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転生三回目の俺、今度こそラブコメもダンジョンも攻略したい  作者: 読むの大好き工房
2章

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14/22

2章4話「大規模ダンジョン演習、開幕」

翌週の月曜日。

朝のホームルームが終わると、俺たちは大型バスに乗り込み、

大規模ダンジョンへ向けて出発した。


これから向かうダンジョンは、学校から車で一時間ほど離れた山間部にある。

住宅街から遠ざかるにつれ、車窓の景色は深い緑に変わっていった。


(……いよいよだな)


車内は、緊張と期待が入り混じったざわめきで満ちていた。


近くに座っているパーティーメンバーを見てみると、

陽斗は相変わらず元気にクラスメイトと話しており、

雨宮さんは静かにクロスボウの弦を確認している。

しずくは隣で俺と話しながら、ときどき窓の外へ視線を向けていた。


「……緊張してる?」

「……ちょっとだけ。」


しずくは小さく答えたが、指先に力が入っているのがわかった。


目的地に着き、バスを降りると、

そこには、ひときわ大きなゲートがあった。


直径五メートルほどの楕円形の空間が、

水面のようにゆらゆらと揺らめき、青白い光を帯びている。

そこに近づくほどに、空気がひんやりと変質していく。


今回の演習は一年全クラス合同(一組・二組・三組)で行われ、

各クラスの担任三名と、三年生が護衛として数名同行している。


黒鋼先生が前に立ち、厳しい声で言った。


「いいか、この三日間は気を抜くなよ。」


「ダンジョン内では一年の二パーティーと三年一人をセットで行動してもらう。

 さらに、俺たち教師も、最初・真ん中・最後の組に分かれて同行する。」


「中での注意点を復習するぞ。

 食料管理を徹底しろ。

 魔力の無駄遣いは禁止。

 夜の見張りは必ず二人一組。

 異常を感じたら、すぐに報告しろ。」


生徒たちは一斉にうなずく。

緊張が一段階高まっていくのがわかった。



黒鋼先生の話が終わると、

順番に十分ずつ間隔を空けてダンジョンへ入っていく。


しばらくして、俺たちの番が来た。

同行する一年生パーティーと、三年生の工藤先輩とともに、ゲートをくぐる。


――その瞬間、

空気の密度が変わった。


ひやりとした風が頬を撫で、

耳鳴りのような微かな振動が残る。


このダンジョンは “ 地下遺跡型 ” 。

天井は高く、古代文明の名残と思われる石柱が立ち並び、

壁面には淡い光を放つ魔石が埋め込まれている。


上層から中層にかけては、ゆるやかに広がる洞窟状の地形が続き、水滴が落ちる音が静かに反響していた。

まるで、天井が高い巨大鍾乳洞の大広間を歩いているような、開放感と薄暗さが同居した空間だ。


しかし、下層へ進むと景色は一変する。

天井は魔石の光では判別できないほど高くなり、

視界の端まで続く広大なエリアが広がっているという。


(……これは、Eランク以下のダンジョンとは比べ物にならないな)


