4章4話「Dランクダンジョン攻略開始!(日帰り)」
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翌朝。
新しい装備を身に着けた俺たちは。
大規模演習で使用した《埼玉校Dランクダンジョン 地下遺跡の坑道》の前にいた。
ゲートをくぐり、ダンジョン内部に入る。
――その瞬間
空気の密度が変わる。
ひやりとした風が頬を撫でる。
天井は高く、古代文明の名残と思われる石柱が立ち並び、壁面には淡い光を放つ魔石が埋め込まれている。
入るのは二度目だが、相変わらずこの景色は壮観だ。
……巨大鍾乳洞の大広間みたいで、夏の避暑地的にも最高なんだよな。
「今日は入口付近で慣らす感じにしよう。」
俺の言葉に、みんなが真剣な表情で頷く。
俺たちは、一度このダンジョンは経験している。
しかし、前回は工藤先輩ともう一つのパーティーも一緒だった。
今回も同じ感覚で戦っていたら、痛い目をみるだろう。
ゲートを抜けた先の入口付近には、同じ一年生パーティーが複数集まっていた。
パーティーの人数は、6人から10人といった具合だ。
俺たちと同じで、いずれDランクダンジョンを踏破することを目指しているのだろう。
「それじゃあ、魔物が出る辺りまで移動しようか。」
周囲に気を配りながら、前回の探索で通った道を進む。
すると、かすかに「ギャッ…ギャッ…」という鳴き声が響いた。
前方から、魔物が姿を現す。
緑色の痩せこけた小さな体に粗末な布切れ。
手には石を削っただけの棍棒。ゴブリンだ。
ゴブリンは、まだこちらに気づいた様子がない。
だから俺は、雨宮さんに合図を送った。
雨宮さんは、こくりと頷きクロスボウの引き金を引く。
敵の頭部に矢が刺さる。
そこでようやく残りの二体が、こちらに気づき向かってきた。
「ゴブリン残り二体!
陽斗と湊は足止めを頼む!」
「おう! 任せろ!!」
「うん! 任せて!!」
晴斗が、敵の突進を大盾でがっしりと受け止める。
湊は、敵を短槍で牽制しながらも、攻撃を受け止めて足止めさせている。
二人の横をすり抜け、俺としずくが敵にとどめを刺す。
「周囲に敵影なし! みんな、お疲れ様!!」
白石さんが、みんなに声をかける。
彼女は、後衛で戦況をみて、道具によるサポートをしている。
全体をみて行動する彼女に、戦闘終了の判断も頼んでいるのだ。
「よし! かなり楽に倒せたな!!」
「油断は禁物だけど、これくらいの数なら問題なさそうだね。」
晴斗と湊は、同じ前衛だが、スタイルは別物だ。
晴斗は、大盾で敵の攻撃を受け止め、足止めをする。
湊は、短槍とガントレットで牽制・攻撃回避しながら、足止めをする。
二人は、両極端な戦い方をするけれど、息はぴったりと合っている。
「しずく、ナイスファイト。
雨宮さんも一体撃破ありがとう。 凄い命中率だね。」
「うん。倫太郎もナイスファイト。」
「私は、家では和弓を扱っていますから。
これくらいの距離で、止まっている相手なら問題ないですよ。」
俺としずくのコンビネーションは、相変わらず抜群だ。
そして、意外なことに、雨宮さんの家は和弓の道場らしい。
その経験もあり、新しい武器もすぐに使いこなしている。
「倫太郎くんおつかれー!
どう? 新装備の調子は~?」
「白石さんも、周囲の警戒ありがと。
新装備は、いい感じだね。
敵を簡単に倒せて、自分がすごく強くなった気分だ。」
パーティーの指揮は俺が出しているけど、戦闘中に全体をみるのはキツイ。
そこを白石さんがカバーしてくれるから、安心して戦うことができる。
「よし!
