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転生三回目の俺、今度こそラブコメもダンジョンも攻略したい  作者: 読むの大好き工房
1章

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1章4話「初めてのダンジョン演習」

翌日。

朝のホームルームが終わると、俺たちは学園内にある体育館に移動した。


そして、ジャケットを脱ぎ、ミットと防具を装備して、

ペアとなった相手からの “ タックルを受け止める訓練 ” を始めた。


いきなり対人戦闘からは始めない。

まずは、魔物に襲われたときに恐怖で体が固まらないよう、

“ 攻撃されることに慣れる ” ことからだ。


いまでこそみんな落ち着いているが、

昨日のダンジョン講義のあと、クラスの空気は騒然としていた。


覚悟はしていたはずなのに、

死亡率とランク昇格率という “ 数字 ” を突きつけられた瞬間、急に現実味が増したのだろう。


俺自身も、家に帰るまでの記憶があやふやだった。

帰ってからも気持ちが落ち着かず、

気がつくと実習で使う装備をピカピカに磨いていたくらいだ。


装備については、はじめのうちは、

全員が学校支給の木剣と小盾を使うように指示されている。

ただの訓練用のそれを、俺は――


木剣は刃こぼれを紙やすりで丁寧に落として鋭利な姿に、

握りの革はすり減ってもいないのに新たに巻き直し、

小盾は金具に緩みがないか全部締め直して、

最後にはワックスと布でツヤが出るまで磨き上げる。


……なんてことを、無意識のうちにやってしまっていた。


ふと気づいて顔を上げると、

しずくが腕を組んでこちらを見下ろしていた。


その目が「……何やってんの、この人」と語っていて胸に刺さったほどだ。


(いや、違うんだしずく……これは落ち着かないからであって……)


言い訳を探す俺をよそに、

しずくは小さくため息をついて、そっと視線をそらした。



……そんな昨夜のことを思い出しているうちに、

気づけば授業一枠分の基礎訓練が終わっていた。


そしていよいよ――

“ ダンジョンの実地訓練 ” に移る時間がやってきた。


訓練場所は、学校併設のFランクダンジョン。

校舎裏の専用施設の中に、ダンジョンの入口―― “ ゲート ” が設置されている。

この施設は、魔物の流出を防ぐために厚い防壁と監視設備で囲まれている。

学校でも最も厳重な区域だ。


ダンジョン内では、パーティーごとに三年生の先輩が一人つき、実際に魔物と戦うところを見せてくれるらしい。

そして、先輩の補助がついたうえで、魔物との戦闘を経験する。

――それが今日の目的だ。


パーティーの人数は多ければいいわけではない。四〜五人が適正だ。

そして、さらに難易度が高いダンジョンでは、複数パーティーでチームを組むこともある。


「三年が一人ついてるんだ。危なくなればフォローしてやれる。

 だが勘違いすんな。助けてもらう前提で動く奴が一番先に死ぬ。


 Fランクとはいえ、魔物は魔物だ。

 命は取られねぇが、怪我はすると思っとけ。」


専用施設の外で三年の先輩達と待機していた、

黒鋼先生の一言がひどく印象に残った。


その通りだ。

俺も前世の経験があるといっても、油断すれば死ぬことは変わりない。


俺たち四人はパーティーを組み、

三年二組の工藤先輩とともに、ダンジョンゲートへと向かった。


工藤先輩は、ベリーショートの茶髪で、逆向きにかぶったオレンジ色の野球帽から前髪を少し出している。

身長は俺より頭二個分は大きく、日に焼けた肌と左頬の大きな傷跡が印象的だった。

スタジャン風の戦闘服とトレランシューズには、黒をメインに細い黄色ラインが入っていて、武器はなぜか金色のバットだ。


工藤先輩の戦闘服の左胸には、一学年を示す白とは違い、三学年を示す赤い校章が縫い付けられている。

その校章により、学外の人が見ても、どの学校の何学年か一目で分かるようになっていた。


専用施設に入り、しばらく歩くと、俺達はダンジョンゲートに辿り着いた。


直径三メートルほどの楕円形の空間が、

正面で水面のようにゆらゆらと揺らめき、青白い光を帯びている。


近づくほどに、空気がひんやりと変質していくのがわかった。

まるで、そこだけ季節が違うような、不自然な冷気。


「……これが、ゲート……」


雨宮さんが小さく息をのむ。


初めて見るゲートは幻想的で美しかった。

だが同時に、空間を切り取ったような、

この世界とは別の理を示す、異質な存在感があった。


工藤先輩が振り返る。


「怖がるな。ゆっくり歩けば大丈夫だ。

 ゲートの向こうは、学校の敷地とは別の空間だが……

 俺たちが毎日使ってる場所だ。安心しろ。」


そう言って、先輩は迷いなくゲートへ足を踏み入れた。

青白い光に包まれて、先輩の姿が消えていく。


「……行くぞ」


俺たちも続いてゲートへ向かう。


指先が光に触れた瞬間、

ひやりとした感触が全身を包み――

視界が一瞬、白く弾けた。



次の瞬間、俺たちは薄暗い通路の中に立っていた。


ひんやりとした空気が肌にまとわりつき、

地面や壁面には、うっすらと光る魔力苔が生えている。

光量は最低限で、少し先の景色すらぼんやりとしか見えない。


足元は平坦とは言いがたく、

ごつごつした岩肌が続き、湿った土の匂いが鼻をついた。


時折ゆるやかな段差や、足場の悪い場所があり、油断すれば簡単に転びそうだ。

“ 実地訓練 ” とはいえ、ここが本物のダンジョンだと嫌でも実感させられる。


「うお、マジでダンジョンだ……」


「暗くて、ひんやりしてる……。思ったよりも怖いね……」


陽斗と雨宮さんは喋る余裕があるが、

しずくに至っては無言のまま、俺のすぐ近くにいる。


……俺も緊張してるけど、みんなの方がヤバいな。


そんな俺たちを見て、工藤先輩が軽く笑いながら声をかけてきた。


「そんなに肩に力入れんなって。

 まずは歩き方からだ。ここの一層は安全だが、音や匂いに敏感な魔物もいる。

 普段から自分の足音と、周囲の音には気を配れ。油断すると奇襲を食らうぞ。」


「次に視界な。見てのとおり薄暗くて視界が悪い。

 だからといって前だけ見るな。

 仲間の位置、通路の幅、足元、全部を “ ぼんやり ” でいいから把握しとけ。」


しばらく歩いたが、緊張のせいか思った以上に疲労がたまる。

しかし、魔物には遭遇しなかったため、空気が少し緩んだ――その瞬間。


「そろそろ魔物が出るぞ。構えろ」


工藤先輩のその声に、俺は心臓の音が跳ねあがるのを感じた。



TIPS:魔力

・人間の体内にある “ 内部エネルギー ” 。

・スキルを発現させるための “ 燃料 ” として使われる。

・体力や集中力と同じく消耗し、使いすぎると疲労や気絶の原因になる。


TIPS:マナ

・ダンジョン内部に満ちている “ 外部エネルギー ” 。

・スキルの効果を形作る “ 媒体 ” として働く。

・魔物は体表にマナをまとっており、これが “ マナ障壁 ” となる。

 そのため、ダンジョン内では近代重火器がほとんど通用しない。


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