夏は、宿題の山と肝だめし 04
もしかしたら、ゾンビなのかも。ゾンビなら足があると思う……。
校舎の反対側にある階段をくだっていく。やっぱり、わたしの方が早い。もうすでに、一階分の差がついている。
わたしは、階段の手すりの間から上を見た。やつは階段の真ん中を通っているみたいだ。顔は見えない。
一階についた。向こうがわから、必死に涼香が走ってくる。あっちは、もう並んで走っているみたいだ。涼香を追いかけているやつは、足を引きずっていない。ということは、まだ階段をおりているやつが、足をケガしたのね。ざまみろだ。
「涼香!」 わたしは、先回りして、窓から脱出。サンダルを急いではいて、涼香を待つ。すぐ窓が閉められるように窓わくに手をかけて。
涼香が来た。追いかけている二人はそろって走っている。
「早く!」 わたしは涼香が窓から脱出するのを見て。窓をバンと閉めた。その衝撃で、ゆるかったらしい鍵がカチャンとかかる。わたしと涼香は走った。ムワッとする夏の夜を。
「こ……こまでくれば……。もう……大丈夫ね……」 さすがに息が荒い。涼香はしゃべれないくらいだ。ここは朝日山公園。木がたくさんあるので、森みたい。下手したら、学校よりここの方が怖いかもしれない……。ふくろうの声が聞こえる。何で、こんな街の中の公園にふくろうがいるのよ。
「明日、もう一度行こう」 呼吸をととのえるとわたしは言った。
「…………」
「涼香?」
「……な、なんで……」 涼香はベンチへ行くと、座りこんだ。
わたしもベンチに座った。木が風でゆれている。汗がスーと引いていく。わたしは立ちあがると、自動販売機の前に行き、百円を二枚入れて、スポーツドリンクを二本買った。何故スポーツドリンクかって言うと、他のは、売り切れていたからだ。自動販売機の電気は今にも切れそうだ。わたしはベンチに戻る途中に、缶の賞味期限のところを見た。暗くてよく見えなかったけど、うん、大丈夫。
「はい」 わたしは、涼香にスポーツドリンクをわたす。
「……ありが……とう」 涼香は缶のふたを開けると、いっきにのどに流しこんだ。
「……ふうう」 大きくため息をつく涼香。
「あのね、明日もう一度学校に行こう」 わたしは缶のふたを開けながら、もう一度言った。
「どうして……、あんなに怖かったのに」
「おどろかされっぱなしで終わっていいの? わたしはいや。今度はこっちがおどろかしてやるの!」 わたしはスポーツドリンクをいきおい良く飲んだ。すると、気管に入ってむせてしまった。
「大丈夫? わたしもちょっとは、くやしいけど……。明日も来るか分からないじゃない」
「だ……ぶ……、ゲホゲホ……」 わたしは、大きく深呼吸をした。ケホ。
「え? 何」
「大丈夫。絶対に、明日も来るよ。あいつらは」 わたしは立ち上がった。公園の時計を見る。九時を回ろうとしていた。何だあ。学校に入ってから、一時間もたっていなかったんだ。
家に帰った後、姉ちゃんにこのことを話したら、面白がって聞いてくれた。
よおし、明日は学校で、ふくしゅうよ!