それじゃあ、この調子でしばらく慣らしていこう。」
この戦闘で、各々が良い感触を得られたのだろう。
俺の声に、みんなが満足気な顔で頷いてくれた。
それからしばらく、俺たちは魔物との戦闘を続けた。
なかには、新装備にも慣れ始めて、新しい戦法を取り入れ始めた仲間もいる。
湊と雨宮さんだ。
湊は、今までガントレットを単なる防具として使っていた。
だけど、今では敵の攻撃を捌いたり、体勢を崩すことに挑戦し始めている。
本人が言うには「防具面積が増えたからね。強くなるために挑戦しなくちゃ。」とのこと。
雨宮さんは、今までクロスボウを敵の群れへの攻撃や牽制に使っていた。
それが、今では遠距離からの先制攻撃や、動く敵への攻撃としても使い始めている。
本人が言うには「性能も向上したし、慣れてきたから」とのこと。
その結果として、魔物の討伐スピードは、以前と比べて目に見えて早くなっていた。
……まあ、湊はよく失敗して白石さんに治療してもらっていたけど。
そんな二人の挑戦に触発されて。
俺たちも、新しいことに挑戦しては、成功したり失敗したりを繰り返していた。
「みんな、そろそろ休憩にしようか。」
「うん。 練習もいいけど、休むのも大事。」
「そうだね。 体中痛くて、もうヘトヘトだよ。」
「はいはーい。 ドリンクとタオルはここにあるよー。
可愛い澪ちゃんが、みんなに配って進ぜようー。」
「ありがとう、澪ちゃん。 これ貰うね。」
「かーっ! 運動後のスポドリはたまんねぇなあ!」
ようやく休憩を挟んだ頃には、結構な数の魔物を倒し終えていた。
倒した魔物は、俺としずくと白石さんで、近くに積み上げている。
休憩後には、倒された魔物が消滅して、魔石だけが残るだろう。
「なんか、いつもより楽に魔物を倒せるな!」
「あ、私もそれ思った!
いつもは、もっと戦闘に時間がかかっていたもん!
それに、みんなあまり疲れてないんじゃない?」
みんなの言う通りだ。
この辺りの魔物では、もう練習相手にならないのかもしれない。
「みんな、どうする?
武器の慣らしは終わったし、先に進んでみるか?」
「私は賛成ー!」
「俺もそれでいいと思うぜ!」
俺の提案に、白石さんと晴斗は元気よく賛成してくれた。
ほかのみんなも頷いてくれて、反対している仲間は誰もいないようだった。
そして、休憩が終わり。
俺たちは、ダンジョンのさらに奥へと潜っていった。
すると、次第に出てくるゴブリンの数も増えるようになった。
三体までなら余裕だったけど、五体以上いると良い練習になる。
その日の終わりまで、俺たちは相当な数の魔物を倒し続けた。
そして、「上層で問題なく戦える」という確かな手応えを感じた。
だから、「明日からは連泊での探索もしていこう」という話になった。
ダンジョンのゲートを潜り抜けて、外に出る。
周りを見ると、同じ一年の仲間たちが、俺たち同様に探索を終えて集まっていた。
そこから、「明日は最初どうする……」という会話が聞こえたような気がした。
でも、何気ない会話だったから、俺たちは気づけなかったんだ。
俺たちは、心地よい疲労と充実感に満たされながら、帰路につく。
冷房の効いたバスの車内で、うとうとと揺られながら夢を見る。
それはとても幸せな夢で。
その夢の中で俺たちは、順調に上層を攻略していき、最後には笑いあっていた。
今回の話から、ダンジョン名を本編内で明記するようにしました。
※過去話も順次修正いたします。
今回のダンジョンであれば、
国としては、「JPN-STM-12:埼玉校Dランクダンジョン 地下遺跡の坑道」のように管理。
本編内では、《埼玉校Dランクダンジョン 地下遺跡の坑道》のように表現する形です。
※JPN-STM-12は、国がダンジョンを識別するための管理番号です。
装備を新調して、いよいよダンジョン探索も本格的になってきました。
それでは、引き続き、本作をお楽しみください。
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