4章7話「討伐数をカウントすると、個性が出てくるよね」
◆
翌日。
俺たちはキャンプ地から、さらに奥に進んだ場所でゴブリンと戦っていた。
敵の数は十体。
それに対して、俺たちは六人だ。
「白石さん! 雨宮さん! 敵への攻撃をお願い!
白石さんは、できれば相手をデバフして!」
「催涙玉、なっげるよーー!
えーーーい!!」
「撃ちます!」
白石さんがスリングで投的した催涙玉が、後続の敵の頭に当たる。
その衝撃で催涙玉が破裂すると、周囲に白い粉が弾けるように広がった。
催涙玉が当たった敵とその後方両隣が、白煙を嫌ってその動きを緩める。
「ギャッ!ギャッ!」
速度を緩めず襲い掛かってくるゴブリン達に、雨宮さんのクロスボウの矢が飛来する。
一射目は、先頭の敵の腹部に命中。動きを止める。
次弾を弾倉から補充しての二射目は、別の敵の棍棒に防がれる結果となった。
「晴斗! 湊!」
「わかってる! 行くぞ、湊!」
「うん! 右は任せたよ、晴斗!」
敵が、左右に三体ずつ散開する。
その突撃を、晴斗と湊がそれぞれ受け止める。
「しずくっ! そっちは任せた!」
「任せて! 倫太郎!」
晴斗と湊が相手を引き付けている間に、俺としずくで挟み込むように追撃をかける。
一撃、二撃、三撃と片手剣で攻撃して、一体目を倒す。
こちらに気を取られた敵に、晴斗が大盾で体当たりをする。
体勢を崩した二体を、二人でタコ殴り……集中攻撃して倒す。
湊としずくの方に視線を送ると、二人もちょうど倒し終えたところだった。
「よしっ! 残りの敵は?」
「これで最後です。 えいっ!」
雨宮さんの声を頼りに、最後のゴブリンを探す。
そこには、肩口と太ももを負傷したゴブリンがいて、矢が頭部に命中するところだった。
「お疲れ様!
じゃあ次は、周囲の警戒を残しつつ、傷の治療をするよー!」
白石さんの声に、戦闘の終了を理解する。
そして晴斗と湊が、白石さんの方に向かい治療を受け始める。
昨日提案があった、今後のダンジョン攻略方針について。
朝、改めて話し合った結果、俺たちは――
複数パーティーでの協調を選ばず。
“ たとえ傷ついても、この場で強くなる ” ことを選んだ。
そして、今日から手札を惜しみなく使い、戦闘経験を積むようにしている。
そして、もう一つ。
俺たちは午後から、 “ とある遊び ” を始めていた。
「よし!
これで、俺は “ 討伐数+1、足止め数+3 ” が追加だな!」
「あと、 “ 被弾数と治療回数+1 ” も追加だね。
覚えているよね?
今日の夕飯までに “ 討伐数 ” が少ない方が、罰ゲームだよ。」
そう、それは “ 各自の戦闘結果を記録する ” という遊びだ。
「ゲーム感覚でダンジョン攻略するな」って思うかもしれない。
けど、これが結構面白い成果に繋がっているんだ。
午前中の俺たちは、まだ普通に戦闘していた。
補講で指摘されたことは意識して動いていたし、いろんな連携も試していたんだ。
でも、結果は “ イマイチ成長しているか分からない状態 ” だった。
変わったきっかけは、何気ない気づきだった。
自分達は “ どう強くなりたい ” のか?
それをイメージできたら、後は簡単だった。
そのための練習をすれば良いんだ。
そして、だんだんスムーズに倒せるようになってくると、次に気になることができた。
“ どれくらい上達している ” のか、“ どれだけ効率良く戦えている ” のかだ。
それが気になった俺たちは。
戦闘後にお互いの戦いを振り返り、ディスカッションするようになった。
そして生まれたのが、戦闘結果を現す五つの指標だ。
<戦闘指標>
・討伐数 :倒した敵の数
・アシスト数:後衛で敵の動きを止めた回数、および味方の攻撃をサポートした回数
・足止め数 :前衛で引き付けて足止めした敵の数
・被弾数 :攻撃を受けて自分がダメージを受けた回数
・治療回数 :攻撃を受けて自分が治療を受けた回数
成長が数字になって分かるようになると、みんなでその成績を競い出した。
そして、気になる午後の結果は……
倒した敵の数:合計143体
倫太郎
・討伐数 :34
・アシスト数:12
・足止め数 : 0
・被弾数 :16
・治療回数 : 4
しずく
・討伐数 :41
・アシスト数: 5
・足止め数 : 0
・被弾数 :12
・治療回数 : 3
晴斗
・討伐数 :12
・アシスト数: 2
・足止め数 :46
・被弾数 :26
・治療回数 : 8
湊
・討伐数 :22
・アシスト数:13
・足止め数 :42
・被弾数 :43
・治療回数 :10
雨宮さん
・討伐数 :27
・アシスト数:19
・足止め数 : 0
・被弾数 : 4
・治療回数 : 2
白石さん
・討伐数 : 7
・アシスト数:40
・足止め数 : 0
・被弾数 : 7
・治療回数 : 3
「だぁー! 湊に負けた! なんでだよー!!」
「晴斗は、大盾でがっしりと敵を引き留めるからね。
その変わり、被弾数と治療回数は少ないじゃないか。」
晴斗と湊の勝負は、湊の勝利に終わった。
晴斗は大盾とメイスで戦っているのに対して、湊は短槍とガントレットで戦っている。
湊が装備を強化する前なら、二人の成績にそこまで差はなかったはずだ。
でも、湊は一昨日からガントレットでの戦い方を変えている。
その結果が、良い結果として現れ始めているのだろう。
被弾数と治療回数は多いが、それは徐々に減ってくるはずだ。
「夕雨ちゃん、すっごーい!
討伐数が二桁いってる!」
「途中から、慣れてきたからかな。
動いている敵も、狙うようにしてみたの。
澪ちゃんも、アシスト数すごいね。」
「へっへーん。
みんなのサポートは私の役割だからねー♪
……まぁ、何回か催涙玉を外して無駄にしちゃったのは反省だけど。」
雨宮さんと白石さんは、和気あいあいと成果を褒め合っている。
二人は後衛で、みんなをサポートする場面が多いから、アシスト数がとても多い。
……ちなみに被弾数は、後衛まで何度か敵を通してしまったからだ。
正直、申し訳ないと思っている。
そして、俺としずくは――
「倫太郎。
私が勝ったから、今日はよろしくね。」
「……っス。」
俺がしずくに、討伐数とアシスト数の合計で負けていた。
そして負けた方が、夜の見張り番で勝者の肩もみをすることになっている。
勝ったしずくは、なぜだかとても上機嫌だった。
「楽しみにしているから。」
「……ウっス。」
(まぁ、しずくにはいつもお世話になっているし。
それに、肩もみなら家でもたまにやっているし。
……べ、べつに悔しくなんて、ないんだからね!)
自分でもよく分からないテンションになって。
頭の中で負け惜しみをしながら。
……俺は、幼馴染の成長を心の中で喜ぶのだった。
お読みいただきありがとうございました。
続きは、8話を15日(木)20:00、9話を18日(日)20:00に投稿予定です。
引き続き、本作をお楽しみください。
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