第三章 崩壊(4) 密約(2)
ロマーヌロンドに帰ったダルタンはリュビーとの会談を希望した。場所はネオロニアスとモアドスの国境の村、何もない所ではあったが、互いの国に何かがあった時にはすぐに首都に帰れる。
「久しぶりだな。」
先にダルタンがリュビーに笑いかけた。
ああ・・とリュビーがその声に頷き、
「どうだ近頃。」
と続けた。
難しい顔と顔、その後すぐには言葉は出なかった。
「レジュアス・・」
「ハーディだが」
暫くの沈黙の後、二人が同時に口を開いた。
お前から・・と今度は譲り合いがあり、では儂から。とダルタンが話し始めた。
「儂はハンコック達にヘンリーを捨て共和制に移行してはどうかと提案した。
ヘンリーはもう駄目だ。甘やかされ過ぎている。
アーサーの一人息子と言うことで国で甘やかされ、その上ランドアナに於いても・・・」
「ハーディですな・・彼は変わった。
当初はこのミッドランド全体の平穏の為、ひいては亡きアーサーの遺言によりヘンリーを厳しく鍛えていた。が、ここ数年それがなくなりヘンリーを甘やかすようになった。」
「エラかな・・」
「エラ・・王妃エラか。」
「そうかも知れん。彼女は元々レジュアスの玉座を狙っていた。それをヘンリーに奪われ嫉妬した。その意趣返しに・・・」
「エラにはハーディ以外に男が居るらしい。」
リュビーの言葉にダルタンは耳をそばだてて、次の言葉に驚愕の色を見せた。
「名はディアス。」
「そんな馬鹿な・・・」
「にそっくりな男らしい・・あのディアスに・・・」
「まさか・・・」
「が、そいつは歳をとらない。若いままだ・・それにエラも。」
「どう言うことだ。」
「俺にも解らん。」
それからまた、暫くの沈黙が続いた。
「レンドールで俺はハーディに会った。」
ボソッとリュビーが話した。
「青黒い肌の色に変わり、眼には生気がなかった。
エラを寝取ったディアスという男への嫉妬、それを何者かに付け入られた。としか思えん。」
「付け入られた・・何者か・・・」
「何かが取り憑いている様にも感じる。
レンドールで俺と会った後、ハーディは請われてヴィンツとの戦に出ている。あの大戦後、極力争いを避けたハーディが別人のように戦ったそうだ。」
「元々あいつは戦に強かっただろう。」
「ドボーグでは自分から進んで戦場に立ち逃げる相手を全て皆殺しにしたそうだ。」
「あのハーディが・・か。」
リュビーはダルタンの大声に僅かに頷いた。
「ハーディの精神を壊す為エラを利用した奴がいる。俺はそう睨み調べた。」
「あの司祭って奴か。」
「だと思う。」
「何の為に・・」
「ハーディを使って自分の帝国を造る為。」
「自分の帝国・・そんなもの造ってどうする。」
「戦いを増やす。」
「・・邪神・・・・カミュが斃したはず・・・」
「それが生き残っていた。
レジュアスが弱体化するとストランドスがそこを攻める。そうなれば我々も巻き込んで大きな戦いになる。それを喜ぶのは・・」
「邪神。」
二人が口を合わせた。
「ならば早急にレジュアスの共和制への移行を進めなければ成らんな。」
「お前は・・・」
「儂の中ではレジュアスは斬り捨てている、アーサーが死んだ時からな。
そう言うお前は・・」
「俺も同じだ。
モアドスは元々独立国、何処にも属していないつもりでやっている。」
「ならば頼みがある。」
どんな・・とリュビーが怪訝な顔をする。
「儂に何かあったら、ここネオロニアスを呑み込んで欲しい。皆には話しておく。」




