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第四章 繋ぐ(1) 

 ロブロが開発したデントルは今や五つの町を持つに到っていた。だがロブロの悩みは尽きなかった。一つはアルガッディ大帝国を宣しアイクアリー教を国教と定めたハーディの動き、そしてそれよりも気に成るのはジュリアの処遇だった。

 シーナの行方はようとして解らない。東の大陸に移り港町ラフィンウエルに到ったところまでは解った。が、その後は・・・

 ロブロは藁にもすがる思いでシーナ宛ての手紙を送ってみた。が、当然それに対する返事はなかった。

 ともかくこの地の国力を上げる・・それが当座のロブロの目標になっていた。

 ジュリアは相変わらず明るく振る舞っている。それはこの地に集まってくる人々に安心感を与えていた。

 だがそれに反感を覚える者も居た。

 「あの女・・・」

 それはルーリッヒの声だった。

 「怪しくないか・・突然ロブロの野郎が連れてきた・・・」

 ルーリッヒは自分の取り巻き連中を見渡した。

 「調べろ。」

 酒の勢いかルーリッヒは大声を上げた。

 翌日からルーリッヒの取り巻きはジュリアの身辺を嗅ぎ廻った。それはログヌスから辺境の地に送られた者が中央に帰りたいという執念からのものだった。


×  ×  ×  ×


 ランシールは久しぶりに人集めの旅に出ていた。同行するのは今までと同じ様にネル、それに今回は珍しくシーナが一緒だった。

 「ラフィンウエルまで行ってみませんか。」

 ランシールは他の二人の顔を見て笑った。

 「何か連絡が入っているかも知れません。」

 彼の声に他の二人も頷いた。

 最近はロニアスに住む者達への便りもトンとなくなっていた。

 イシューとは直接やり取りをし、ワーロックは人知の外に去った。ドラゴは死にティアの行方は知れない。ストラゴスからも連絡はなかった。自分達が活躍したミッドランドからの便りは・・・ランシールは過ぎ去った躍動的な過去が恋しかったのかも知れない。

 ラフィンウエルは相変わらず賑わっていた。ランシール達がラフィンウェルに着く少し前に、何処からかの船が着いていた為か、その喧噪は極度を極めていた。荷を下ろし空いた空間にここいらからの物資を積み込む。荷役は忙しく動き回り、旅人は宿を探して駆け回った。町の娼婦は客を引く為に厚く化粧を塗り、濃い香水の匂いを振りまいた。

 「相変わらずだねぇ、ここは・・・」

 ネルが小さく溜息をついた。

 「仕方がない・・ここの特性ですよ。」

 シーナもケバケバしい化粧の女達を見て苦い顔をした。

 「暫くここに居ましょう。」

 ランシールは二人の心とは裏腹なことを言った。

 「ロニアスには闘う者も必要です。例えばスパルタン人とかも・・・

 ここに居ればそう言う人達も獲得できます。」

 そんなランシールの意を受け、十日の期限を切ってラフィンウエルに滞在することとなった。

 ランシールは毎日のように港を訪れミッドランドからの船を待った。その間ネルの眼に叶う者は居なかった。

 ある朝早く大きな銅鑼の音がランシールの眠りを破った。

 ランシールは港へ走った。

 港に入った船はミッドランドからのものだった。

 いつもの喧噪の中、ランシールは郵便屋を探した。

 「ディアス宛ての手紙は・・・」

 ランシールはそれと見た男に大声を掛けた。

 男はごそごそと雑嚢の底までを漁り、

 「無いよ。」

 と、軽く答えた。

 「そうか・・・」

 一声漏らしランシールは項垂れた。

 ランシールの目の前を郵便屋がディアス達と初めて泊まった宿に走り、ランシールはその後を追った。

 「預かってくれるか・・シーナって奴への手紙だ。」

 郵便屋は宿の番台に紅い蝋で封印をされた手紙を投げ置いた。

 「シーナに・・・」

 延ばすランシールの手を宿の主の手が押さえる。

 「あんたのことは知っているが、この宛先はシーナ、勝手に渡せはしないよ。シーナとやらがあんたに託した書状でもあれば別だがな。」

 そこにシーナとネルが帰ってきた。

 「手紙が・・・」

 ランシールは弱い声を上げた。

 シーナはその手紙を懐にしまった。

 「男女合わせて三十人集まった。明日は帰るよ。」

 ネルはランシールにそう声を掛けた。


 シーナはロニアスに帰ってから封書を開けた。その手紙はロブロからのものだった。

 その内容がシーナの顔色を変えさせた。

 「どうしたのです。」

 その異変に気付きカトリンが声を掛けた。

 「ユングの子が・・ジュリアと言うそうです。」

 「何処に・・・」

 「デントルという所にロブロが匿っているそうです。すぐにでも来てくれと・・

 助けに行きたい。」

 「ディアスに相談してみては。」

 カトリンの声がシーナの胸に響いた。


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