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転生三回目の俺、今度こそラブコメもダンジョンも攻略したい  作者: 読むの大好き工房
2章

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12/22

2章2話「俺を褒めても、長期探索の助言しか出ないゾ」

翌日。

大規模ダンジョン演習の告知から一夜明け、教室内は朝からざわざわしていた。


クラスメイトが、黒鋼先生から貰ったメモを片手に話し合っている。

そこには、最低限必要なものと、その数量が書かれていた。


「ねえ、食料ってどれくらい持っていけばいいの?」

「このプリントに書いてある通りでいいんじゃない?」

「ねぇ!ねぇ!ねぇ!寝袋って必要なのかな?!」

「魔力が足りなくなったら、どうやって回復すれば……」


あちこちから質問が飛び交い、

黒鋼先生の説明を聞いたとは思えないほど混乱している。


そんな中、なぜか俺の机の周りには、人が集まり始めていた。


「倫太郎、長期探索ってどうすれば疲れにくいんだ?」

「水ってどれくらい必要なの?」

「夜の見張りって、どうやって交代したらいいの?」


(……なんで俺のところに?)


集まってきたのは、普段のダンジョン探索で一緒になったメンバーや、

俺がちょっとした助言をした連中だった。


「足の踏み込み、もう少し前だぞ。」とか、

「その魔物は横から攻めたほうがいい。」とか、

そんな軽いアドバイスをしただけだ。


前世での経験があるとはいえ、俺はただの一年生だ。

それでも、初心者に聞かれたことに答えるだけなら難しくない。


必要以上に偉そうにするつもりもないし、

ただ知っていることを、淡々と返しているだけなのに――


なぜか、みんな真剣にメモを取り始めていた。


「疲れにくくするには、歩幅を一定にして歩くこと。

 無駄に走らないことだな。」


「水は一日二リットルを目安に。

 でも持ちすぎると重くなるから、浄水タブレットを余分に持って備えたほうがいい。


 途中で水源を確保できれば余裕ができるけど、

 今回は三日間の工程だから、最悪、節約していれば最低限の量でも何とか乗り越えられる。」


「見張りは、二時間交代が基本。

 集中力が切れたり、疲労や眠気が蓄積する前に交代するほうが安全だ。」


答えるたびに、周囲のクラスメイトが「へぇー」「すご……」と感心したようにうなずく。


(いや、そんな大したこと言ってないんだけどな)


そんな俺の様子を、しずくが " じとーっとした目 " で見ていた。


「……倫太郎、人気だね」


「え? そうか?」


「そうだよ」


しずくは " むすっ " として、俺の机の横にぴたりと立つ。


(なんだ……? 怒ってる?)


理由がわからずに首をかしげていると、今度は別の女子が声をかけてきた。


「あの、倫太郎くん。

 夜の見張りって……男女で組んでもいいのかな?」


「え? まあ、危険じゃなければ……」


「そ、そうなんだ……!」


その女子は期待に目を輝かせ、頬を赤くして去っていく。


(……なんで赤くなるんだ?)


俺が訳も分からず、その子を見送っていると、

しずくの機嫌はさらに悪くなり、むすっとしていた。


「倫太郎、さっきの子……」


「ん? どうした?」


「……なんでもない」


しずくは、ぷいっとそっぽを向く。


(なんだ……? 本当にどうしたんだ?)


そんな俺の疑問をよそに、

教室の別の場所では、颯斗が女子に囲まれていた。


「颯斗くん、一緒にパーティーを組まない?」

「颯斗くん、夜の見張りのとき一緒に……」

「颯斗くん、颯斗くん!」


最初のダンジョン訓練の時から、彼の周りには人が絶えない。

整った顔立ちで、戦闘の腕前はもちろん、スキルにも覚醒している。


誰かが声をかければ、颯斗は嫌な顔ひとつせず丁寧に答える。

男女を問わず好かれており、自然と人が集まってくるタイプだ。

その姿勢もまた、彼の人気に拍車をかけていた。


今回の演習でも、間違いなく優秀者として名前が挙がるだろう。


(……やはりイケメン。イケメンはすべてを手に入れる。)


俺が心の中で納得していると、しずくがぽつりとつぶやいた。


「倫太郎は……誰かに囲まれたりしたいの?」


「いや、ないだろ」


「……ふーん」


しずくの機嫌が、少し良くなったように見えたが、

その理由が俺にはわからなかった。


その後も俺の周りでは、長期探索についての質問が続いた。


「倫太郎、保存食って何がいいんだ?」

「あのー、靴ってどれくらいの硬さが……」


ふと、しずくが話を遮るように俺の腕をそっとつかんだ。


「……倫太郎。 ほら、もう次の授業に行くよ。」


その声は小さいのに、妙に強引で。

周りの生徒たちも「あ、うん……」と道を開けてくれた。


しずくは、俺の袖をつまんだまま、離す気配がない。

まるで “ ここは私の場所だよ ” と言っているようだった。



そして放課後。

演習への不安は完全に消えたわけではないが、

それ以上に “ 初めての長期演習 ” という、非日常への期待が勝ってきたのだろう。

質問にきていたクラスメイトもいなくなり、俺の机の周りは静かになった。


教室の空気は、まるで遠足前日の小学生みたいに明るくなり、

誰もが少し浮かれていて、どこかそわそわしている。


「夜の見張り、誰と組もうかな……。」

「宿泊って、ちょっと楽しみかも。」

「夏休み前のイベントって感じだよね!花火持って行っていいのかな?」


(……青春だなぁ。)


俺がそんなことを考えていると、しずくが俺を呼びに来た。


「……倫太郎、帰ろ。」


「お、おう。」


しずくの表情は、どこか嬉しそうで――

俺を呼びかける声は、いつもより少しだけ柔らかかった。


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