第三章 崩壊(25) 善なる者と悪なる者(5)
× × × ×
「あの村が植物に潰されたらしい。」
いつから一緒にいるのか・・逞しい男がルーファスにそう言った。
「久しぶりだな。」
その後からソリオが片手を挙げた。
「その村からは甘い匂いが立ち上り、旅行くものを誘い。それを喰い尽くすらしい。」
「あなたは・・・」
ルーファスは逞しい男に疑問を投げかけた。
「ブリー・・だ・・・見忘れたか。」
男は困惑の表情を見せた。
「ちょっと、頭が・・」
この間のことを思い出そうとするルーファスを酷い頭痛が襲った。
「この三月、お前と旅をしていると言っていたぞ。」
ソリオもまた同じ様な表情を見せた。
(覚えて・・)
ルーファスは思わず口に出しそうになった。
「どうする・・そこに行くのか・・・」
「行こう。」
ソリオの声にルーファスは力強く応えた。
その村はアタージャ、嘗てルーファスが助けた村。一人の男と、一人の女が現れ穢れた植物の種を撒き散らし、村を蹂躙し尽くして立ち去ったらしい。
その村に残るのは女達だけ。毎日、その悪魔の植物に水をやり、時には肥料を与えているらしい。
それにも増してその植物の肥やしとなるのは生き物の精。傷つけ、殺し、喰い尽くす。そうやってその植物は大きくなっていった。
「あれですか。」
ルーファスは遠くに手をかざした。
「陰の樹霊、オードリーだな。」
その横でブリーが言った。
「陰の樹霊・・」
そのまた横でソリオが声を上げた。
「植物の霊・・それが生き物の命を奪う事を覚えた。」
ブリーが答える。
「根一つ残してはならん。
残せばそこからまた復活する。」
ブリーはズイッと足を進めた。
「お前にはどう見える。」
ブリーはソリオを見た。
「緑生い茂るオアシス。」
「そうやって道行くものを騙す。」
ブリーは構わず尚も足を進めた。
「陸にある植物を枯らす方法は知っているか。」
ブリーが話し、ソリオが首を振る。
「塩水をかけることだ。」
差し出すブリーの手から勢いよく水が噴き出した。
「根まで枯らせる。」
ブリーは尚も植物に支配された村に向け進んだ。
葉が萎れ、茶色く変色していき、一株のオードリーが鋭い悲鳴を上げた。
そしてもう一株・・ブリーの前で食生植物オードリーが次々と枯れていった。




