夏は、宿題の山と肝だめし 05
次の日の朝、わたしと涼香は店で、画びょうとクラッカー、それにガムテープ、細いひもを買った。
画びょうの針はちゃんと切っておく。やっぱり、痛いだろうし。
これで準備はオッケイ。
「ねえ、昨日、あの窓だけが開いていたのは、あの人たちが最初に開けたからじゃないかな」 涼香が画びょうの針を切りながら言う。針は危ないので、ガムテープにくっつけて、いらないタオルに包んで捨てることにした。あ、でも燃えるごみに出していいんだろうか。危険物かも。あとでちゃんと調べてみよう。
「ああ、そうか。それじゃあ、あの人たちよりも早く行かなくちゃいけないから、学校に行って、窓を開けてきたほうがいいかな」 わたしはクッキーをつまみながら言う。
涼香が時計を見る。わたしもつられて時計を見た。涼香の部屋の時計は、文字が小さくて針が細いから、見にくい。きっと、実用性よりデザインを重視しているんだ。わたしは、学校の時計のようなシンプルなやつが好きだなあ。あ、そういえば、今日はうで時計をしてこなかった。はあ、少し残念。
「……五時かあ。半ころになったら、行く?」
「そうだね。行こう、行こう!」 わたしは、なんだかうきうきしてきた。針なし画びょうは上手くいくのか。クラッカーは?
来た……!
わたしたちは、理科実験室の戸のほうにすわっている。べつに隠れてはいないけど、誰かが入ってきても、真っ暗だから見つかる心配はないだろう。
昨日とはちがって、全然怖くない。きっと、人をおどろかせる立場にいるからだろうなあ。
昨日、わたしたちが逃げかえった窓から、物音がする。わたしと涼香は顔を見合わせた。きっと、あいつらはこっちにくるだろう。窓からここの理科準備室までの廊下にばらまいた針なし画びょうを追って。
「……うわっ。何だこれ」 声が聞こえてきた。声は昨日聞いた声と同じ。やっぱり、今日も来たのね!
「ねえ、何で分かったの?」 涼香が小声で聞いてくる。暗くて顔はよく見えないけど、おどろいているのが分かる。きっと今まで、信じていなかったんだろう。
「まあまあ、あとで顔をゆっくり見ましょう」 わたしは、涼香に見えているか分からないけど、すました顔で答えた。
意外と早く、理科準備室の戸に手をかける気配がする。画びょうに針があるんだと思ってゆっくりと歩いているんだろうと思っていたのに。特に昨日、針を足に刺しちゃった人は、ビクビクものだろうと、期待してたのだけど。
「あ、スリッパとかをはいているんじゃない?」 涼香が行った。ああ、なるほど。敵もあっぱれだな。うんうん。でも、ここからが本番! ああ、何だか、わくわくする。
カラリ。と音がして、戸が開いた。と、同時に戸につけてあった糸がピンとはる。
「……おっ、何だあ」 つまずく二人。その拍子に足から何かが飛んだ。たぶんスリッパだ。よろけて足と手が前に出ているのが見える。今度は、ガムテープのくっつく部分を表にしてはったところに足と手がくっつく。
「……うわあ。ったく、誰だよこんなことしたのは」 二人はあばれている。さらにくっつくガムテープ。
「せーのっ」 わたしと涼香はクラッカーを打った。
パーンという音にビクッとする二人。
やった! 大成功!
わたしは、壁にあるスイッチをおした。




