3章5話「特別訓練と深まるラブコメ(俺得)」
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黒鋼先生から課題を告げられたあと、俺たちは再び戦闘エリアへ散っていった。
休憩で息を整えたはずなのに、胸の奥にはまだあの違和感が残っている。
(……確かに動けるようにはなってきたけど)
イレギュラーボス戦での力。
俺はあの力が欲しい。
身体の奥で何かがうずくような感覚がするが、それが何なのか俺自身まだ掴めていなかった。
そんな俺の隣で、しずくが短剣を握り直して言った。
「……倫太郎。
さっきの黒鋼先生の言葉、ちょっと悔しかった。」
「悔しかった……なんで?
武器を変えて動きがだいぶ良くなったなって、褒められてたじゃん。」
「ううん。
“ 力んでる ” って言われたの、図星だったから。
……もっと上手くなりたい。」
しずくの瞳は、いつもより強い光を宿していた。
しずくはイレギュラーボス戦から変わった。
力を求めるところは変わらないが、どこか落ち着きを取り戻したように思える。
あの戦いのあと、しずくは武器を長剣から短剣二刀流に変えた。
今使っている武器は、しずくと俺が持っていた予備の短剣だ。
もっと良い武器を使えば良いのに
「まだ短剣での戦いに慣れていないし……倫太郎の剣、借りてて良い?」
と言われた俺は、断れなかった。
しずくは、精密・高速型の近接アタッカーだ。
直剣を選んだときに " 軽くて扱いやすい " と言われて納得したが、相手の急所を攻撃するその戦闘スタイルは手数で相手を翻弄できる武器の方が合う。
実際、武器を変えてからしずくの成長はすさまじい。
その動きは以前とはまるで別人で、迷いが減り、踏み込みも鋭くなった。
自分でも思い通りに動けているのが分かるのだろう。
日に日に強くなっていくのが、隣で見ていてもよく分かる。
(まったく、どんな心境の変化があったのやら。
……女の子って、突然成長するよね。)
「……倫太郎。また変なこと考えてる?」
――まずい。
しずくとは付き合いが長いから、変なことを考えていたらすぐにバレる。
しずくのジト目から逃げるように。
これ以上の深入りは危険と判断し、俺は別の方向に視線を向けた。
すると、少し離れた場所で、藤宮君と白石さんが向かい合っているのが見えた。
「……あの、湊くん。
さっきの戦闘で、私が敵に煙玉を投げるのが遅れちゃって……」
「いや、僕の方こそ。ごめん。
もっと早く声をかけていれば、動きを合わせられたはずだよ。」
二人の間には、まだぎこちなさが残っている。
しかし、それは以前みたいに遠慮して距離を置くぎこちなさじゃない。
「私、もっと湊くんと一緒に戦いたい。
だから…サポートは私に任せて!
湊くんは、思うように動いてね。」
「ありがとう、白石さん。
僕も白石さんを信頼しているし、これから先も白石さんと一緒に戦いたい。
どんな敵が出てきたって、絶対に守るから安心してほしい。
だからこれからは、お互いにもっと伝えあっていこう。」
黒鋼先生のアドバイスを受けて、二人は現状の関係に甘えずに、一歩踏み込むことを選んだ。
戦場でお互いを助け合うために。
(あっちも問題なさそうだな)
――それにしても。
(黒鋼先生は
『互いに信頼はあるが、遠慮が邪魔をしている』
と言っていたが、俺の見立ても同じだった。
お互いの距離感が近いのに、どこかぎこちない。
それが彼らの ” あと一歩 ” を邪魔していた。
それを、あんな自然に伝えるなんて……)
これから二人の距離はさらに縮まり、恋愛の階段をステップアップしていくことだろう。
それを成したのが自分じゃないのは少し口惜しいけど、黒鋼先生なら納得しかない。
流石は我らが黒鋼先生。妻子持ちは伊達じゃない!
今日からは「恋愛マスター」と心の中で呼ばせていただきます!!
そんなことを考えていると、しずくの方から呆れているような気配がするのを感じた。
またやってしまった。
でも仕方ないじゃん?
最近の俺は、けっこー頑張ったと思うんだよ?
命がけの戦闘もしたし、基礎も鍛えている。
自分でいうのもなんだけど、いっぱいいっぱいなんだよ!
だから、これは必要な時間なんだ!
心を休ませるための大切な時間なんだよ!
(かくして示したかったことは証明された。Q.E.D.)
なんたって、ラブコメは人生を潤す潤滑油!!
補給しなきゃ、心がカラカラになっちまうからな!!




