夏は、暇なコンピュータ 02
「あのねえ、最近妹に相談されるのよ」 竹内先輩が言う。
「何をですか? って妹いたんですか」 ぼくが聞く。
「ええ、三人兄弟よ。わたしと、弟と妹」 文庫本を閉じる竹内先輩。
「で、何の相談?」 高梨先輩が、両手でキーボードをカチャカチャ言わせながら聞く。すごいスピードで打っている。
「うーんとね、変な人に追いかけまわされているっていうのよ」
「うわあ、ストーカーかよう」 田中先輩が、椅子をかたむけながら言う。椅子をかたむけると、バランスをくずして倒れてしまうんだよね。ぼくはなんども授業中に倒れたことがある。
「光先輩の妹だから、きっとものすごくかわいいと思うね」
「いいえ、わたしと似て、ぶさいくよ。うん。そっくり。年のはなれた三つ子ってよく言われるんだから」
「へえ、弟とも似てるんだ。さぞかし、かっこういいだろうね」
「だから、ぶさいくだってば。まあ、気にするなと言っているけどね。本人もあまり気にはしていないようだし。追いかけっこを楽しんでいるみたい」
「で、相手は誰なの?」 高梨先輩が、キーボードを打つ手を休めて聞いた。
「分からないみたいだけど、湖宮中の生徒だって」
「へえ、ってお前か結人!」 田中先輩の指が、ぼくを指さす。
「何でですか。第一、先輩の妹の顔知りませんてば」 ぼくは、手をぶんぶんふりながら言う。
「湖宮中の生徒だから」
「だったら、先輩だってそうじゃないですか」
「おれはちがう」
「何で」
「何でもだ」
まったく、わけが分からない。




