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第三章 崩壊(10) 瓦解(2)

 タキオスに立て籠もったサナットの眼に三、四十騎の騎馬兵が見えた。

 「防衛準備。」

 城内にサナットの声が飛んだが、兵の動きは鈍かった。

 「サナット、何があった。」

 城門の外からの声はダルタンのものだった。

 「何があっただと・・お前も知っていよう。今さらしらばっくれるな。」

 「何のことだ。」

 「軍事革命だ。ヘリオスが王家に反旗を翻した。お前もその一派だろうが。」

 「一派・・儂がか。」

 「そのつもりで兵を率い・・・」

 サナットは遠くを見渡したが何処にもそれらしい土煙は見えない。

 「話が分からん。が、謀反であれば手助けをする。門を開けよ。」

 サナットは躊躇し暫く考えた。が、廻り全てが敵ばかりと恐怖に囚われた中に一人でも味方は欲しかった。そして遂に・・

 開門、ダルタンを入れよ。と命を発した。

 街中に入ったダルタンは全軍を広場に集めた。

 「ヘンリーはまともな王であったか。」

 そこに集まった兵士達はその言葉に戸惑った貌をした。

 「ヘンリーはまともな王であったか。」

 そこへもう一度ダルタンの大声が響く。

 それに応え・・否・・・と兵士達も大声を上げる。

 「逃げましょう。」

 悠然と広場に向かうサナットの腕を彼の側近が引いた。

 「騙されたんです。あいつもヘリオス達の一派です。」

 サナットはやっと気付いた。

 「財産が・・・」

 この期に及んでも慾を見せるサナットを、

 「命の方が大事でしょう。」

 七、八人の配下の者が無理矢理サナットを引き立てた。

 サナットは達は持っていた金で荷船を買い、荷に隠れて運河からローヌ川に出た。

 ダルタンの演説に同調した兵士達は、サナットに取り入り甘い汁を吸ってきた側近達の逮捕に走った。

 「先ずサナットだ。逃がして北に奔られてはならん。」

 ダルタンの命令が飛ぶ。が、ようとしてその行方は知れなかった。それもそのはずサナット達はストランドスの陣地に逃げ込み、タキオス及びレジュアスの情報と引き替えに身の安全を図っていた。

 その陣にはたまたまパリスの息子イグニスが来ていた。彼の指示でタキオスの北に兵が集められた。それとは別にもう一隊タキオスを西に大きく迂回してエフェソスに向かう隊もあった。

 繋ぎ狼煙で知らせを受けたパリスの動きも早かった。すぐに国境に兵を配し、ネオロニアスの動きを牽制した。

 ストランドスの大兵を前にタキオスの兵を纏める為ダルタンは動けない。エフェソスのブルスはその動きを助ける為に三分の二の兵を持ってタキオスに向かった。

 その兵がエフェソスとタキオスの中間に差し掛かった頃、エフェソスが攻められ、ブルスの行軍が止まった。が、ブルスは意を決した。

 「タキオスが先、ダルタンの動きを助けるぞ。」

 ブルスはそのままタキオスに向かった。

 取り残されたエフェソス、そこに押し寄せたのは二千ほどのストランドスの軍。残されていたのは指揮者も居ない兵達千。てんでに低い城壁に走り、城壁に登れ。門を守れ。と口々に叫んでいる。

 「守ってばかりではじりびんだ。俺に続け。」

 右往左往する兵に一人の男が大声をかける。

 「打って出る。敵の数を減らしその後に守りに入る。

 町人には弓を持たせ城壁に登らせろ。」

 男の元に集まったのは約五百。その後を出世を夢見る傭兵達も追った。

 戦術はストランドス軍の方が上、組織だった戦闘ではエフェソスの兵は歯がたたなかった。だがその中で一人次々と敵を槍の穂先に掛ける者が居た。ラゴン、それは兵達に声を掛けた男だった。

 その男ラゴンの活躍で戦闘は乱戦となった。乱戦となれば個々の腕に覚えのある傭兵達が活躍する。

 一旦退け。と敵将の下知が飛んだ。

 「俺達も退き上げるぞ。」

 ラゴンもまた大声を出した。

 エフェソスの内に戻ったラゴン達に他の兵が歓声を上げた。その中には今のうちに攻勢を取ろうという者も居た。それに対しラゴンは、敵は駆けつけたままの態勢でここまで来た。一度退いて陣容を固めた敵には通用しない。とそれを否定した。

 急報はレグノスにも走っていた。だがそれが着くよりも早くステリアは既に次の手を打ちバッケイの軍を急派し、その後詰めにグラントを送り出していた。

 そして残った将軍ヘリオスにステリアはハンコックが(したた)めた書簡を渡した。

 「父が目をつけた貴族です。この人達をすぐに集めてください。」

 「集めてどうする。」

 「貴族院を造ります。あなた方軍と、貴族院の合議でこの後の難に当たりましょう。」

 きれる・・・ヘリオスはステリアに一目を置いた。


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