パーティーで固まって歩いていると、

しずくが俺の後ろにぴたりとついてくる。

触れてはいないのに、気配がやけに近い。

緊張しているのが伝わってきた。


しばらく進むと、かすかに「ギャッ…ギャッ…」という濁った鳴き声が響いた。


工藤先輩が手を上げて合図する。

俺たちは足を止め、周囲へ視線を向けた。


すると、前方の物陰から、魔物が姿を現す。


緑色の痩せこけた小さな体に粗末な布切れ。

黄色く濁った目がぎらつき、裂けた口元から鋭い牙がのぞく。手には石を削っただけの棍棒。

好戦的で、弱者をいたぶる残忍な性格をしており、繁殖力が高く放置すると増える魔物。


ゴブリンだ。


このダンジョンの上層では、武装したゴブリンだけが出てくる。

Eランクダンジョンにも出てくる魔物だが、群れで出てくる場合の脅威度はDランクに相当する。


「ゴブリン五体、接近!」


「倫太郎たちが前方組、残りは後方組だ。

 俺が敵を分断する!」


工藤先輩の指示に従って、俺たちは動き出す。


「二体は俺が引きつけて後方組に流す。距離を取って攻撃しろ。

 前方組は残り三体を受け止めろ。絶対に無理はするな!」


緊張で喉が乾く。

それでも、工藤先輩の声は不思議と落ち着きを与えてくれた。


「よし。行け!」


武装したゴブリンたちが、甲高い声を上げながら突進してくる。


工藤先輩は素早く前に出て、

ゴブリンの進行方向を斜めに切るように動き、

二体を後方へと誘導するように足運びで分断した。


後方組が素早く後退し、クロスボウと魔力弾で牽制を開始する。


その間に、俺たちのもとへ三体が向かってきた。


「陽斗! 前!!」

「任せろ!」


陽斗が前に出て、ゴブリンたちを大盾で止める。

金属同士がぶつかるような鈍い衝撃音が響く。


その隙に俺は右側へ回り込み、

最も近い敵の足へ低い軌道で斬り込んだ。


その横では、しずくが俺の動きに合わせ、

タイミングよく敵の横腹に一撃を叩き込んでいる。


後方から雨宮さんのクロスボウが “ シュッ ” と音を立て、

別のゴブリンの肩に命中した。


後方では、工藤先輩が敵二体の動きを完全にコントロールし、

後方組が安全に攻撃できるように間合いを調整している。


「ナイス、距離そのまま! 焦るな、確実に当てろ!」


敵は連携こそないが、動きは素早く、数で押してくる。

陽斗が一体を大盾で押し返した瞬間、別の一体が横から飛びかかってきたが、

工藤先輩が素早く割って入り、拳で殴り飛ばした。


「いい連携だったぞ、一年!」


その声に合わせ、俺たちは最後の一体を仕留めた。


ゴブリンが無事に倒されると、しずくが小さく息を吐く気配がした。

緊張が少しほぐれたようだ。


(初戦としては上出来だな)


その後も、複数体のゴブリンが現れた。

俺たちは連携しながら敵を倒し、

危ない場面では工藤先輩が的確にフォローしてくれた。


探索は順調に進み、

夕方に指定されたキャンプ地に到達するころには、

パーティー同士の連携も少しずつ良くなっていた。


キャンプ地は広い空洞となっており、

天井の魔石が淡く輝き、静かな薄明かりが全体を照らしている。


「テントは、このあたりに広げればいいのかな。」

「食料は一日分ずつ分けて……これぐらいかな。」


キャンプ場について、一息ついた俺たちは

自分達の陣地を整え、寝床と夕食の準備を始めていた。


夕食は、固めのパンと干し肉、そして温めたスープ。

簡単な食事だけど、皆と一緒に食べると、思ったよりも美味しく感じた。


食事が終わると、見張り当番について

一年のパーティー同士で話し合うこととなった。


まず陽斗が、先陣を切って手を挙げた。


「俺、最初の見張りやるよ!」


「じゃあ俺も最初かな……」


俺も立候補しようとすると、

しずくが、迷うように俺の顔と地面を交互に見てから、口を開いた。


「わたしは……倫太郎と、同じ時間がいい」


「え? ああ、別にいいけど。」


しずくはほんの少しだけ微笑んだ。

陽斗がニヤニヤしているのが視界の端に入る。


「えっと、じゃあ雨宮さんは陽斗と一緒でいい?」


「うん、大丈夫だよ。 陽斗くん、よろしくね。」


俺は戸惑いながらも、しずくとの見張り番を了承して

陽斗は雨宮さんと一緒に見張りをすることとなった。


しずくの急な行動に戸惑っていたものの

――ふと、俺に天啓が舞い降りた。


(もしかして、しずくも陽斗と雨宮さんのラブコメが見たいのか……?)


俺たちの見張り番は、陽斗の次だ。

だが、ダンジョン内で睡眠をおろそかにするやつは、いつか命を落とす。

見張り番が終わったあとは、しっかりと休まないといけない。


(策士、策に溺れるとはこのことか……)


俺は苦渋の思いで、しずくに注意を促した。

しかし、しずくからは、じとっとした目を向けられるのだった。



そうしているうちに、

俺たちの見張り番の時間がやってきた。


夜のダンジョンは、昼間とはまるで別世界だ。

ひんやりした空気が肌にまとわりつき、遠くの水音がやけに大きく響く。


もちろん、魔石の光を頼りにしたダンジョン内部で、

明確に昼と夜が分かれるわけではない。


ただ、生活のリズムとして、

夜になると人は寝静まり、気配が消えて空気の静けさが増す。

そして、不思議なことだが、魔物たちも夜になると活動が抑えられる。


それが、この空間に夜の雰囲気を作り上げている。


たき火の炎が揺れ、木が燃えてはじける音がする。


ほのかに赤い光が、俺としずくの横顔を照らす。


しずくは、いつもより少し距離を縮めてきて、

たき火で燃える薪を枝でつつきながら、ときどき俺をちらりと見ては視線をそらしていた。


何か言いたげに口を開きかけては、小さく息を飲んで閉じてしまう。


たき火に照らされたしずくの影が揺れるたびに、どこか落ち着かない様子が伝わってきた。


(……しずく、最近落ち着きがないけど、どうしたんだろう。

 まぁ、睨まれるよりかはマシなんだけど、

 何を注意されるのか分からなくて俺も気が気じゃないんだよな。)


そんなことを考えていたとき――


遠くの闇の奥から、

低くうなるような “ 何か ” の鳴き声が響いた。


風の音とも、魔物の声ともつかない、不気味な響き。


俺は眉をひそめた。


「……明日は、少し気をつけたほうがいいかもな。」


しずくの雰囲気が真剣になり、

横で小さく頷くのがわかった。


胸の奥に、言葉にできないざわつきが残る。

何も起きていないのに、

“ 何かがこちらを見ている ” ような感覚だけが消えなかった。


演習初日の夜は、不穏な静けさをまとったまま、ふけていった。


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