンビも、この学校にはいなかったんだよね。




