4章3話「学生らしく! みんなでお買い物!!②」
◆
ダンジョンスミス所沢店での買い物は、なんとか無事に終わった。
……とはいえ、湊と白石さんは最後まで自分で装備を決められなかった。
もちろん、何も買わなかった訳ではない。
装備・道具の説明を聞き、実際に二人の感想も聞いて──
最終的には、俺たちが選ばせてもらったのだ。
なんでも「信頼しているみんなが決めてくれたなら納得できる」らしい。
いや、そんなに重大な選択じゃないよね?
そう俺は思ったけど、本人たちは至って真面目だった。
そして、買い物が終わり。
ちょうど昼飯時になったので、俺たちはAGC所沢のフードコートに来ていた。
フードコートは、和洋中さまざまなお店と、家族連れのお客で賑わっていた。
俺たちのテーブルにも、各自が選んだ様々な料理が並んでいる。
「ラーメンもいいけど、ここはガッツリ肉だよな!」
晴斗は、ステーキとハンバーグのセットでご飯は大盛り。
そのテンションからも分かるとおり、大喜びで肉を食べている。
「このドーナッツ、初めて食べたけどおいしー!!」
白石さんは、期間限定のドーナッツセット。
口をモゴモゴさせながら食べる姿は、小動物のようで可愛らしい。
「やった! 弟が欲しがってたおもちゃがついてきた。」
湊は、ハンバーガーセットのおまけを嬉しそうに眺めていた。
自分の好物よりも、家族へのお土産を優先するところが、さすが湊だと思う。
「ここのお店のタマゴサンドおいしいね。」
「こっちのベジタブルサンドも美味しい。
よかったら、夕雨ちゃんも食べてみて。」
しずくと雨宮さんの二人は、サンドイッチとフレッシュジュースを頼んでいた。
お互いのサンドイッチを分け合っては、おすすめの店を教え合っている。
そして、俺は牛丼を食べている。
いや、牛丼が悪いわけではないんだ。
ただ、なぜか社畜時代の自分を思い出してしまうのだ。
安くて、早くて、胃に優しい。
普段食べてる家庭料理も好きだけど、たまに食べたくなるんだよな……。
そんなことを考えていた時──
不安そうに誰かを探している女の子が目に入った。
(あんな小さな子が一人で……迷子かな?)
外見と行動から考えて、小学校高学年ぐらいだろう。
それぐらいの年齢の子供は、自分で判断して行動ができる。
だから、「少しくらい大丈夫」と考えて親から離れ、迷子になることが多い。
(俺も、前世でよく経験したな……
両親とはぐれて不安になって。
見つけてもらった瞬間は、安心して大泣きしたっけ……)
……だめだ。気持ちが助ける方向に向かっている。
今のご時世、子供に声をかけると、不審者扱いされる可能性もあるのに。
あれ?
でも、今の俺は高校生。
同じ子供同士なら、人助けであればギリギリセーフか?
自分の気持ちを整理できず、頭の中で考えがグルグルしだした頃。
しずくが心配そうに、声をかけてくれた。
「どうしたの? 倫太郎。」
その声で落ち着きを取り戻して。
俺は、みんなに事情を相談することにした。
「あそこにいる女の子。なんか迷子みたいな気がして……。
もし困っているなら、助けてあげたいな、って思ってさ。」
「どれどれ。あの子か。
迷子な気もするけど……湊はどう思う?」
「うん、迷子だと思うよ。
うちの上の妹と背丈が似ているから、小学五年か六年生かな。
倫太郎はよく気づいたね。僕ももっと周りを見れるようにならないと。」
湊が言うなら確定か。
でも、何を極めようとしているの。湊君?
俺の服の袖が「くいっ」と引かれる感触がして視線を向ける。
そこには、俺をまっすぐ見つめるしずくの姿があった。
「助けに行こう。倫太郎。
迷う必要なんかないよ。」
周りを見渡すと、みんなが頷いてくれていた。
白石さんは満面の笑顔で。
雨宮さんは優しい笑顔を俺に向けて。
(ああ……これが今の俺の仲間たちか)
俺は勇気をもらい。
みんなと一緒に女の子を助けることにした。
「あの。
もしかして、誰かを探しているの?」
こちらに振り向いた彼女に。
俺は、なるべく怖がらせないようにゆっくり話しかけた。
「もしよかったら、お姉ちゃん達が力になろうか?」
俺の隣で、しずくが女の子にやさしく声をかける。
少し緊張の糸がほぐれたのか、女の子の目に涙が溜まった。
「あ、あの。 お母さん。
お母さんと一緒に来てたんですけど、気づいたら、その……」
「落ち着いて。
ゆっくりでいいから。
誰も君を責めたり、急がせたりしないから。」
ひとりぼっちの時は、誰だって不安だ。
あの時、自分が欲しかったのはどんな言葉だったか。
女の子は次第に落ち着きを取り戻し、ゆっくりと話し始めた。
「お母さんとプールに来てたんです……
私がパフェ食べたいって言ったら、フードコートに行こうって……
途中に可愛いアクセサリー屋さんがあって……
少し見てたら、お母さんいなくて……」
「そっか、ありがとう。
それでお母さんを探していたんだね。」
えらいな。この子は。
俺が幼かった頃なら、泣き出していたはずだ。
「頑張って話してくれたご褒美。
俺の妹が好きで、飴をいつも持っているんだ。
どれが好き? 俺のおすすめはこのミルクキャンディー。」
本当は俺も好きだから持っている秘蔵の飴コレクション。
この子には、何個か分けてあげよう。
そうして女の子と話していると、軽く肩をたたかれる。
振り向くと、湊がAGC所沢のパンフレットを持って立っていた。
「すごいね、倫太郎は。
僕でもここまで安心させるのは難しいよ。
はい、これ。探索範囲の目星はつけておいたよ。」
弟や妹で慣れているんだろう。
次の行動を考えて動いてくれた湊には、頭があがらない。
その後、少し落ち着いた彼女と一緒に。
母親が彼女を探していそうなエリアを歩いた。
今度ははぐれないように、しずくがしっかりと彼女の手をつないでいる。
やがて──
「涼音!」
「お母さん!」
女の子は母親と無事に合流することができた。
二人から何度もお礼を言われたけれど。
たいしたことじゃないと伝えて、俺たちはフードコートを後にした。
そして。
その後は、アミューズメントエリアをみんなで遊びまわった。
ゲームセンター、カラオケ、クレープ屋。
いろんな施設をまわったけど、どこも凄く楽しかった。
その中でも印象的だったのは、
湊がクレーンゲームで景品を大量ゲットしたことと、
雨宮さんがカラオケで披露したプロ並みの歌唱力だ。
遊んでいるうちに日も暮れて。
帰る頃にはクタクタだったけど、笑顔は絶えなかった。
今日一日で、みんなのいろんな一面を知れた。
最近は、訓練ばかりしてたから。
こんなに楽しく遊べたのは久しぶりかもしれない。
そして──誰が言い出したのか覚えてないけれど。
「夏休み中に、もう一度みんなで遊ぼう」
「その時は、みんなでお祭りにも行こう」
俺たちはそう約束をした。
4章2話および3話をお読みいただきありがとうございます。
2話で納めようとしたのですが、
書いておきたい話と、書きたい話がたくさんあり、
ついつい、盛りだくさんの内容になってしまいました。
本編では描ききれなかった部分については、
どこかでお見せできればいいなぁと思っています。
……できれば書籍などで。
それでは、引き続き、本作をお楽しみください。
X(旧Twitter):@yomu_kobo




