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第四章 繋ぐ(2) 女たらし(1) 

 アレンはカーター・ホフの村を歩いていた。その耳遠くに若い女の狂騒の声が聞こえる。

 その声は、私のロブロイ・・と叫んでいる。どうやら男に捨てられた女の甲高い声のようだった。

 どんとアレンの肩にぶつかった男が居た。

 「気をつけろ。」

 「どうも・・悪いな。」

 男の声にアレンは軽く頭を下げた。そのアレンの鼻にふと異様な匂いがした。

 魔物・・アレンは男の後ろ姿を目で追った。だがその男に魔物を示す気配はなかった。

 俺が間違うか・・アレンは首を振り、疲れた頸筋を揉んだ。

 休養もかねアレンは暫くさっきの男を追ってみることにした。

 男は手当たり次第に若い女に声を掛けている。

 何を見たのか、声を掛けられていた女の一人の眼が輝いた。

 男が女の肩に手を回す。それだけで女は潤んだ眼をした。

 「ただの女たらし(ジゴロ)か。」

 アレンはチッと舌を鳴らしたが、どうも気になって仕方が無かった。

 来る日も来る日も男の後を追うアレンの肩を叩く者が居た。

 「男に乗り替えたのか。」

 そこに居たのはウィーゴだった。アレンは今まで不意に身体を触られたことはなかった。

 「おまえ・・・」

 「隙だらけだったぞ。」

 にしても・・・アレンはウィーゴの成長を知った。

 ウィーゴとの会話の間にアレンは追っていた男を見失った。

 「あいつの名はロブロイ。女を(たぶら)かしてばかり居る。」

 渋い顔のアレンにウィーゴが言う。

 「あんな男になんの興味を持つんだ。」

 ウィーゴの言うとおり、ただの女たらし(ジゴロ)に何故惹かれるのかアレンには解らなかった。だが百数十年前に自分の命を救った者の記憶があの男に向けられていた。

 あんな男が“光の子”であろうはずがない。だが何故か気になる。

 アレンは独り首を傾げ、

 「手伝え。」

 ウィーゴに強く言った。

 「何をする気やら・・」

 ウィーゴは渋々頷いた。

 「何処まで行くか解らんぞ。

 ルシールに連絡は。」

 「使いをやっておく。」

 「そんな事でいいのか。」

 「ああ、最近は意外と締め付けも緩い。」

 そう言ってウィーゴは笑った。

 「スクゥンク。」

 その笑いの横でアレンは自分の使い魔を呼んだ。

 呼ばれたスクゥンクはウィーゴの姿を見ると恐れ、すごすごと後退り、建物の角で震えた。

 「俺の仲間だ、心配ない。」

 アレンはその犬のような魔物の頭を撫でた。

 「俺が嗅いだあの男の臭い・・覚えているか。」

 スクゥンクは弱々しげに頷いた。

 「臭いを追って探せ。」

 妖獣スクゥンクは人の後ろ足でスクッと立ち上がり人混みに走った。

 「なんだあいつは・・・」

 ウィーゴはその姿を見て笑った。


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