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第三章 崩壊(26) 操る者(1)

 アレンと入れ替わりにカイが“霜の国”を訪れ、ワーロックはそれをニュールベルグに迎えた。

 カイはつぶさにミッドランドの様子を見てきていた。

 ハーディはミッドランド全体の皇帝を宣し、ミッドランドにある総ての国に冠すると宣した。

 タリスをランドアナの司法長官に任命して司法の総てを握らせ、自身の補佐官としてリュークを指名した。

 リュビーとナザルを大将軍とし、モアドス王としてレジュアスを追われたヘンリーを就け、ダルタン亡き後のネオロニアスを併呑したリュビーはそのままネオロニアスの最高統治官となった。

 「リュークとは何者だ。」

 ワーロックの問いにカイは首を捻りながら、

 「アイクアリー教の司祭だとのことです。」

 と答えた。

 「アイクアリー教・・・」

 ワーロックも同じ様に首を捻った。

 今までにそんな名の宗教を知らない・・新興宗教なのか・・・ワーロックの疑問は拡がった。

 「完全なる平等の宗教と聞いています。」

 「平等であれば、なぜ皇帝などを認めようとする。」

 「能力に似合った平等だとか・・・」

 カイもまた困惑の貌を見せた。


    ×  ×  ×  ×


 ハーディの側には必ずと言っていいほどリュークがいた。遠い国を任せられたリュビーとロブロを除くハーディの部下達も既にアイクアリー教に染まり、その意によって動いているかのようであった。

 弓の達人バルハードはミズールにあり、ロゲニアの傀儡国家バルハドスを睨んでいた。ナザルはニクスでヴィンツに備え、ケムリニュスの首府ケントスにはリュークの股肱ダルスが座っていた。

 ミズールではその先の町ドボーグにガルス、ラック、グロックを送りバルハドスと激しく対立し、ニクスのナザルの下にはグラントスとイーサンを配しヴィンツに圧力をかけていた。


 ロブロが創った地域デントルは川の中流のに造った町セ・イールを首府とした。その町まで広い川幅を利用して船が入ってきていた。

 最初に入植した村はカルフと名付けられ、バルバロッサに対する砦の役割を果たした。

 それにもう一つロブロは密かに海に面した港町の建設に着手していた。その建設を担うのはトリグラフ、彼はそれが済むとサラスヴァティの元に帰る。

 「何でそんなものが必要なんだい。」

 アグウィが疑問を投げかけた。

 「ここを豊かにする為です。」

 「にしちゃあ・・秘密裏にやっている。」

 「いつかはジュリアのことが知れます。その時の脱出経路として・・・」

 ロブロは思わず本音を吐き、それにアグウィが笑って応えた。

 ジュリアは今日も人々の中に居た。それが彼女にとって至上の幸せだった。人々の世話をし、年老いた老婆の背中を撫で、病んだ者の看病をした。それは嘗てユングが望んだことかも知れなかった。

 ロブロはそんなジュリアの姿に微笑みを漏らした。

 (このまま続けばいいが・・・)

 ロブロは笑いの中に一抹の不安を交えた。


 リュビー自身は併呑したネオロニアスとモアドスの二つの国を治める気で居た。その二国の国力があれば・・と考えていたが、モアドスはあっさりとハーディに取りあげられ、レジュアスを追われたヘンリーに与えられた。ハーディの帝国にとって今や敵国となりつつあるレジュアスとの間を頻繁に往復することも難しくなり、リュビーは動きに窮していた。それを察してかレジュアスの方からたまに秘密裏に使いがやって来る。

 レジュアスは今、ハンコックの子ステリアを事実上の長とする寡頭政治で纏まっていた。

 ステリアの能力は高かった。政治、経済、軍事、外交、その上司法に至るまでに通じていた。それを補佐するように二十人の元老達と武将達が回りを固めていた。

 軍は元老も兼ねるヘリオスが束ね、その下からグラントがホリン共和国の護りの為エフェソスに送られていた。タキオスの護りにはブルスをあて、アーサー王の治世の時と同じ様に年に何回かは軍が領地内を巡察していた。

 元老達も軍事を司るヘリオスを始め、政治は誰、経済は・・と言う風に能力ごとに割り当てられ、元老院の表向きの長はイムサという老人が勤めた。

 ステリア自身は重要な役割に就くことはなかったが、何かがあると元老達はステリアの意見を聞いた。

 ステリアはネオロニアスのリュビーと共闘を結ぼうと画策した。が、なかなかそれは叶わなかった。どうもリュビーは監視されている風が在る。使いを送ってもそれはハーディに筒抜けになっているのか、すぐにランドアナから横やりが入る。

 幸いフィルリアとの同盟はトポリカを介して上手くいっていた。だがフィルリアとレジュアスの同盟は王家あってのものとランドアナはそれに異を唱えた。

 ここでも秘密裏に事を進めていくしかなくなった。

 それでもステリアはこの二国との関係を良好に進めていた。


 リュークはハーディの元に四人の男を連れてきた。四人の名はメイエス、ガロス、ヴォーゾ、フォーラス。

 メイエスとフォーラスは騎馬騎士、ガロスは重戦士、ヴォーゾは剣士、との触れ込みであった。彼等の能力はナザルとリュビーを除く既存の騎士達に優っていた。既に司法長官を務めるタリスも合わせこの五人を以て戦いに打って出る。

 「タリスまでも戦いに使うと、司法を司る者が居なくなる。」

 ハーディはこの五人総てを戦域に送ろうというリュークの言葉に異を唱えた。

 「暫くは私が司法を見ましょう。」

 リュークは(うやうや)しく頭を下げた。


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