夏は、暇なコンピュータ 01
はい、夏休みです。じゃん、部活ありません。どん、宿題山もりです。
湖宮中文芸部は、歴代夏休みは部活動はなし、となっていて、部長も代々守っているらしい。
でも、暇なので、ぼくは毎日部活に顔を出している。ぼくだけじゃない、竹内先輩も、田中先輩も、高梨先輩もだ。
どうして、こんなに出席率がいいのかというと、やっぱりみんな暇なんだろうけど、それだけじゃなくて、高梨先輩がなんとコンピュータが得意だということに、竹内先輩が発見したからだった。以来、わが文芸部は夏休みの間コンピュータ部化しているんだ。
夏休みに入って一週間、高梨先輩から教わったことは、電源の入れ方と切り方だ。うん、これだけは今ならかんぺきにできるぞ。
「それじゃあ、ここをクリックして」
「クリックって?」
こんな感じで、高梨先輩のコンピュータ講習会は進む。
前は、部室の中央にある長テーブルを二つくっつけたものが、ぼくたちの小説を書くところでたまり場になっていたのが、今では、美術部部室側の窓ぎわが、ぼくらのたまり場になっている。そこには、机を二つ並べて顧問の南条先生が持ってきたコンピュータが、二台置いてある。
でも、前と変わらない人物がひとりいる。
竹内先輩だ。
長テーブルのいつもの場所に座って、文庫本を開いている。文庫本にはブックカバーがかけてあるので、何を読んでいるのかは不明だ。
「何を読んでいるんです?」 気になったので、近づいて聞いてみた。
「おっしえない」 竹内先輩は文庫本をパタンと閉じた。閉じる前にチラッと見えた。良く見えなかったけど文字はなかった。イラスト集かな。
「なあ、もうすぐ、文化祭だなあ」 田中先輩が、こっちを向きながら言う。
「何を出す? 部長」
「去年と同じでいいんじゃない」 竹内先輩は、ぼくを追っぱらうと、文庫本を開いた。
「去年は何出したの?」 と、高梨先輩。
「何も。去年は部室もなかったし、小説の小冊子だって作ったことないし」
「へええ、それは、つまらないですねえ」 追っぱらわれたぼくは、椅子に座りながら言う。
「つまらなくないわよ。湖宮中の文化祭は。クラスで大変なんだから」 先輩たちはうんうんとうなずく。
「部活にかまっていられないわよう」 また、うんうんとうなずく先輩たち。
「へえ……、楽しみだなあ。ぼく、文化祭実行委員なんですよ」
「うわあ……ごくろうさま」 三人の先輩たちが同時に言った。




