第三章 崩壊(19) 二人の男(3)
「南の森で食物の調達でもするか。」
バルディオールはジャンクをそう誘い、誘われたジャンクは頷いた。
台地を下り森に入ると、そこにはピクト人が住んでいた。彼等は森の中の暗がりに好んで住んだ。そのせいか肌は透き通るような薄桃色をしていた。力の弱い彼等はアマゾーンと呼ばれる女人族の傭兵を雇い入れ、各集落をアッティラ族の襲撃から護っていた。
それでもたまにアッティラ族が襲ってきた。が、真白な肌をし、弓矢を扱う為に右の乳房を自ら切り落としたアマゾーンは善く戦い、アッティラ族を退けた。
バルディオールとジャンクが森に入ったのもそんな日だった。当然、疑いの目で見られる。が、そんな事には係わらずジャンクは女の似顔絵を見せて廻った。
当然返ってくる答えは、知らない。と言う言葉だった。
「少し木の実集めと狩りをさせて貰って良いか。」
そんなジャンクを見て敵意を削がれたピクト人にバルディオールがきいた。
「旅の者だろう・・狩りをして得物を持ってくれば乾燥肉と交換してやるよ。」
ピクト人の中からそう言い出す者も現れた。
ピクト人達は陶器の製造と食物の加工で経済を支えていた。彼等が造る陶器は色鮮やかで美麗。それは王侯貴族に愛された。
また彼等の手によって加工された食物は長持ちをし、旅人達に重宝された。それらを商品に行商に歩くのが彼等の経済であり、それで儲けた金で傭兵アマゾーンを雇っていた。
この地区にはもう一つ、やはり穏やかに暮らす有尾人が居た。アッティラ族を真南に西にピクト人、東に有尾人と棲み分けていた。
だが、アッティラ族の勢力拡大に伴い有尾人達の居場所は徐々に狭くなって言っていた。彼等は僅かの耕作と木の実狩り、罠を仕掛けて小動物を捕獲して命を繋いでいた。争うことを嫌い武器らしき物は持たない。そこにアッティラ族がなだれ込むと当然抵抗のしようも無かった。が、それを助けたのがいつ頃からか森に住んでいた小人族ピグマイオイ。彼等は身体は小さかったが戦闘には強かった。きちっと規律を守り、組織だった戦いをした。それは身体の小ささを補う為、必然として生まれたものだった。
その彼等がなぜか、自分等で有尾人を救おうとした。しかも、有尾人の東の地底に住むドワーフまでも語らった。
言うまでもなくドワーフは戦いに強い。赤銅色の彼等の皮膚は硬く、力は強かった。そんな彼等が鎧兜に身を包み、洗練された武器でピグマイオイと伴に戦う。その為数多くのアッティラ族はこの辺りを我が物顔に制するには到らなかった。
「有尾人の集落に行くか。」
そんな話を聞いたバルディオールがジャンクに声を掛けた。
何をしにと言うようなジャンクの眼に、
「たまには人助けだよ・・村の護り方を教える。」
と、笑った。
ピグマイオイやドワーフが助けにくるまでの間、自ら集落を護らなければ、早晩、有尾人は滅びる。バルディオールはその方法を教えようと思っていた。それが今まで殺してきた人達に対するせめてもの罪滅ぼしでもあるかのように
「行く。」
それを察してかジャンクがあっさりと言った。
西から東、それにはアッティラ族の勢力範囲を横切らなければならない。そしてジャンクは人と戦うことには当てに出来ない
ちょっと失敗したかな・・バルディオールはそう思い、苦笑いを浮かべた。




