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転生三回目の俺、今度こそラブコメもダンジョンも攻略したい  作者: 読むの大好き工房
2章

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15/22

2章5話「しずくの無理と、背後からの影」

翌朝。


俺たちはキャンプ地で簡単な朝食をとっていた。

固めのパンをかじりながら、しずくの様子をうかがう。


少し眠そうに目をこすっているが、昨日よりは落ち着いているように見えた。


「……眠れなかったのか?」


小声で聞くと、しずくは一瞬だけ視線をそらし、


「……ちょっとだけ。」と答えた。


その “ ちょっと ” が嘘なのは、見ればわかる。


(昨日の鳴き声……気になってるんだな)


俺も気になっていた。

あの低い唸り声は、いつものゴブリンのそれとは違っていた。


何かよくないことが起きる気がする。

だが確証がない以上、不安を煽るようなことは言えなかった。


朝食を終え、テントを畳んで荷物をまとめると、

キャンプ地には一瞬だけ静けさが戻った。

皆が水筒の口を閉めたり、装備を締め直したりしている。


「よし! 今日も頑張ろうぜ!」

陽斗が明るく声を上げ、空気が少しだけ軽くなる。


雨宮さんは緊張した面持ちで、クロスボウを構えていた。


しずくは俺の近くに立っているが、いつもより距離が近く、表情は硬い。

不安を隠しきれず、誰かのそばにいたい――そんな気配が伝わってくる。


どこか張りつめたような、落ち着かない空気が漂う中、

黒鋼先生が前に出て、全体に声をかけた。


「演習二日目だ。今日は昨日より奥に潜る。

 気を抜くな。疲労は判断を鈍らせて “ いつも通り ” をさせてくれない。

 異常を感じたら、すぐに報告しろ」


その言葉に、しずくが小さく肩を震わせた。

俺はそっとしずくの方を見て、うなずく。


「行こう、しずく」

「……うん」


しずくも小さくうなずき返す。


順番に出発していき、前のパーティーの足音が遠ざかる。

通路が静かになった頃、黒鋼先生がこちらを振り返った。


「岡田たち、次だ。行け」


「了解!」


陽斗の声に合わせて、俺たちは通路へと足を踏み入れた。



しばらく歩くと、通路は次第に細くなり、足場の悪いエリアへと入っていく。

岩がゴツゴツと突き出し、ところどころに段差がある。


しずくは昨日の疲労が抜けていないのか、動きが少し鈍い。


「しずく、無理すんなよ」

「……大丈夫」


即答だった。

だが、その声はわずかに震えている。


(意地張ってるな……)


しずくは、本当につらいときほど “ 平気 ” を装う。

皆を不安にさせたくないから、自分の弱さを後回しにする。

その優しさが痛いほど伝わってくるからこそ、余計に心配だった。


そんなとき――


「前方、ゴブリン三体!」


工藤先輩の声が響く。


「倫太郎のパーティー、前に出ろ!

 足場が悪い。 陽斗が一体受け止めて、残り二体を分担しろ!

 後方のパーティーは援護に回れ!」


「了解!」


陽斗が一体を受け止め、

俺としずくが残り二体を担当する。


「しずく、右のやつは俺が引きつける。左を頼む!」

「……うん!」


返事をしたが、反応が遅い。

攻撃のタイミングが半拍ずれている。


俺がフォローに回り、

雨宮さんが援護射撃を放ち、矢がゴブリンの頭を貫いた。


ゴブリンを倒し終えると、

しずくは悔しそうに唇を噛み、

「……ごめん」と小さく呟いた。


「気にすんな。疲れてるだけだよ」

「しずくちゃん、無理しないでね」

「俺らがカバーするからさ!」


周りが自然にしずくをフォローする。

その優しさに、しずくはほんの少しだけ目を伏せた。


その後も小規模な戦闘が続き、

しずくも徐々に動きが戻ってきたが、疲労は確実に蓄積していた。


(……やっぱり無理してるよな)


しずくの呼吸は荒く、足取りも重い。

それでもしずくは前を向いて歩き続ける。


しばらくすると、前方から金属音と叫び声が響いた。


「前のパーティーが戦ってるな」


戦闘が長引いているせいで、周囲の魔物が集まり始めていた。


「追加で来るぞ! 

 前方のパーティーは正面の敵で手一杯だ。

 俺たちは周囲から集まってくる魔物を引き受けるぞ!」


工藤先輩の声が響く。


俺たちは散開し、周囲の敵を迎え撃つ。

岩場での戦闘は足場が悪く、集中力を削られる。

しずくも敵を一体倒したが、

疲労で体勢が崩れ、よろめいていた。


(しずく……大丈夫か?)


俺が視線を送った、その瞬間――


背後の岩陰から、ゴブリンが飛び出すのがみえた。


「しずく、危ない――!」


目の前の敵を倒して気が緩んでいたところに、

ゴブリンが襲い掛かる。


「――ッ!」


しずくは振り向くが、反応が遅い。

避けきれない。


俺は咄嗟にしずくを引き寄せ、

盾を前に突き出した。


ガンッ!!


衝撃が腕に走り、痺れが広がる。

痛みで顔が歪む。


「倫太郎……っ!」


しずくが俺の腕の中で震えていた。


(くそ……!)


俺が軽傷で済んだのは、ただの幸運だ。


だが――

しずくの中で、何かがぷつりと切れた。


「……よくも……!」


普段は感情を抑えるしずくが、怒りを隠そうともせず飛び出した。


「しずく、待て!!」


しずくはゴブリンに斬りかかり、つばぜり合いになる。

だが動きに精細を欠き、次第に押し込まれていく。


しずくが追い込まれた先は――

通路の端にせり出した細い岩棚。

その先は崖になっていた。


「しずく、戻ってこい! その先は危ない!」


「大丈夫……っ、私だって……!」


しずくが押されるたびに、足元の砂利が崖下へと落ちていく。

その音が、嫌な予感となって胸を締めつけた。


「しずく!!」


次の瞬間――

しずくの足が、岩棚の端を踏み外した。


「きゃっ――!」


しずくの体が、暗い穴へと吸い込まれるように落ちていく。


俺は反射的に手を伸ばした。


「しずく!!」


指先が、しずくの手首を掴む。


だが――

勢いを殺しきれない。


「倫太郎……っ!」


しずくの叫びが耳に響く。


しずくを引き寄せ、離すまいと強く抱きしめながら――

俺たちは、そのまま二人まとめて、底の見えない暗闇へと飲み込まれていった。


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