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転生三回目の俺、今度こそラブコメもダンジョンも攻略したい  作者: 読むの大好き工房
1章

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2/22

1章2話「水無月しずくは、機嫌が悪い」

始業式が終わって、いよいよ今日から冒険者学校高等部の授業が始まる。


スマホのアラームで目を覚まし、洗面所で顔を洗ってリビングに向かうと、

新聞を読む父、

朝食を準備する母、

中学校の制服を着て眠そうにしている妹、

既に家族がテーブルを囲んで揃っていた。


俺も椅子に座り「おはよう」と挨拶をする。

我が家では昔から、家族全員で朝食をとるのがルールだ。


自宅から冒険者学校までは通学に約一時間かかる。

しかし、冒険者学校は県に一校しかなく、部活動もないため、

生徒の負担を減らす目的で始業が9:30、終業が16:30と遅めの時間帯になっている。


中学生の時と変わらない時間帯に起きて通学ができるため、

俺が高校生になっても、このルールに変更はなかった。


テレビから流れる朝のニュース番組をBGMに、

俺は用意された朝食を食べながら、数時間後に始まる授業に胸を躍らせていた。


そして食事を済ませると、自分の部屋に戻り、冒険者学校の学生服に着替える。


紺のスラックスに、紺のブレザー、白ワイシャツに青いネクタイ。

ダンジョン素材を使った耐久性の高い制服で、背中にはストレッチ素材が入っている。

ブレザーは腰丈で、左右に深めのスリットが入っており、肩から袖口までは広めに作られていた。


学校へ行く準備をしていると、

階下から俺を呼ぶ母親の声が聞こえた。


「倫太郎、しずくちゃん来てるわよ〜。」


その声を聞いた瞬間、

俺は慌ててワンタッチバックル付きの冒険者用ベルトポーチを腰に装着し、

鞄を持って玄関へと向かう。


そこには母と、学生服を着た幼馴染の水無月しずくの姿があった。


白ワイシャツと赤いリボン、

オフホワイトのカーディガンの上に、紺のブレザー。

グレーのチェック柄スカートは、膝が少しでるくらいの長さとなっており、

スカートと白いトレランシューズには、細いピンクのラインが入っていて、

しずくの雰囲気にぴったりだった。


「おはようございます。おばさま。」


しずくが母に向けてやわらかい笑顔を見せている。

普段は警戒心が強く、無表情で近寄りがたい雰囲気なのに、

気を許した相手の前では、ふっと花が咲くように表情がほどける。


――しずくさん、今日も素敵ですね。

できれば、その笑顔を俺にも頂戴。


「おまたせ。」


俺が声をかけると、しずくは一瞬だけ目をそらし、

さっきまでの柔らかさが嘘みたいに、すぐにいつもの無表情に戻った。


「おはよう、倫太郎。……ほら。いくよ。」


スカートがふわりと舞い上がり、しずくは玄関に向けて歩き出す。

その横顔はどこか不機嫌そうで、俺は思わず苦笑してしまう。


(昔は、俺にもよく笑ってくれたんだけどなぁ。)


俺は、幼馴染の後ろを追って家を出て、

駅へ向かって一緒に歩きだすのだった。



俺たちが通う学校は、埼玉県所沢市にある、冒険者学校高等部の埼玉校だ。

自宅の最寄り駅からは、電車で約30分、駅からバスで約10分のところにある。

関東で五校ある冒険者学校高等部の一つで、設備も充実しているらしい。


国から学費などの補助は出るものの、危険がつきものの冒険者になることを反対する親は多い。

実際、うちの親を説得するのにめちゃめちゃ苦労した。


だから、しずくが冒険者学校を選んだと聞いたときは本当に驚いた。

勉強も運動もできるし、てっきり別の道を選ぶものだと思っていた。


本人が言うには――


「別に。やりたいこととか特にないし。お試しで入ろうと思っただけ。

 冒険者の素質がなければ、国が一般就職へのサポートも行ってくれるし。」


とのこと。


それを聞いたときに「しずくは堅実だなぁ……」と感心したのを覚えている。


なんだかんだで同じ学校に通うことになった俺たちは、

幼稚園から始まり高校まで、いまだに一緒に登校を続けている。


学校の最寄り駅までの電車は、

通勤ラッシュを避けるために早い時間帯を選んでいるが、

それでも車内が学生とサラリーマンでいっぱいだ。


今日も混んでるなと感心しながら、つり革を掴み立っていると、

冒険者学校の学生服を着た男女が前にいるのが見えた。


その瞬間、

電車が揺れ、女の子がバランスを崩してしまう。


「ご、ごめん……!」

「いいよ、大丈夫。」


バランスを崩した女の子に袖をつままれた男の子は、

照れながらも優しく声をかける。


その耳は、ほんのり赤い。


――その瞬間、

俺は自分の顔がにやけてしまうのを感じた。


(――!! おいおいおい!青春かよ!!)


(男の子は袖をつままれた瞬間に耳が赤くなってるし!

 あれは絶対、普段から意識してるやつの反応だって!)


(さらに、女の子の方も、手を離すときに名残惜しそうにしてたんだよ!?

 あれは……もう……絶対好きなやつじゃん!!)


テンションが急激に上がった俺の脳内では

二人の明るい未来予想図が勝手に再生されていく。


いやぁ……青春って素晴らしいね。



その後、冒険者学校の最寄り駅に着くと、俺たちは電車を降りた。

そして、とうとう我慢ができなくなった俺は、

しずくにひっそりと、先ほどの感動を伝えることにした。


「見た!? あの距離感! あれは絶対両片想いだって!」


「……はいはい。」


「いや!聞いてくれよ!あれは――」


「……」


しずくは無言のまま歩く。

さっき家を出たときと同じ、あの “ むすっ ” とした横顔だ。

どこか拗ねているようにも見える。


でも、愛想を尽かしたりせずに俺の隣にいてくれる。


二人でいるときは、いつも俺ばかりしゃべってしまうが、

しずくは嫌な顔をせずに聞いてくれる……聞いてくれてるよね?


こんなことばかりするから、しずくに睨まれてしまうのだろうか。



でも、やめられない。


――なんと言われようが、ラブコメは、俺の人生のスパイスだからな!



TIPS:冒険者学校

・国はダンジョン資源の安定供給と死亡者の減少を目的に、冒険者学校を設立。

・冒険者学校には高等部と、訓練校 (大人の部)がある。


TIPS:冒険者学校高等部

・国から潤沢な補助が出る一方、冒険者として生き残るには、ある程度の適正が必要となる。

・適性がない、または冒険者を希望しない生徒には一般就職のサポートが行われる。


TIPS:冒険者学校訓練校

・一定の授業料等を払い、好きに授業を受けることができる。


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