4章2話「学生らしく! みんなでお買い物!!①」
◆
補講が終わって三日後。
俺たちは所沢駅の近くの冒険者向け大型ショッピングモール――
アドベンチャーズ・ギルドシティ所沢、通称AGC所沢にやってきた。
低ランクダンジョン向けの装備と道具なら、学校の購買で揃えても問題はない。
むしろ、国がDランク上層相当の品物として大量生産するため、品質・価格ともに非常に良心的だ。
だが、Dランク中層以降を攻略するなら、それでは不十分になる。
なぜなら、中層以降から、Dランク相当の強さの魔物が出始めるからだ。
更に異常発生した場合、Cランク以上の魔物と戦うことも考慮する必要がある。
そこでAGC所沢の出番というわけだ。
AGC所沢は、国が主導して作っただけあって、ダンジョン関連から一般的な買い物・娯楽施設まで全て揃っている。
そのため、客層は冒険者だけでなく、その家族や一般市民まで幅広い。
商魂たくましい施設なのだ。AGC所沢は。
今日は平日だが、夏休み中ということもあり家族連れで賑わっていた。
(夏休み中は、イベントも豊富だしな……)
そんな微笑ましい光景を横目に。
俺たちは冒険者エリアにある、ダンジョンスミス所沢店を訪れていた。
◆
「倫太郎には、これが似合うと思う。」
ダンジョンスミス所沢店の防具コーナーで。
しずくが見せてきたのは、カジュアル系の戦闘服だった。
俺は服を選ぶセンスがない。
だから、いつも家族やしずくに服を選んでもらっていた。
ありがたい話だ。
でも、今日の目的はそこじゃない。
「ありがとう。しずく。
でも、今日の目的は武器の新調だから。」
確かに、防具の新調は必要だ。
だけど、武器と防具を同時に新調できるほど、俺たちにお金の余裕はない。
それが分かっているから、他のみんなは武器コーナーに行っている。
「だめ。倫太郎が選ぶと変な服を買ってくるから。
一緒に来られる時に候補を見つけておかないと。」
珍しく食い下がるしずくに驚きつつも。
俺はしずくの鋭い切り返しに、ぐぅの音も出なかった。
「じゃあ、また今度!
しずくには申し訳ないけど、また今度一緒に付き合ってくれないか?」
本当は自分で選べるようにならないといけない。
でも「ダサい」って視線は、微妙にキツイものがあるんだ。
毎回頼りにして悪いとは思うけど、背に腹は代えられない。
そんな自分勝手な提案に。
しずくは不満そうな顔も見せずに「わかった」と頷いてくれた。
そして、「また今度ね」と言って防具コーナーを後にする。
(今日のしずくはご機嫌だな。)
ここはダンジョンスミス所沢店以外にも様々な施設がある。
装備を新調したあとは、みんなでアミューズメントエリアにも行こうと話をしている。
いつもより機嫌がよさそうに歩く、しずくの後ろ髪を眺める。
ふいに嬉しくなって、口元が緩んでしまった俺は――
なんとなく感じた恥ずかしさを誤魔化すように。
武器コーナーに向かって、しずくと一緒に歩き出すのだった。
◆
武器コーナーに着くと、晴斗が俺たちに気づいて声をかけてくれた。
「おつかれ、お二人さん。
戦闘服を見てたけど、そっちは満足できたのか?」
「ああ、お待たせ。
似合いそうなのを何着か見たけど、また今度買いに来ようって話になったよ。」
晴斗の方を見てみると、雨宮さんも一緒に休憩していた。
どうやら二人は、すでに新しい武器の購入が終わったらしい。
いまは、新しい武器を手になじませているところだった。
「ごめん、遅くなって。
二人はその武器に決めたのか?」
「おう。俺はこれでいいや。
なんとなく手にとったけど、やけにしっくりくるしな。」
「私もこれで決まりかな。
実は、最初からある程度の目星はつけて来ていたの。」
晴斗は、大盾とメイスを大きく振り、少し重たそうにしながらも感触を確かめている。
雨宮さんは、試射を既に済ませたらしく、クロスボウをケースに入れて椅子に座っていた。
「あれ、湊と白石さんは?」
二人の姿が見えなかったため、気になった俺は晴斗に聞いてみる。
「それなら、ほら。
あそこにいるぞ。」
晴斗が指を示す方向に、俺は視線を送った。
すると、そこには武器と道具の値段に目を白黒させる二人がいた。
「わわ、煙幕が1個1万円もする…
これ1個で、弟たちに牛肉の入った肉じゃがを食べさせられちゃう……」
「落ち着いて、澪。
1万円あったら牛肉はもっと買える。
牛丼だって作るんだ。」
(白石さんは分かるが、湊も冷静じゃないな……)
家があまり裕福ではないと言っていた二人だ。
学校の購買で購入した道具でさえ、使いどころを見極め、必死の形相で使っていた。
使わずに怪我をすれば、何倍も損をすると二人は理解している。
だからこそ、二人とも戦闘中の思い切りは良い方だ。
でも、Cランク以上の装備と道具は、いままで購買で買えた金額とは桁が違う。
(この武器の新調も必要なこととはいえ、何だか二人に申し訳なくなってくるな……)
みんなと合流した俺としずくは、自分たちの剣と盾をすぐに選び買い物を終えた。
そして、湊と白石さんが落ち着くまで、そっと二人を見守り続けるのだった。
今回の話から、設定を一部修正しています。
・湊から澪への呼び方を、「白石さん」ではなく「澪」に統一しました。
※過去話も順次修正いたします。
また、次回投稿についてお知らせです。
4章全体はまだ執筆中ですが、長期間の放置を避けるため、
週2(水、土)に1話投稿(20時)で進めていきます。
とはいえ、無理に投稿して質を落とすつもりはありません。
投稿が難しい場合は、活動報告にてお知らせいたします。
「おもしろかった!」
「続きが気になる!」
「4章以降も頑張って書いてください!」
と思っていただけた方は、高評価(★満点)やブックマークで応援いただけると嬉しいです。
みなさまの応援が、今後の執筆の大きな励みになります。




