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詰まる

2015年4月のお話。

本来12月18日に投稿する予定だったものです。

「優美ちゃーんやっほー…ってあれ?」


神社の境内。

休日と言うことで割と朝早くから遊びに来た佳苗であったが、

普段はいるはずの見た目幼女の巫女の姿が無い。


「んー?まだ家にいるのかな」


そのまま拝殿と本堂を通り過ぎ、

その裏にある優美の住んでいる家の方へと向かう佳苗。

もはやいつもの光景である。


「優美ちゃーん」


インターホンを無視して、

直接リビングに通じる障子へと声をかける佳苗。

防音性は皆無に等しいので、

そこに居ればだいたい聞こえるのである。


「あれ?いないのかな…」


とぼそりと呟いたとほぼ同時に目の前の障子が横へと勢いよくスライドする。


「あ、やっほー優美ちゃん」


「川口か…」


気分の悪そうな顔の優美。

声もどこか覇気が無い。


「え?あ、もしかして私お邪魔だった?そ、それなら帰るから!ごめんね?」


「あ、待て待て。別にそういうわけじゃないから…」


と急に手のひらで顔の口から鼻にかけてを抑えて奥へと引っ込む優美。

気になった佳苗が部屋の中へと縁側から侵入する。


「ずぴー」


「…風邪ひいた?優美ちゃん」


「…正直風邪のがまだましかもな」


部屋で佳苗が見たのは、

思いっきり鼻をかむ優美と、

ゴミ箱に山積みにされた丸まったティッシュであった。


「この季節はほんとに困る。鼻がやられて仕方ない」


会話しながらもぐすりと優美の方から音がする。

相当詰まっているようである。


「もしかして、花粉症?」


「ご名答。毎年この時期になると鼻ぶーぶーなのよ」


まさかここに来てもなるとは思ってなかったけどとぼそりと続ける優美。

その言葉が佳苗に届くことなかったが。


「そっか、花粉症かぁ…確かに普通に行動できるけど常に鼻がぐずぐずなのは嫌かも」


「だろ。正直寝込んで全く行動できないならあきらめもつくけど、鼻水で行動できないってのも考えもんよ。ポケットティッシュじゃすぐになくなって話にならんし」


「…まあ確かにその量だとそうっぽいねー…」


「これ、数時間の間にした量なんですよねー」


「うわ、それはひどい」


「こんな状態で外出ようと思ったら、箱ティッシュとゴミ箱持って歩かないといけなくなるわ」


話が一息つくたびに、

ティッシュに手が伸びている優美。

そんだけひどいらしい。


「あれ、そういえばちなっちは?今日はちなっちも休みでしょ?」


「ん、ちょっとお使い」


「え?お使い?誰の?」


「いや誰のって俺しかいないだろ。…いや俺がこんな状態だから、代わりにちょっと買い物行ってもらってる」


「ああなるほど。そんな状態の優美ちゃんを外には出せないって事かー」


「言い方が気になるが実際そうなんだよなあ。…いやこのまま行くと箱ティッシュ無くなりそうだったから補充がいるのよ。補充が」


「なんだかんだちなっちも優美ちゃんも相手が弱ってると率先して行動するよね」


「いやまあ二人暮らしだもんでそうしないと色々困るんよ。唯一の同居人に嫌われたらそれこそ毎日地獄でしょうに」


実際問題、旧時代からの知り合いはお互い一人。

そう言う意味では他の誰にも代えられぬ存在であることは間違いない。


「ただいまー」


「あ、お帰りー」


「あれ?佳苗ちゃん?」


「お邪魔してまーす」


「遊びに来たんだと」


「そっか、ちょっと待っててねー」


「お構いなくー」


ほどなくしてリビングに全員が集合する。

お構いなくとか言っても勝手にお茶と簡単なお菓子類が出てくるのがこの家である。


「ごめんねー、優美ちゃんこんな状態で」


「何故お前が言うし。…まあすまん、とりあえず今日はどっか行ける状態じゃないのはさっき話した通りなのよ」


「いいよいいよ。花粉症はしゃあない。早く治すんですぞ」


「と言っても花粉症って治せるもんなのか…?」


「どうなんだろ…?突然直ったり発症したりするらしいけど」


「そういえばちなっちは大丈夫なの?」


「私?私は大丈夫じゃなかったよ」


「え、どういうこと」


「あーっとね、千夏は俺より1か月くらい前に来るんだよ」


「あ、ちなっちも似たような状態なのね」


「そうなの。あれ春休み中だったから大変だった」


春休み、どっか行こうかなとか考えてた矢先の出来事であった。

まあそれほどひどいものではなかったので、

行くところには行ったが。


「あ、そうそう、優美ちゃんこれ」


「あざし」


「何それ?」


「ああ、薬薬。鼻止めるやつ。さすがにこの状態じゃ耐えれんわ。もう鼻かみすぎていたいもん」


「ああ、そりゃまあ…」


「はい水」


「用意良いですね」


「まあカプセル錠そのまま飲めってわけにはいかないですし」


「とりま飲むわ」


箱を開いて一錠取り出して飲む優美。


「…んぅ。…なに見てんのさ」


「いやなんか優美ちゃんが薬飲んでるの初めて見るなと」


「可愛い子が弱って薬飲んでるのなんかいいよね」


「うんまあ川口の感想はともかく、千夏のその感想はおかしい」


「え、そう?」


「そうだってば」


「でもちなっち、その気持ちはなんか分かるかも」


「あ、だよねえ」


「ちょっとそこ妙な共同関係築かないで欲しいんですが」


「介護欲刺激されるよね。まあ私は優美ちゃんの性格知ってるからそうでもないけど」


「それはそれでどういうことだおい」


介護欲が刺激されるという点はなんか嫌だが、

でもやっぱりそう思わないとか言われると突っ込みを入れたくなる優美である。

めんどくさい性格をしているもんである。


「そういえば副作用ないのこいつ」


「あ、あるよー」


「なんで若干嬉しそうなんだ」


「声のトーンが明るいちなっち」


「とりあえず喉が乾燥するのと、睡魔は確定っぽいよ」


「ええ…まあ睡魔は知ってたけど、喉の乾燥はやだなあ。声でなくなるじゃん」


「優美ちゃん声でなくなるの嫌うもんね」


「いや好きな人いないだろ。俺が個人的に歌うの好きだから余計に嫌ってるだけで」


「え!優美ちゃん歌ったりするの?」


「あ、え?ああ、うんまあ」


「聞かせてー」


「今!?ここで!?いや待てさすがに急すぎるだろう」


「でも優美ちゃんがどんな風に歌うのか聞いてみたいなーと」


「優美ちゃんうまいから一見の価値ありだよー」


「やめてプレッシャー与えないで。第一音源ないのにどうやってやんのさ」


「アカペラ?」


「難易度高くね?他人事だからってひどない?やれなくはないけど」


「お、じゃーおなしゃす!」


「やめい。というか花粉症で鼻詰まってるから無理だってば!」


花粉症が治ったら披露することを約束させられた優美であった。



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