足寒い
2016年1月のお話。
「おかえりー」
「ただいまー」
いつものように家に千夏の帰った声が聞こえる。
防音性は低いので基本的にどこにいてもこの声は聞こえるのである。
まあ基本的に千夏が帰ってくる時間の優美はリビングにいるのだが。
「うー寒かった」
「冬ですしお寿司」
「私にもこたつをぷりーず」
「手洗って、荷物おいてからにしろよ」
「はーい…」
千夏の声に対してこたつに埋まったまま返す優美。
部屋には暖房もついているはずなのだが、
優美がこたつから出てくる様子はない。
ちなみに朝からほとんどこんな感じである。
こたつむりであった。
「手も冷たくなった」
「まあ冬だし」
「水がすんごい冷たい」
「入れよ。朝からずーっとついてるから超あったかいぞ」
「電気代…」
「気にするな。気にしたら負けだ」
「というかまさか朝からこの体制のまんま動いてないわけじゃないよね?」
「掃除には出たぞ」
「あとは?」
「ここでみかん食って寝てただけ」
「ぐーたら!」
「ほっとけ」
千夏がこたつに入ってようやく顔をそちらに向けた優美。
「んで、こんなくっそ寒い時期に何してたんだべ」
「いや遊びに行くって朝言ったじゃん」
「それは聞いたけど何をしに行くのか具体的に聞いてなかったなと」
「友達と遊びに」
「また茂光?熱いねえ」
「今回は違うもん!」
「じゃあ誰やねん。川口か」
「いやあの優美ちゃん私の友達その二人だけじゃないからね…?」
「何っ!?」
「いやガチトーンで言われても困る」
「てっきりあの二人だけかと…」
「私の人間関係そんなに死んでないからね」
「で、実際は何してたのさ」
「ちょっとクラスみんなにお呼ばれしたからそれに参加してきたんだよ」
「ああなるほど。結局茂光と川口もいる感じか」
「いや確かにいたけど今日は別に約束してたわけじゃないからね?」
「で、そこでカップルうんぬんでいじられてきたんだな」
「なぜばれた」
「お前たちは熱すぎる」
「というか前から熱いって聞くけどそんなに熱い?」
「熱い。見てるこっちが目をそむけたくなるくらいには熱い」
「どんなレベルなのそれ」
まあ割と時と場所お構いなしに、
結構ラブラブやってるのでこんな感想になるのだろう。
「てかどこ行ってたん?」
「あ、カラオケ」
「ああ、クラス会的なのだったのね」
「そそ。そろそろみんな受験勉強シーズンで遊べなくなっちゃうからその前にってことで」
「なるほど。まあその点お前はそこからは逃げ出してるからいいよな」
「ここに来た段階で大学に行こうという気はなくなりました。いいじゃん優美ちゃんなんて学校すら行ってないんだし」
「別に俺は働いてるからいいしー」
「のわりにはこたつでぐーたらしてるような気がするんですが」
「大丈夫だ。気がするんじゃなくて実際してる」
「だめじゃん」
「いいの。巫女さんもどきだから」
ひとえに謎の財源ゆえにできることである。
「で、どうよ。クラスのやつに歌うまいやつはいるのか」
「優美ちゃんがそれ聞く?」
「気になるじゃん。俺並みに上手いのがいるのかどうかが」
「ほんとそこに関しては自信バリバリだよね優美ちゃん…うん、いたよ。私から見てうまいなーって思う人は」
「え、誰よ。あ、茂光は抜きで」
「なんでさ!」
「いや絶対出てくるだろうと思って」
「読まれてた…」
「で、誰?」
「優美ちゃん聞いてもわからないと思うけど…静江ちゃんに桃花ちゃん、男勢だと春樹くんとか哲也くんとか」
「…なるほど、さっぱりわからん!」
「ですよねー」
「まあそもそもお前のクラスのやつらとの付き合いちゃんとあるのって茂光と川口だけだもんな」
「まあ優美ちゃん学校行ってないからねえ」
「まあお前のとこの学校のやつであろうやつはここたまに来るけどそんなもんだしなあ」
「今から学校行きます?」
「さすがにこの時期からはねえよ。どんな顔していけと」
「そんな顔」
「いやまあ確かにこんな顔で行くしかないけど」
「優美ちゃんなら高校じゃなくて小学校でもいけそう」
「何食わぬ顔でまぎれたら案外わからんかったりしてな」
「じゃあ行先は小学校で」
「ねえよ。ここに来てるだけでも大事なのに小学校行くとか何の羞恥プレイじゃ」
「大丈夫大丈夫女の子満喫してるし小学生でも行ける行ける」
「その理論はおかしい。あと女の子満喫してんのは俺じゃなくてお前だろうに」
「確かに」
「肯定するんかい」
「そうじゃなかったら部屋が女の子の服で埋まるわけがない」
「まあそりゃ確かに。スカートばっかだし」
「そうなんですよ。改めて見るとズボンないよね」
「それはそれでどうなんだ」
「いいんですあってもどうせスカートだし」
「まあお前はたぶんスカートしか選ばないんだろうね」
「でもね、最近思った」
「何よ」
「スカート寒いのん」
「そりゃ足見えてるしお前のスカート短いし」
「今日もね、歩きで行ったせいでもう寒いのなんの。足から凍えて死にそう」
「タイツはいてなかったっけ?」
「いやしてたけどさ、それじゃ防ぎきれない」
「そなの?」
「優美ちゃんもやってるからしってるでしょうに」
「いや冬そもそも外にあんまり出ないから…出てもコンビニがいいところだし」
「本気で冬は引きこもってるんですね」
「用が無いなら夏以上に外には出ないよな」
「でも境内には出るじゃん」
「俺常時これだからそんなに…風は入るっちゃ入るけど耐えれないほどじゃないし」
「ああ…巫女服」
「ロングですし」
「そだったね。長かったね」
「決して暖かくは無いが、まあそこまで寒くもない」
「しかしその中身は生足」
「だから脱がされると冷気には弱いと」
「いやまあそんな状況になることないと思うけど」
「そうだな、きっとその時は変質者に襲われた時だな」
「それ寒いとか以前に身の危険が」
「スカートだけ部位破壊される状況なんてそれくらいっしょ」
「あとは子供のいたずら?」
「わざわざ神社の境内の巫女のスカート部分だけずりさげに来るならそれはそれで勇者だな」
「そりゃまあ確かに」
「逆に褒め称える」
「捕まえないの?」
「後で保護者にご連絡」
「うわ」
「いやさすがに教育上放置はよろしくないし」
「鬼畜…いやこの場合は正しいのかな…」
「悪ガキの道を正すのも巫女の役目ってね」
「そんなの聞いたことないですよ」
「今決めた」
「おい」
「なおここでいう悪は俺の主観で決めるのでそこんとこよろしく」
「身勝手な正義というやつですね分かります」
「そうかもしれない」
「で、話戻すけど」
「おう、どこにだ」
「いやスカート」
「ああはい」
「寒くないっていう割にはこたつには埋まるんだね」
「そこにこたつがあるから」
「自分でつけたんでしょうがっ!」
こたつを設置したのは優美であり、
その電源を毎朝つけるのもまた優美なのであった。




