夏は、宿題の山と肝だめし 03
「どういうこと?」
「この画びょうをふんだのよ、はだしで。だから、あんな悲鳴をあげたんだわ。普通に上靴をはいていたら、刺さったことすら気づかないと思う。ということは、やっぱり、わたしたちと同じ、きもだめしに来た人ね」
「そうか……。涼香、探偵みたい」 涼香はまんざらでもないようにうなずいて、
「だから、お化けではないよ。足がちゃんとあるんだから」 と言った。
「ふーん」 と、わたしは、関心がないように言った。なんだか、涼香はわたしの心を読んでいるみたいだ。
四階につくと、一番はしの教室にいく。一年一組、わたしたちのクラスだ。
戸をガラリと開けると、そこには、いつもの教室が広がっていた。わたしは、現実につれもどされたようで、ホッとした。なんだか、今までおどおどしていたのが、バカみたいに感じられる。涼香がお化けにとりついている? はあ、何考えていたんだろう。
「それじゃあ、理科実験室にでも、行ってみる?」 いつもの調子が戻って、調子の乗ったわたしが言う。
「え……、うん、いいよ」 涼香も元の怖がりで泣き虫で……に戻ったみたい。きっと今までのわたしたちは、いつもとちがう学校の雰囲気にのみこまれて、ちょっとかわっていたんだ。きっと、そう。
「理科実験室によったら、そのまま帰ろう。もう、時間もおそいしね」
「うん」
理科実験室は一階にある。
わたしたちは、教室から出ると、廊下を歩きはじめた。三組の前を通ったちょうど、そのとき。後ろのほうで、戸がガラリと開く後が聞こえてきた。物が落ちるカーンという音もする。 三組だろうか二組だろうか。一組には誰もいなかったはず。
わたしたちは、そのまま歩きつづけた。なぜだか怖くて、後ろもふり向けない。
気のせいかな。追いかけてくるような気がする。
すこし足をはやめる。あっちも足をはやめているような気がする。足音は一人じゃない、二人……?
わたしと涼香は目くばせをすると、走り出した。
向こうも追いかけてくる!
どうして? どうしておいかけてくるの? わたしは、走りながら考える。
何か用があるなら、声をかけてくるはず。
怖がらせようってのなら、あっちは大成功よっ!
「涼香! さっき行こうとしていたところへ集合ね!」 わたしは言うと、階段の前を通りすぎた。涼香は階段をくだっていく。つまり、二手に分かれようって作戦だ。理科実験室は、わたしたちが学校に入った窓の近くにある。だから、そこから脱出しようってわけ。
「おいっ」 追いかけてくる人の声が聞こえる。男の人の声だ。あれ? 聞いたことのある声……。どこで聞いたんだろう。
向こうも二手に分かれたみたいだ。一人がわたしを追ってくる。
見ていなさい! あんたたちの顔を見てやるわ。部活できたえたこの足をなめないで!でも、サンダルを持っているので少しじゃまだ。それは、あっちも同じなはず。それに、片方は足を画びょうでケガしているはずだ。こっちのほうが有利だ。
でも、時々、 「あ」 にだく点をつけたような言葉が聞こえてくる。
怖い。




