「反撃」
戦士達と魔物の叫び声が飛び交う戦場の中、アーケオはマシュロやブレド、ルーベルトとともにレックスに挑んでいた。
「未来予知!」
ルーベルトが息子に変わって、未来予知で次の攻撃パターンを見る。アーケオ達はルーベルトから伝えられた情報で攻撃を仕掛けていく。
「切り傷はすぐに再生される! 切断してくれ!」
「一閃!」
鋭心が目を見張るような速度でレックスの剣を持つ腕を切断した。
「ぐっ!」
レックスの表情が歪んだ隙に追い打ちをかけようとした時、レックスの空いた片手から黒い電気が見えた。
「皆の者! 避けろ!」
「黒雷!」
レックスが叫んだ瞬間、周囲に黒い雷が落ちた。ルーベルトのおかげでかろうじて怪我はしなかったが、煙で姿が見えなくなった。
「まずい! 奴の姿が見えん!」
「みんな! 周囲を警戒して!」
アーケオは仲間に警戒態勢を強めるように促した。その瞬間、横にいたはずのルーベルトが真後ろに吹き飛んだ。レックスが大剣を叩きつけたからだ。
クリス、リーシア、鋭心、ブレドがレックスに斬りかかっていく。しかし、腕利きの四人の実力を持ってしても、全て流されてしまっている。
「烏合だな」
「くそ。バケモンかよ」
「アルドュヴラとは比べ物にならない」
「なんという速さと剣の腕」
「これだけいてもダメか!」
四人の顔に陰りが見えた。アーケオはマシュロとともに後ろからレックスに斬りかかったがいともたやすくいなされてしまった。
「やっぱり不意打ちでもダメか」
「五感も研ぎ澄まされているという事でしょう」
これだけの数で押し切っても攻め入る隙が生まれない。アーケオは魔王との実力差に焦燥感を抱いた。
「今度はこちらからだ」
レックスが一瞬でアーケオ達に間合いを詰めてきた。そして、一気にアーケオ達全員をなぎ払ってしまった。凄まじい剣の勢いと風圧で後方に引き下がった。
「勇者の斬撃!」
別の方向から斬撃が飛んできて、レックスの左肩部分に直撃した。
「まだ倒れてなんていられない」
「父さん」
ルーベルトが額から血を流しながら、剣を持っていたのだ。
「まだ生きていたのか?」
レックスが黒い触手で再生しながら、平然と話していた。
「あれしきの一撃で倒れるようなものに王なんぞ務まらんよ」
ルーベルトがアーケオの元に駆け寄ってきた。
「アーケオ。わしに策がある」
アーケオは父の近くに耳を寄せた。そして、彼から伝えられた打開策を聞いて、少し光明が見えた気がした。
ルーベルトに耳打ちされた内容を思い出しながら、アーケオはレックスに向かった。この作戦がもし上手くいくのなら、勝機はある。
「みんな。僕の動きについてきてくれ」
アーケオの言葉に周囲の人間が頷いた。
「アーケオ! 波動がくる!」
ルーベルトの一言でアーケオはレックスと距離を取った。その瞬間、レックスが指を止めて、大剣を床に向けて振り下ろした。粉塵で姿をくらまして、未来予知から逃れようとしているのだ。
「それも見えておるぞ!」
ルーベルトが地面に叩きつけようとするレックスの手を斬りつけた。それによりレックスの動きが止まった。
「いけ! アーケオ!」
「勇者の斬撃!」
アーケオはレックスの左腹部に剣を突き刺した。その状態で斬撃を放った。
レックスの左腹部が風船のように膨らんだ後、破裂した。
「よし!」
ルーベルトが傍らで口角を上げた。ルーベルトの提案。斬撃を打つのではなく、突き刺して内部で斬撃を放つというものだった。レックスに寄生しているユーカリオタを引き剥がし別々で討伐する為だ。
「がはっ!」
レックスの口から赤黒い血を吐いた。それとともに傷口から大きな寄生虫のようなものが左腹部から飛び出てきた。
「ユーカリオタだ! 捕らえろ!」
ルーベルトがすかさずユーカリオタの体に剣を突き刺して、レックスの肉体から引きずり出そうとしていた。
「キュオオオオオオ!」
しかし、ユーカリオタが凄まじい力で抵抗しているせいか、レックスの方に引き戻されてしまっている。
「邪魔をするな!」
レックスがルーベルトに剣を振り下ろそうとした時、マシュロとブレドが攻撃を防いだ。
「させない!」
「おのれ!」
レックスがマシュロとブレドの姿を見て、歯ぎしりをした。アーケオは再度、剣にマナを込めた。苦しそうな様子のレックスを見て、逡巡したが実行した。
「勇者の斬撃!」
二度目の内部での斬撃が炸裂した。それにより魔王ユーカリオタの全身からレックスから完全に離れた。
「がはっ!」
二度の斬撃を受けたレックスが血を吐きながら、吹き飛んだ肋部分を抑えていた。近くではユーカリオタが陸に上がった魚のようにのたうちまわっている。
「私達でユーカリオタを止めます! アーケオ様はレックスの相手を!」
「うん!」
マシュロの言葉に背中を押されて、アーケオはレックスに剣を向けた。レックスも抉れた左腹部を抑えながら、剣を構えていた。
「さあ、一対一です。レックスさん」
「来い。アーケオ!」
アーケオは力を振り絞って、レックスの元に走り出した。




